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懇願する彼を拒絶するひより


彼はひよりとの結婚を

「本当に前向きに考えていた」と言うが

果たして……




前向きに考えているまでしか言えないのか

それで、あと何年私は待てばいい?


そんなことを考えて

また涙がこぼれてしまう



ひ「怖い、ここでキスしてしまうのが」



だって、絆されてしまう

そうして、私の結婚願望には蓋をして

また楽しい恋人同士、年齢だけ重ねていく



ひ「元彼くんが結婚が怖いのと同じだよ」



そう言うと、彼はキスするのを諦めたのか

彼はずるっと車のシートに倒れ込んだ



どのくらい時間が経っただろう

元彼くんがぽつり、と呟いた



「ありがとな、いろいろと」



ひ「ねぇ、どうして私じゃだめだったの?」



「だめじゃない、俺が覚悟ができなかった」



ひ「離婚するかもしれないのが怖いって言ったね

じゃあ、今別れるのは怖くないの?」



「ひよりがそう決めたなら」



ひ「私が決めたら結婚もできるの?」



「それは……今は無理だ」



ひ「またそれ」



「少し休んでから、送る

ひよりも疲れただろ、少し休め」



そう言って彼は私に背を向けた



その背中を眺めながら


(あぁ、本当にこれで終わりなんだ……)


と思うと

我慢していた涙が堰を切ったように

次から次へと溢れてきた



嗚咽を噛み殺して

泣いている私に気付いたのか

背を向けたまま彼がこう言った


「泣かんでよ、ひよりが泣いたら俺だって」


その声にも涙が滲んでいた



こんなにも感情的になった彼を見るのは

初めてだった



つづく