大切な人が、手の届かない遠い遠い所へと行ってしまった。
いつでも私の味方でいてくれた。
時には、耳の痛いこともちゃんと言ってくれた。
ずっと信頼していたし、この人は私を裏切らないと思った。
誰にも話せないような悩みを打ち明けたこともあった。
私にとっては唯一無二の存在だったが、結婚することが決まってから連絡を取れなくなり、いつか会えるだろうかと思いながら過ごしていた。
夫はその人の存在を許さない。
自分に無いものを持っているからか、それとも矛盾を見透かされてしまうからなのか。
直接は言わないけれど、連絡ができないような仕向けた。
連絡先一覧に残っていれば、まだこの先連絡できる可能性もあったのかもしれないが、その圧力に負けて消してしまった。
消すように言われたわけではなく、『なんで必要なの?』と言われて残しておくことが悪いことのように思えたからだ。
記憶力が良いわけではないので、その人の連絡先を空で言えることはなく、自分からは連絡することができない状態になってしまった。
他の友人たちの連絡先も全く残っていなかった。
モラハラ夫は外の世界とつながることを許さない。
自分たち家族が居れば良いだろ?というスタンスで、部外者にはとても厳しい。
でも自分の友達だけは例外で、その友人関係に付き合わされたこともある。
バーベキューに駆り出されたり、一緒にライブに行ったり。
私もなるべく頑張って打ち解けようとしていた。
そうすれば夫の機嫌も良いし、仲間内でも私のことで責められるようなことはないだろうと思ったから。
私は夫のコミュニティに打ち解けようと懸命に努力をしていても、夫は私のコミュニティを切り捨てるように仕向けた。
結婚する頃には以前の知り合いはほとんど連絡を取れない状態になり、時々やり取りするのは夫の友人だけになった。
親や兄弟に連絡する時でさえ気を遣う。
必要があって電話をしていても、良い顔をしないからだ。
電話中はイライラして明らかに不機嫌になり、終わるまでずーっとため息。
だから、緊急の時以外は仕事から帰ってくる時のほんの少しの時間を利用して電話をしていた。
両親もそんな雰囲気を感じ取ったようで、向こうからかけてくることもほとんどなくなり、いよいよ私たちは孤立した。
息子が保育園に入ってからはママ友とも交流をすることがあったが、無言の圧力をかけられるのでなるべく避けた。
あまり仲良くしていると、段々とその相手のことを悪く言うようになり、仲違いをするように仕向けてくる。
そうこうしているうちに、私は保育園内のコミュニティでも孤立してしまった。
だから、電話がかかってきた時にはとても驚いた。
名前はもちろん表示されないので、恐る恐る出てみたのだが、出て本当に良かったと思った。
連絡をくれたのは結婚する頃に連絡先を消してしまって人のうちの一人だった。
こちらには連絡先が残っていなくても、相手には残っていたらしく連絡をくれた。
「番号が変わってなくて良かった」
と言っていた。
もし番号が変わってしまったら、この連絡も受け取ることはなかったのだから、夫から新しい番号にするように言われた時に抵抗して本当に良かったと思った。
久々に話をして、その人の思い出話をして。
もう会えないんだなぁ。
いつか会えるかもしれないなんて思ってたけど、二度と会えなくなってしまったんだなぁ。
そう思ったら涙が出た。
大切な人には、できるだけ会っておいた方が良い。
会えなくなってから悔やんでももう遅い。
その気持ちをぶつけるところもなくてただ悲しむだけの私を、空の上からどう見ているだろうか。