ぶすいのきわみ | 戦略PRプロデューサー・片岡英彦【公式】ブログ

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昨夜ずいぶんと久しぶりに牛込柳町近辺を歩いた。新入社員の頃に住んでいたので土地勘はある。大久保通りと外苑東通りの拡張工事が進んだ。

柳町近辺に古くからあった飲食店は、ここ10年でことごとくどこかに移転してしまった。昨夜行くつもりだった二十年来の付き合いの寿司屋さんも移転していた。

こういう馴染みの店には滅多に人を連れてこない。人を連れてくるほどの店でもないからだ。ふらりと一人で立ち寄る。だからいちいち予約や電話はしない。ヤボだからだ。

そういえば10年前くらいから、そのうち店が移転になると店主は言っていた。ずっと聞き流していたが、ついにその日が来たのだろう。

隣の店がまだ移転してなかった。そこの店長も顔見知りなので、どこに移転したのか聞いてみようと思ったが、それもヤボなのでやめた。そのうち移転案内が届くのだろう。

話は変わる。たまに繁華街などに「会員制」と書かれた表札が入口に貼ってある店がある。私は自分が例え「一見さん」でも、気になった「会員制」の店があれば普通に店に入ってみる。

これまで「会員じゃないから」という理由で入店を断られたことは一度もない。それ以来、何年にも渡って何度も来店しても、「会員になってください」などとヤボなことを言われたことも一度もない。要するにそういう店なのである。古くから飲食店には色々なタイプの客が来る。「会員制」というのは、小さい店が自分たちの店を守る方便だ。

ある日、披露宴の帰りらしき酔ったサラリーマン客が数名で大きな声で店に入ろうとやってきた。店主は丁重に「うちは会員制なんで…」と言って客を帰した。要するにそういう店なのである。

そういえばこんなこともあった。ある一人客がカウンターに座り軽くビールとつまみを何品か嗜んでいた。客はタバコを吸おうとした。この店は店内禁煙だった。

店主は申し訳なさそうに、店内禁煙だと伝えた。客は不満を言った。

「最初から禁煙だと分かっていたらこの店にはこなかった」

「店のホームページは見ていない」(この店にホームページはないが…)

「入口にも店内にも禁煙の貼り紙はない」

お客は理路整然とクレームした。店主は困ったなという顔をして、お客に深々と頭を下げた。

「すいませんね。うちは小さい店なのでサービスが至らなくって。きょうの分のお代は結構ですから、今度はタバコの吸える店に行ってくださいまし。」

この客がこの店を訪れることは二度とないだろう。

相変わらず狭い店内の壁に「禁煙」の貼り紙はない。ペタペタ貼り紙するのは店主にしてみればヤボの極みなのだろう。要するにそういう店なんだ。

柳町からそういう店たちがなくなった。チェーン店に行く気分でもない。とぼとぼと工事中の外苑東通りを荒木町まで歩いてみた。生きにくい時代になった。