数日前に小学校まで息子を迎えに行った時の事なのだが。
校門の前で知っている人に出くわした。
それほど親しくはないが、会えば軽く言葉を交わす程度の間柄。
私も急いでいたし、相手も夕方で時間が無いだろうし、挨拶だけして立ち去ろうとした。
そのまま息子のところに向かおうと思っていたら、通り過ぎる瞬間に急に呼び止められた。
「ねぇ、家の方は大丈夫なの?」
そう聞いてきた彼女の顔は心配というよりも興味津々という感じだった。
何だか嫌な予感はしたが、同級生の保護者なので無下にもできない。
それで曖昧に返事をして再び立ち去ろうとしたら、今度は
「あんな良い旦那さんなのに、何があったのよ~」
と言ってきて、聞き出したくて仕方が無いような様子だった。
もちろん学校の先生は何も言っていないと思う。
だけど、息子が休んだり遅れたりすることもあるし、こういう噂ってすぐに広まるものだから。
気になって聞いてくる人が居てもちっとも不思議ではない。
ただ、興味本位で聞かれるのはやはり抵抗がある。
それに野次馬根性丸出しの人に我が家の内情なんて知られたくない。
私は咄嗟に警戒して、
「大丈夫です~。大事ではないので~」
と言いつつ足早に立ち去った。
後から考えても何が大丈夫なのかサッパリ分からないが、あの時はとにかく彼女の傍から離れたかった。
少しでも話してしまってより興味を持たれてしまい、根掘り葉掘り聞かれるのも嫌だった。
本当に仲良くしている人たちは、興味本位に聞くようなことはしない。
心底心配してくれているのが分かる。
話していても表情に現れるものだ。
その人は保護者の中でも特に声が大きくて気の強いタイプ。
性別は違えど夫のように妙な圧をかける人でもあるから余計に苦手だ。
そして、今回のことでもっと苦手になった。
このまま立ち去ることができれば良かったんだけど。
声を掛けた時の私の反応が気に入らなかったようで、歩いていく私の背中に向かって
「言ったもん勝ちって感じ?」
と笑いながら言ってきた。
本当に大きな声で周りが振り向くようなレベルで。
数人の人たちが何事かと振り返って見ていた。
先生も見ていたかもしれない。
私はハッとして一瞬足を止めてしまったが、決して振り返らなかった。
私はこういう人達がとても怖い。
自分の思い通りの反応が返ってこなければ徹底的に相手を非難したり痛めつけたりする。
『言ったもん勝ち』なんて言うってことは、私が夫に理不尽な仕打ちをしていると思っているのだろう。
夫は外面が良いから詳しく知らない人にはそう見えるのかもしれない。
だけど、全員に説明して回るわけにもいかないから、ある程度は仕方のないこと。
そう理解しているつもりだけど、言われた直後は落ち込んで何だか心がズーンとなった。
『知りもしないのに、そんなこと言わないで』と思った。
人は物事を公平に見ることができない。
公平に見ようとしても、やはり主観が入ってしまうものだ。
今回のことだって、私よりも夫の肩を持ちたい何かがあったんだろう。
もしそうであっても、どうか心の中だけに留めておいて欲しい。
今は夫と対峙するのに精いっぱいで、周りのことにまで頭が回らない状態だから。
何らかの被害に遭った人たちが第三者から口撃を受けた時、心は更にすり減る。
それにより立ち直れなくなる人だっているのに。
手を出していなくても、言葉だって立派な暴力なんだということを分かっていない人があまりにも多い。
だから強くならなくちゃいけないんだけれど。
大人になっても子どもが産まれても、こういうのはやっぱり慣れないなと思う。
でも、いい勉強にはなった。
私たちのことをそういう目で見る人たちもいるということを改めて認識できた。
世の中がもっと優しい言葉で溢れれば良いのに。