夏休み明けの初登校日、宿題を受け取るために夫と待ち合わせをした。
本当は気が乗らなかったのだが、息子がせっかくやった宿題だし、本人が絶対に学校に持って行きたいと言うので、数分程度のことなのだからと思って会う約束をした。
人目のあるところでは横暴な態度は取らないだろうという目論見もあった。
それでも、私たちにとってはものすごい勇気のいることだった。
大げさに聞こえるかもしれないが、本当に決死の覚悟で待ち合わせ場所に向かったという感じ。
その日、久しぶりに会った夫や義両親は相変わらずの様子。
何とか息子を取り戻したいという必死さも伝わってきた。
その姿を見て、私はこれを機に更に夫が息子に執着するのではないかと不安になったのだが………。
その不安が的中してしまった。
久々に息子の顔を見てしまった夫の電話攻撃はエスカレートしていった。
私への攻撃も次第に激しくなっていき、
「○○(息子)の顔を見て、やっぱり自分の考えは間違ってはいなかったと確信した」
と言った。
「〇〇(息子)は、俺のこと嫌いになってなかったよ」
呆れてしまうが、本気でそう思っているようだった。
「なんでそう思うの?」
と聞いたら、半笑いで
「会った時の顔を見たら分かるよ」
と答えた。
「なに?毎日一緒に居るのに自分の子どもの気持ちも分からないの?」
とまで言うのだから、本当に息子が自分を好きでいてくれると思っているのだろう。
あんな酷いことをしたくせに、今でも自分のしたことは間違っていなくて息子の一番の理解者だと思っているに違いない。
「病気のことだってさ………」
と話は急に自分の体調不良のことに移り、これも私が原因だと責めた。
「親父たちと一緒に過ごすようになってからは落ち着いたわ。やっぱりお前が原因なのかもな」
それを聞いた私はとても頭にきて、反論した。
「私だって治って欲しくて色々とサポートしたつもりだよ」
そんな必死の反論にかぶせるように、夫は
「だーかーらー、それがダメだったって言ってるの」
と続けた。
言っている意味が全く分からない。
サポートしたことが逆効果だったってこと?
サポートしない方が良かったということ?
呆気に取られて次の言葉を発せないでいると、今度は
「お前さ。家に居るだけじゃ原因も分からないからって、近くの病院に予約取っただろ?あれ意味ないもん」
と責め立てた。
確かに私が事情を話して予約を入れて、診てもらうようにお願いしたが。
そんなに非難されるようなことだろうか。
元はと言えば夫から頼まれてしたことだ。
「専門医じゃないんだからさ、向こうだって精一杯してくれても結局はきちんとしたた治療ができないんだよ」
夫はメンタル面の調子を崩していたので、本来ならその道の専門医にかかった方が良いのは私にだって分かっていた。
でも、行ける範囲はとても狭く、その範囲内では専門医が見つからなかった。
少し足をのばせば専門医があったので、そこに行けそうかを聞いたら
「行けるわけねーだろ!常識で考えたら分かるだろ!」
と怒鳴られた。
だから、
「それだと○○医院しかないよ」
と言ったら、役立たずのように言われたことを覚えている。
そんなやり取りがあったのに、恐ろしく記憶力の良い夫が忘れているはずがない。
その辺の事情を自分が一番よく理解しているはずなのに。
何故そんなことを言うのだろうか。
私に対しては何を言っても良いと思っているのかもしれないが、言われたら傷つくし、自分の存在価値が分からなくなって悩んだこともある。
「あのまま何もせずにいたら、更に数年状況が変わらないまま過ごすことになって、焦りが大きくなってしまったと思うけど」
そう言ってみたら、夫は『分かってないなー』という感じで、
「かえって調子が悪くなったって言ってるんだよ!」
と切れた。そして
「全部お前のせいだな。余計なことしやがって!」
と吐き捨てるように言った。