数は多くはないけれど、夫には女友達がいた。
彼女らを含めた学生時代の仲良しグループで集まり、時々映画を見に行ったりライブに出かけたりしていた。
一日外出してくれると、私たちはゆったりとした時間を過ごせるので大歓迎だ。
それに、万が一彼女たちの誰かと浮気されてもショックを受けるようなこともないし。
ある日、夫がいつものように仲良しグループで集まると言い出したので、私は二つ返事でOKした。
むしろ大歓迎なのだが、夫にはそれが分からないらしい。
「AとかBとかも来るけど、まあ夜は遅くならないようにするから」
と気を遣うそぶりを見せる。
いえいえ。良いんですよ。
日付が変わってから帰ってきても。
「Aと会うのは久しぶりだなー。あいつとは話が合うんだよ」
とどうでも良い話をその後もしつこく続けた。
このAというのが夫の一番のお気に入りで、付き合っている時に一度浮気をされかけたこともある。
当時はとてもショックで、Aに対しても警戒心を持ったものだが。
今となってはどうでも良いんだよ、と思っていた。
正直なところ、告白されたと聞かされたとしても何も感じないのだが、素っ気なくするとそれはそれで面倒くさいことになる。
私が焼きもちをやいているから夫の話に乗ってこないと、勝手な思い込みを暴走させるのだ。
それを誇らしげに友達に自慢をして、
「お前んとこは束縛が激しいよな」
と言われていたようだ。
AはAで、夫の本当の姿を知らないからか、とても良い奴だと思っていた節がある。
だから、結婚前に大勢で集まる時に私が参加すると、Aの友達に辛く当たられたこともある。
女性って、なぜかそういうところがあって。
当の本人でなく外野が色々と気をまわして状況をややこしくしてしまう。
Aがそれを望んでいたかは分からないが、まだ私たちが結婚する前はAと夫をくっつけようと色々と画策していた。
そんな過去があるから夫は自分がモテると思っている。
本性を知らなければ、そりゃー好意を持ってくれる人もいるかもしれないが、一緒に暮らしたらすぐにバレるんだけどね。
モテる自分が過去にほんの少しだけ両想い(?)になった相手と、今は友達として仲良くしているというシチュエーションに酔っている夫。
一度は通じ合った相手と出かけるのだから、私が平常心でいられるはずがないと思っていたように思う。
残念ながら、全く焼きもちを焼くことも無く、私は清々しい気持ちで夫を見送った。
いっそのこと、焼け木杭には火が付いて欲しいとまで思った。
モラハラ夫は自分は焼きもちを焼かせたくても、自分が焼くような状況になるのは許せないらしく、結婚してからも同期の男の子と連絡を取り合っていることを良しとはしなかった。
ハッキリと言わないけど、
「結婚するんだから他の男と連絡を取るような真似はしないよな」
と圧をかけてきて、その圧に負けて連絡先を削除してしまった。
本当に信頼できる仲間だったのに。
心の綺麗な人で、私たちのことも応援してくれていたのに。
親にも言えないような相談をしていた相手だったから、連絡先を削除しなければならなくなった時には、精神的にとても堪えた。
私たちの事情を知って味方をしてくれる人はもう居ないんだ。
誰にも相談できない日々が始まった。