とうとう我慢ができなくなって義両親に相談に行き、我が家に来てくれることになったが、実は義両親の悩みは我が家のことだけではなかった。

夫の弟に関しても問題を抱えていて、そちらも非常に大変なことになっていた。

見た目は似ていないが兄弟二人とも同じような性格で、やはりモラハラの気質があった。

 

そして家族を苦しめる言動をしていた。

義弟の奥さんが

「いつも酷いことを言うんだよ~」

と言っているのを聞いた時には、彼女も気の強い方だと思ったのでどっちもどっちだと思っていた。
 
でも、後から分かってしまったのだ。

 

少しの時間しか接していないと気づかないけれど、義弟も同じように奥さんにモラハラをしていたのだということを。

 

確かに微妙に方向性は違うのだが、やっていることは大して変わらない。

 

相手を執拗に責めるところなどソックリだ。
 
義弟の奥さんは気持ちのアップダウンが激しいタイプで、私のように内に溜め込んでしまうことはなかった。

その代わりに家の中ではいつも大変なバトルが起きていて、義弟が辛く当たれば自分も物を投げるなどして応戦したり、時にはベランダから飛び降りると言ったこともあった。

その結果、義弟の精神状態が悪化してしまい、結局は仕事ができないところまで行ってしまった。

 

モラハラをする人って、自分が何かをされることには弱いのかもしれない。

奥さんの方も自分は被害者だという意識があるため、

「○○(義弟)のせいで精神的に病んでしまった」

と言っていたが、診察を受けたらそこまででは無かったそうだ。

 

でも、追い詰められて精神的に不安定になっていたのは本当のことだろうと思う。

 

でなければ、あんな風に暴れたり狂言自殺をするようなタイプではなかったのだから。

診察を受けた医師からは、

「うつ病とまではいかないよ」

と言われてしまったものだから、奥さんは分が悪くなってしまい、詐病だと思われるのが怖いのか病院にも行かなくなった。

 

でも、事あるごとに暴れて義弟とバトルを繰り返し、時がたつにつれどんどん疲弊していった。

義弟の方は長い間病院にお世話になっている。

 

少し回復したと思っても、また調子が悪くなるという繰り返しで、義母がせっせと面倒を見ているような状況だ。
 

義弟夫婦の場合、何がどう間違ったのかを考えてみると、一因として考えられるのは高い住宅ローンを組んでしまったことがあげられるかもしれない。

夫婦共同で払っていこうと高額なローンを組んだのだが、入籍するのと同時に奥さんが正社員を辞めてしまった。

 

負担の大きいローン額を毎月義弟が一人で返済しなければならなくなり、日々の生活はカツカツになった。

奥さんも遊んでいたわけではない。フルタイムのパートで働き、家計を支えようとしていた。

 

でも、正社員の仕事になかなか就けなくて、ローンを組んだ時のような収入になるには程遠かった。

初めてこの話を聞いた時、確かに酷いと思った。

 

もし働いている会社が嫌な所で辞める可能性があるのなら、住宅の購入を先延ばしにするべきだったのに。

しかし、入籍した時には本当にこのまま頑張ろうと思っていた可能性もある。

 

現に一度だけ顔合わせで会った時にそう言っていた記憶もある。


義弟から奥さんの話をたびたび聞いているうちに、義父母も彼女に対して嫌悪感を抱くようになったのは言う間でもない。

そのせいで義父母からは冷たい対応をされることになり、些細なことで嫌味を言われ、怠け者だと言われたりもしていた。

義両親は夫と義弟の親だから、やはり最後は二人の肩を持つと思う。

 

たとえ家族が精神的に追い詰められていても、息子が辛い思いをすることの方が堪えるはずだ。

そう考えていたら、きてくれることは良かったが本当に解決できるのだろうかと不安になった。

 

 



そんな二人の生活は本当に皆を振り回していて、激しい喧嘩をしては義父母を呼び出したり、急に仲良くなって子供を持ちたいと言ったり犬を飼い始めたり。

生活が苦しくなっても節約することはないので、足りない分は義父母にタカるというクズっぷりも披露。

生活費を援助してほしいと訴えてくるのは義弟だが、そう仕向けているのは奥さんなので、その点ではどっちもどっちという感じだ。

義父母には諦めの気持ちもあるのか、いつも甘くて言われた額をそのまま渡すものだから、有り難いとも感じなくなっているようだった。

そんな状況の中で義弟がとうとう精神的な病気で仕事を休職しなければならなくなった時には、あろうことか毎月数十万も生活費を援助していたので、

「それは止めた方が良いですよ」

と言ったのだが、聞く耳を持たなかった。

 

自分たちが助けなかったら誰が助けてくれるのか、という感じで。

もちろん義父母だって底なしの資金を持っているわけではないので、ずっと続けられるはずもなく、とうとう貯金も尽きかけて、そこでようやく義弟に伝えた。

これ以上援助はできないと。

これを聞いて(遅い。遅すぎるよ)と思った。

 

義弟家のローンの連帯保証人になってるのに、自分達の貯金がほぼ無くなるほど援助してどうするの。

私達夫婦は自分の家のことだけでも大変なのに、この件に関しては何度も義父母に助言をしていた。

でも、結局はどうにもならない所まで行ってしまった。


そんな事情を抱えた義父母に、

「モラ夫を引き取って欲しいのですが」

というのは残酷な気もしたが、これ以上は私と息子もやっていけないと強く思っていたので、何が何でも連れて帰ってもらうしか無かった。