度重なるモラハラに耐えかねて、とうとう義父母に『これ以上一緒に居るのは難しい』と伝える決心をした。
事の発端は、夫が息子の文房具を滅茶苦茶に破壊したこと。
首根っこをつかんで放り投げて、あわや柱に頭をぶつけそうになったこと。
この二つが大きい。
定規は割れて鉛筆は折られ、筆箱もぐちゃぐちゃになっていた。
物凄い力で破壊したことが分かり、このパワーが息子に向けられていたらと思うと心底ぞっとした。
今回も息子に非があるわけではなく、夫が悪いことは誰が見ても明らかなのに、当の本人は決して自分の非を認めない。
意固地になっているわけではなく、本気で自分は悪くないと思っているのだ。
日頃の言動からも分かるが、何が起きても常に自分は正しいと思い込んでいる。
自分と異なる意見を言う人が居たら徹底的に論破してやる、というスタンスなので根本的に自分が間違っていたらという選択肢はない。
残ったもので勉強したくても、無事な文房具はほとんどない。
消しゴムさえバラバラに破壊されて、鉛筆は真っ二つになっていた。
恐らく目に見えているものを全て破壊したのだろう。
ノートなどは元に戻せない状態にするために真っ二つに破られていて、下敷きも割れていたので、本当に何もない状態だ。
破壊された息子の文房具を見た瞬間、私は涙がこぼれそうになった。
破壊の瞬間を見ていない私でもこれほどの衝撃を受けるのだから、息子は言葉には言い表せないほどの辛い気持ちを味わっただろう。
二人きりの部屋で暴れる父親に怯えながらなんとかしようとしたのに、あろうことか学校に持って行く大事な文房具を全て破壊されるなんて。
その時の気持ちを考えると心が震えた。
その惨状を目の当たりにしたのは、仕事から帰宅した後だった。
だから、どのような経緯でそんなことになったのかの詳細は分からない。
息子に聞いたら、いつものように急に怒りだして謝っても許してくれず、叩かれると思って頭を手で隠したら文房具を破壊し始めたということだった。
何か気に入らないことがあったに違いない。
あるいは虫の居所が悪かったのか。
ただ、一つだけ言えるのは、百歩譲って息子に多少の非があるとしてもそこまでやるような事は決して起こってはいないということ。
帰宅した時、息子は酷くショックを受けていていつも以上に口数は少なかった。
元々はお喋りで明るい子だったのに、誰がこんな風にしてしまったのか。
息子は何とかしようと必死に止めようとしたが、「邪魔すんじゃねーよ!」と勢いよく叩かれて、手の甲が赤くなっていた。
ここまでされているのに、毎日が限界だと感じているのに、いつも結局ウダウダと考えてしまって動けない。
最悪の日々から抜け出せない状況では私も同罪かもしれないが、下手に動くとその後の息子の状況を悪化させてしまう恐れもあるのだ。
家庭内では息の詰まるような心理戦が繰り広げられていて、選択を一つ間違えれば二人の希望が一瞬にして消える。
衝撃冷めやらぬ中、私は震える手で粉々にされた文房具たちを写真に収めた。とにかく証拠を残したかった。
口の達者な夫のこと。後から(こんなことがあった)といっても言い逃れをするのは目に見えている。
冷静になろうと思えば思うほど手が震えて、上手く撮ることができない。
ピントがずれてしまったり、肝心の部分が入っていなかったりと、何度かの失敗を経て何とか撮ることができた。