24年3月5日の朝日新聞の記事、株価が史上最高値の4万円を超えたようです。

株価は経済の動向を先取りするといいます。しかし、町中では「実感がない」と言う声ま多い。

この株高をどう考えればよいのでしょうか・・・?

セオリー通り、これから景気が良くなる前触れ? それとも、金余りがもたらしている現象の一つ? それとも、それ以上に危険なかって経験したバブルの再来? 株バブルのあとに土地バブル?

こんなことを考えてみるには、もう少しお金に関する知識が必要な感じ・・・

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前回までの記事で、企業が生み出す生産量と世の中に出回るお金の量の間には相関関係が有ることが分かりました。

今回は、生産量とお金の量の関係についてもう少し具体的にみてみたいとおもいます。 経済学では、生産量と必要なお金お量の間には「必要なお金の総量=K×生産量」の関係があると考えられてきました。ここでKは定数なので、経済活動に必要なお金の総量は生産量に比例する、すなわち、生産量が増えればその割合でお金の総量も増える・・・と言うものです。 

このことは、前回の記事の物の生産とお金が生まれる仕組みを読んで頂ければ至極当たり前の結論です・・・。

困ったことに、ではこの定数Kはいくつなのか? と言うことは明確には経済学でもわかりません。過去のデータをみるとxxxだった・・・と言うことだけです。 しかし、生産量とお金の総量の間には比例関係があるのが望ましい・・・としていることには注目していいのではないかと思います。

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今回はお金の総量は実際にどれくらいあるのいか?・・・について整理した後に、生産量とお金の量はどの様に推移してきたのかを見てみようとおもいます。

 

お金の総量について・・・

私たちが一口に「お金」と呼んでいるものの中には実はたくさんの種類があります。

一番身近な私たちの財布に入っている千円札、一万円札、そして100円、10円と言った硬貨、もちろんこれらの量はお金の量としてカウントされます。 

そして、さらに、財布のなかに入っているクレジットカード、クレジットで買い物をすると、クレジット会社は私たちの銀行口座からお金をひきだします。 私たちのクレジットカードに紐づけされている銀行預金ももちろんお金です。

銀行預金には、普通預金の他に当座預金(利子がつかない銀行に預けているお金で、手形や小切手を使うことができます)、定期預金など貯蓄型預金もありこれらもお金です。 これらの預金はいつでも解約できて普段の買い物に利用できるからです。

このほかに、私たちに馴染みが無いCDと呼ばれる定期預金の様に利用されるものがあります。 これは、5000万円、1億円と言った単位で銀行が発行し、それを定期預金などよりも高い金利で運用したいという余裕のある企業や金持ちの顧客が購入します。 このCDは途中で解約することができません、しかし、CDを購入した顧客が急にお金が必要になった場合はCD市場でそれを売って現金化することができます。 銀行はCDを発行することにより解約されることがない預金を得ることになり、安心して長期に企業に貸し付けることができる・・・と言うメリットがあります。

お金の総量とは、一万円札から始まって、普通預金、・・・CDまでをすべて足し合わせたものが”お金の総量”です。 この量は日本銀行が、マネーサプライ、マネーストック、M1、M2,M3、CD・・・などの専門用語で分類して、集計・公表しています。

 

総生産量について・・・

総生産量とは国民が1年間に生産する生産物すべてをお金に換算したもの。 国内総生産(GDP)とかGNIとか、GNP(国民総所得)などの言葉で説明されていますが、それらの厳密な意味についてあれこれ知る必要はあまりありません。 要はお金に換算した生産物の総量が前年より多い、あるいは少ない・・・と言って景気が良いとか悪い・・・と言っているにすぎません。

個別の企業あるいは個人の生産物をお金に換算して集計されたものが総生産となります。

ここで個別の企業、個人の生産額について確認しておきます。

前回の記事「お金とは何か④:「お金の量」と「経済規模」の関係について」で自動車が多くの下請け企業(エンジン製造会社、タイヤの製造会社、バッテリー、電子部品、・・・上げればきりがない)と協力して作られる様子をイラストにしました。 ここである企業の生産額とはなにをさすのでしょうか・・・? 一番の大元、例えばトヨタとか日産が100億円の自動車を出荷したら、生産額は100億円になるのでしょうか? もちろんこれは誤りです、トヨタの配下の企業もエンジンやタイヤ、車体のシャーシを作る鋼板を生産して総計75億円の生産をおないます。 トヨタ本社が100億円を生産、子会社が合わせて75億円を生産した・・として、それらを足し算して175億円の生産と集計したら部品や素材が2重にカウントされてしまうことになります。

