息子の誕生日が間もなくやってくる。

 

夫に悟られると面倒なので話題に出さないように気を付けていたのだが。

 

どうやら覚えていたらしい。

 

これまで父親らしいこともせずに、ひたすら虐めていたくせに。

 

『何かプレゼントしたい』と言う。

 

色々と候補を挙げてくるが、本命は携帯のようだ。

 

携帯は、前にも要らないと伝えてあった。

 

携帯を渡されたらそれを連絡手段として使うことを強要するだろうから。

 

そうしたら息子は常に夫とつながってしまう。

 

そんなこと誰も望んでいないのだから(夫以外は)。

 

諦めて欲しかったのだが、携帯で息子とやり取りしたいという願望を諦めきれないらしい。

 

それで性懲りもなく今回も

 

「携帯をプレゼントしたい」

 

と言ってきた。

 

夫は相手が私だけなら上手く丸め込めると思っているようだが、今は周りに何人もの相談相手がいる。

 

だから以前よりも少し弱気に思える。

 

でも、そんなことで同情してはいけない。

 

少しでも『可哀そう』などと同情心を見せれば、夫はそれを利用してくるに違いない。

 

そういうところが自分よりも上手であることが分かっているので、いつも十分に注意しながらやり取りしている。

 

携帯を渡して必要な時にはLINEでやり取りをしたいと言う。

 

電話だと時間を選ぶけれど、LINEのメッセージなら好きな時に見られるから。

 

「好きな時に確認して返事をしてくれれば良いと思って」

 

そう話す夫の中では、既に息子に携帯を贈ることが決まっているような口ぶりだった。

 

だから、私は慌てて

 

「携帯は困る!まだ早いよ」

 

と言った。

 

 

 

 

こんな風に慌ててしまうと夫の思う壺だろう。

 

隙があるように見られてしまい、夫の攻勢は更に強まった。

 

いつも気が付くと夫の方が優位になっていて私の意見なんて聞き入れられない。

 

夫婦は本来どちらが上とかいうことなく平等に助け合う存在なのに。

 

夫の中ではやはり私は容易に言いくるめられる対象なのだ。

 

「今時の小学生はけっこう携帯持ってるよ。何がそんなに心配なの?」

 

と言われたが、そんなの決まっている。

 

あなたと連絡を取ることで、また息子の心が不安定になるのが不安なのだ。

 

まだ傷が癒えていないのに。

 

更に傷つけられたらどうしよう。

 

そればっかり考えているから、夫が何をしても何を言っても『また傷つけられる!』と感じてしまう。

 

今だって本当は『どうやって傷つけようか』と考えているのではないか。

 

疑心暗鬼に陥っていることは夫にも伝わるようで、

 

「なんか凄く警戒されちゃってるよなー」

 

と残念そうに言った。

 

こういう風に穏やかに会話している時でさえ本当は怖い。

 

今この瞬間から関わらなくて良いということになったら、私は嬉しくてたまらないだろう。

 

それくらい怖い思い出ばかり。

 

辛かったことしか思い出せないあなたとの生活は本当に地獄だった。

 

一緒に居た頃は、あの生活が普通だと思っていたのだけれど。