私が音信不通になったことを伝えた瞬間、友人は驚いているようだった。
こんな反応をするということは、何も知らないのかもしれない。
でも、せっかくかけたのだからと思って聞いてみた。
「何かご存じですか?体調が悪くなったとか、何か出られない事情があるんでしょうか」
これがご近所だったらコッソリ見に行くこともできるのだが。
今は遠く離れているのですぐに動くことができないのがもどかしい。
「何もないと思うけどね………」
そう言いながらも何か考えている様子だったが、
「今からかけてみるわ。少し待っててくれる?」
と言ってくれたので、取り合えずその友人の報告を待つことにした。
待っている間、色んなことを考えてしまって途方もなく長く感じた。
こういう時に想像するのは悪いことばかりで、考えれば考えるほどネガティブな気持ちになる。
それから30分ほどが経過した頃だっただろうか。
友人から約束通りかかってきたのだが、その声は少し疲れていた。
「遅くなってゴメンね。いやー、色々あるみたいでさ」
声のトーンから嫌な予感がした。
せっかく前向きな未来に向けて動き出せると思ったのに、またダメになるの?
黙って話を聞いていたが、要約すると『夫の弟が新しい会社で上手くいかなくなり、これまでより酷い鬱になって身動きの取れない状態になった。最近では夫のことに掛かり切りだった義両親はその変化に気づけず、入院一歩手前の状態で連絡が入り、そちらの対応で大変になってしまった』ということらしかった。
義弟は鬱病を繰り返していて、今回は過去にないほど酷くなってしまったようで。
義両親もショックを受けているという。
奥さんはそんな義弟に実家に帰るように言い、夫と義弟の二人が帰ってきて生活できるほどのスペースもない義実家では途方に暮れている状態だった。
しかも、そんな状態の義弟が夫に連絡をして
「俺はもうダメだ。これ以上は頑張れない。兄貴、親父やお袋のこと頼むな」
と言った。
そう言われた夫が何を思ったかは分からないが、きっと断ることはできなかったのだと思う。
普段それほど仲が良いわけではなくても、何かあったら支え合おうとするものなのかな。
そうこうしているうちに、義弟の奥さんは強硬的に義弟を家から追い出した。
住宅ローンを払っているのは義弟なのだが、自分も体調が悪いから具合の悪い人の面倒は見られないと追い出されてしまったようだった。
事情は分かったが、そんなどうしようもない状況が聞いてしまったら、それこそ強く出られなくなる。
でも知らなかったことにはできないし、私たちのこれからのことにも絡んでくるので、直接話そうと夫に連絡し続けた。
結局その後に夫と連絡がつき、やっと話ができたのだが。
義実家には義弟が居て帰るスペースがないので、もうしばらく待ってくれないかと言われた。
言っていることは分かるし、そんな状況で今すぐ引っ越せというのも酷な話だということは分かっている。
でも、こちらも交通費の問題があって悠長に待っている余裕が無い。
できれば内緒にしておきたかったけれど。
もう会社に伝えなければならないかもしれない。