アダムスミス、マルクス、ケインズに継ぐ4人目の天才でなくても「この政策はオカシイのでは」「なにか府ふに落ちないナァ」とだれでも疑問に思うようなことがあります。 元日銀総裁の黒田春彦さんが「異次元金融緩和で輪転機を回し続ければ日本経済はうまく行く・・・」とおっしゃったときに、「本当なの、それならなぜ早く輪転機まわさなかったの???」と疑問に思った人が少なからずいたはず・・・。

 

私たち自身が”働いて・収入を得て・消費をする”、そのことをモデル化して論じているのが経済学・経済政策であるとすれば、そのモデルの主人公は私たち自身です。 また、経済の実態を私たちは日々肌身で感じています。それゆえ、専門家でなくても、いやそれ以上に適格に経済政策の良し悪しを、肌身を通して感じているわけです。

 

ここでは、経済を動かしている主人公である私たちが「変だナァ、ホントニそれでいいの」と感じている経済政策について『なぜそう感じるのか・・?』を整理してみようと思うわけです・・。 そうすれば、そのことが、経済政策の良し悪しがより明確に確信できるはず・・・と思います。

 

では、成長期の経済と安定期の経済の本質的な違いの再整理から・・・。

アメリカのノーベル賞経済学者ガルブレイスは平易に経済を説明してくれることでよく知られた経済学者でした。 彼は「経済のなべ」と言う例えを用いて成長期と安定期の経済の違いを説明していました。

上の図の左側のなべは産業革命以前の経済のなべです。その規模小さいのがわかります。これは一国の生産量が未だ小さいことを表しています。

一方右側のなべは産業革命が始まったときの経済のなべを表しています。 なべの容量自体が大きいいのは、ワットの蒸気機関の発明に代表されるように、生産活動に必要なエネルギーが人力から蒸気機関による動力に替わり、潜在的生産能力が格段に大きくなったことを表しています。

なべの水位が低いのは、産業革命当初は経済規模も未だ低いことを示しています。 そこに、経済を潤滑に動かす経済活動の血液と言える”マネー・お金”が注ぎ入れられると、企業、家計、生産物の活発が活発になり徐々に年間の生産量も大きくなります。 なべの水位は経済規模(年間の生産量)が拡大してゆく様子をしめしています。

この状態が成長期の経済です。

 

 

経済が拡大を続けるといずれ水位がなべ一杯になります。この状態が安定期の経済と言うことができます。 安定期の経済では、新しい科学技術の発展により新しい技術・製品が開発され、それに対する潜在的な需要も拡大します、なべの大きさがそれに応じて少しづつ大きくなります。

かくして、経済は安定して成長する(先進国経済では、年2%前後の経済成長が一般的と言われています)ことになります。

 

一方、科学技術の進歩に見合う量を越えてマネーを注ぎ続けても、余剰のマネーはなべからこぼれ出るだけ・・・ということになります。 このこぼれ出たマネーはかって「土地バブル」を引き起こしたり、株式投資に回り株高になったりして「不景気の株高」などといわれました。 

最近では、大企業が内部留保金として企業内部に蓄積してきました。

 

もっと分かり安い安定期経済の金融政策の失敗は「異次元金融緩和」だと思うのです。 注ぎ込んだ膨大なマネーは経済のなべからこぼれ出ただけで経済の拡大に何の寄与もしなかった・・・。

10年にわたるアベノミックスの異次元金融緩和のあいだ景気が良くなることはありませんでした。

むしろ、人々は大規模金融緩和により引き起こされている円安による物価高で苦しめられています。