安定期経済では”貧富の格差の拡大”という問題と関連してより深刻な問題も発生します。 それは、本来お金は企業と家計・労働者の輪の中を循環(お金の経済循環)して経済が回ってゆきますが、その輪の中から漏れ出してしまうお金がでてくることです。

 

立場が優位にある大企業あるいは独占的な立場にある企業は、収益を労働者に分配することも、将来のための投資(設備投資、研究開発投資、など)に使うこともせず企業内部に保留してしまうことが起こります。 成長期の経済であればこのようなお金は翌年のための生産設備の増強あるいは新しい製品開発のための投資として使われのですが・・・。

 

安定期の経済では新し需要、新しい製品・産業が見つかりにくく、翌年のためにこのような資金を使うのではなく、新しく投資が必要となったときのために資金を企業内に温蔵しておく・・・ということがおこります。 内部留保を進める企業の言い分にはいろいろあります「近々の海外との競争のために今資金をためてその準備をしています」など・・・

一見、もっともないいぶんですが、上の図をみればわかるように、企業が生産した生産物を購入するために見合う賃金が労働者に支払われないので、企業が生産した生産物に売れ残りがでることになります。

かくして、翌年はより生産量を縮小することになります。 こうして生産量の縮小スパイラルが発生します。

生産物が売れないので価格が下がりってきます、いわゆるデフレ・・・ということになります。 しかし、ここで間違ってはいけないのは「デフレが良くない、インフレにすれば景気が良くなる」と言う議論です。 景気が良くない原因はデフレにあるのではなく、生産物の購入に見合うお金が家計に回っていないので、結果として物が売れないデフレになるのです。

 

前の記事で紹介した”貧富の格差の拡大”もこの傾向に拍車をかけます。ものが欲しい家計がいっぱいあるのに、そのような家計にはお金がない仕事が無いといったことがおこります。  貧富格差の拡大も経済循環の輪を痛めることになるわけです。

 

・・・・・以下はおまけの恨みぶし・・・・

この10年の経済停滞と格差の解消策として採られたのが、いわゆる”異次元の金融緩和”だったわけですが、それが全く機能しなかったことは国民皆が知るとおりです。

そもそも金融緩和と言うのは、経済が成長期にある経済で不況になったときに景気を刺激するために行う景気刺激策です。経済が成長期にあれば金融が緩和されれば、企業は生産増のための設備増強、新製品開発、などの投資を増やし翌年の生産増が図られます。 安定期の経済にあっては、需要の拡大が見込めなければ企業は設備投資も新製品開発投資も控え気味になります。

 

では・・・、どうすればいいのだろう・・・独り言・・・

成長期にある経済では企業サイド(供給サイド)をみて金融政策など経済政策を行えばよい、それは、成長期とは常に需要が供給を上回っている経済だからです。

一方、安定期の経済とは需要量と供給量はほぼ均衡している経済です。もちろん、新しい製品が開発されればその需要が発生します、一般にその規模は2%程度といわれています。

安定期の経済では、成長期経済とは反対に需要サイド・家計に注意が必要することが重要になります。 家計側・需要サイドが安定化していないと経済がうまくまわらなくなってしまう・・・。

 

家計サイドに目を向けた政策は沢山考えられる・・・。

(1)岸田政権が考えている「最低賃金の引き上げ」「賃上げ」「貧困家庭への直接交付」など・・・、家計に直接お金を回す方法も一つである。

(2)「こども食堂」への直接支援があっても良いかもしれない。また、社会保障をより充実させ、間接的に貧しい人への所得の再分配を行う方法もある。

(3)金融政策については、企業サイド(供給サイド)を見た金融緩和をやめることが重要である。 金融緩和を止めることにより、円の価値が上昇する。そのことは物の値段を下げることになり、家計の所得を相対的に押し上げることにもなる・・・。