 

企業は部品や素材を加工・組み立てて、もとの部品・素材に価値を付加して出荷するわけです。 各企業の生産額とは購入した部品・差材に付加した付加価値の額をさします。すなわち、購入した部品や素材の額は生産額に含まれません、部品や素材の生産額はそれらを生産した企業の生産額としてカウントされます。 このため、企業間で生産額の2重カウントがおこることはありません。

 

これは、たとえばキャベツを作る農家についても同じです。キャベツ農家の生産額はキャベツの売り上げ代金から肥料代や苗代などの費用を差し引いた額がキャベツ農家の付加価値であり生産額になるわけです。 町のラーメン屋さんでも同じでラーメンの売り上げから麺の購入代金、光熱費、店舗の賃料、などを差し引いた額がラーメン屋さんの付加価値であり、生産額となります。

 

ちなみに、個人の所得をすべて合計した総所得と総生産額は同じになります。 

町のラーメン屋さんの付加価値・生産額はラーメン屋さんの所得と言うことになります。 また、多くの従業員を抱える企業では付加価値総額すなわち生産額がそこで働いた人の給与すなわち所得になります。 このため、働いた人すべての所得の総額、総所得は総生産額とイコールと言うことになります。

「会社は利益のすべてを従業員に分配していないぞ、内部留保として会社が保留しているお金があるぞ・・・」と言う疑問がでてますが・・・。 会社も法的には「法人」とされており、法人が所得を得ているとみなされるので、総所得と総生産額は同じになるわけです。 内部留保が大きくなりすぎると問題をおこすことがあるのですがそれはまた・・・あとで・・・。

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ようやく、お金の総量と総生産の関係を見るところにきました・・・。

お金の量と経済活動(総生産)の関係については、いろいろな考え方があって定説はみあたりません・・・、アベノミックスと前の日銀総裁の黒田さんのように「お金をふやせば景気は良くなる・・・」と言うひともいれば、「アベノミックスではなくてアホノミックスだ・・・」と当時から批判していた人もいます。

ここでは、両者の関係が過去どうなっていたかをみてみようと思います。

 

ここでGDPとは国内総生産の意味、「名目」とついているのは、物価上昇率が未調整の生身の国内総生産の意味で、お金との関係を見る場合は名目GDPで比較するのが理にかなっています。

「マネーサプライ」はお金の総量のこと。 

図に破線で示されている「調整後名目GDP」とは、この表を掲載している日本銀行・内閣府の説明記事によると・・・「日本の物価上昇率(GDPデフレーター)が米国並みであったと仮定して日本の名目GDPに上乗せすると、マネーサプライ増と平仄が合う大きな増加となる(図表1)」とあります。 すなわち、マネーサプライがGDPとかけ離れていることへの言い訳が書かれている・・・ようです。

日銀、内閣府もこの表が作られていた当時は「マネーサプライとGDPは均衡していることが望しい」と考えていたことがうかがえます。

実際、バブル*(土地バブル)崩壊前のマネーサプライとGDPは均衡しています。 

バブル崩壊後の急激なマネーサプライの増加の要因は、日本のほぼすべての銀行が土地バブルに関連する不良債権を抱え資金難に陥っていた時期で、日銀が直接間接に銀行を支えるために日銀が市中銀行への貸し出しを増やしていた時期です。そのためにマネーサプライが増加していたと考えてよいと思います。

2013年のアベノミックス以降については適当なグラフが見つかりませんでした、興味のある方は探してみてください・・・。  いずれにしても、「異次元の金融緩和」が10年続いた時期であり、それ以前と同等以上にマネーサプライが増加しているはずです。 一方、GDPの方は国民皆が知る通り横ばい・・・。

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以上で、長かったマネーの総量と経済活動の関係についての基礎知識は終了・・・。

次回からは・・・、

マネーの総量が以上に増加するとどうなるのか? インフレとは? バブルとは? などについて・・・