日頃から口座をこまめに確認している。
残高が心許ないというのが一番の理由。
万が一引き落とされなかったものがあったら困ると思ってつい確認してしまう。
我が家は非常にシンプルな家計。
限界までコンパクトになっているので、無駄は無いと思う。
引き落とされる件数も多くはなくて管理はしやすい。
元々ズボラな性格の私は、口座を分けるということができない。
たぶん、分けたら移動し忘れて引き落としができないものが出てきてしまうと思う。
現在はほぼ一つの口座で全ての引き落としが行われているので、そういった心配がない。
給与が入ったら記帳して、食費等の現金で要る分を引き出して最初に振り分ける。
毎月毎月このルーティンでやってきたのだが。
入ってくるのは給与のみなので、入金された後はどのようにやり繰りするかで頭を悩ませていた。
お昼休みにいつものようにATMに口座を確認しに行った。
そうしたら見慣れない文字があった。
それは夫の名前………。
えっ、何?と思ってマジマジと見つめたが、何度見返しても夫の名前が書いてある。
金額は1万円。
一体どういうことなんだろう。
確かめずにはいられなくて、すぐに夫にメッセージを入れた。
でも、必要以上の会話はしたくないので、ただ一言だけ。
『1万円の入金を確認しましたが、これは何のお金ですか?』
その一言だけを送信した。
夫は連絡が来るのを待っていたのか、すぐに返事が来た。
『そっちは今この家に住んでいないのに家賃を払ってもらっているから』
と返ってきた。
なるほど、家賃だったのか………。
1万円………。
夫は働いていないし自分の貯金は使わないから、義父が出したに違いない。
どちらが出しても構わないが、それよりもどこから1万円という数字が出てきたのか。
本当に謎だ。
メッセージに私のことを『そっち』と言っていたが、これは夫の独特の言い回しだ。
どういう時に使うのかというと、自分が良いことをした自覚があって照れくさい時。
今回のが良いことで褒められるべき行動だと考えているとしたら本当にめでたい人だ。
恐らく大げさにお礼を言われることを期待していると思うのだが。
あえてスルーした。
薄い反応に徹し、
『了解しました』
とだけ送った。
それで機嫌を損ねたのか、その後少々キレたメッセージが届いたのだが、それも無視した。
これで、『自分は十分に努力している』と思われては困る。
私が期待しているのはそんなことじゃない。
早く離婚届けにサインをして送り返して欲しいと思っているのに、向こうの反応は想定外のものばかり。
でも本当は、夫は私の一番欲しいものを分かっている。
分かっていて、あえて気づかないフリをしているのだ。
気づいてしまったら、それに対する答えを出さなければならなくなるから。
気づかないフリをして、この嵐が通り過ぎるのを待っているように見える。
もう私たちが再び一緒に暮らす可能性は無いことは何度も伝えてきた。
息子にもそういう説明をしているのに、夫だけがその事実を受け入れることができていないみたい。
義父母もできれば修復して欲しいと願っているかもしれないが、きっと諦めもあると思う。
今まで何でも自分の思い通りにしてきた夫が、この事実を受け入れられる日は来るのだろうか。