どうして日本経済は10年以上も低迷を続けているのか? 

効果を発揮しない金融緩和を未だに続けているのはなぜなのか?

この10年、貧富の格差が広がったと言われているが・・・原因はどこにあるのか?

私はこれには大きく2つの原因があるのではないかと思います。

 

一つは成長神話・・・個人も、企業家も、政治家・経済学者も、経済は高度経済成長とまでは行かなくても常に成長しつづけるものであり、不景気の時は金融緩和、財政出動、など、高度成長期の経済政策は常に有効なんだと信じている。

 

二つめは・・・経済が低成長時代に入った時の経済政策についてコンセンサスのある経済理論が今だない、このため、勢い、経済政策は従来型の政策金融緩和・公共投資・などとなる・・・。 結果は異次元金融緩和を続けたこの10年を見れば明らかである。

産業革命を期に急速に経済成長した時代の経済理論は3人の天才(アダムスミス、マルクス、ケインズ)によって確立されたが、その理論はモチロン成長する経済に当てはまる理論であった。 その後、経済が低成長・安定期に入ったが、その時の経済理論を提唱する四人目の天才が不幸なことに未だ現れていない、ゆえに、成長期の理論、あるいはそれを修正したような経済政策が続けられることになる。

 

一つ目の成長神話を信じる人達の言い分は・・・「ワーキングプアー、子供食堂、など、貧しい人が沢山いるではないか、貧しい人が沢山居るということは、未だ経済成長する余地が沢山あると言うことを意味している。」あるいは「貧しい人達を豊にするためにも、経済成長が必要である。経済成長すればその恩恵が雫が下に落ちるように貧しい人達に恩恵をもたらす」・・・という主張である。 

しかし、格差は経済が安定期にはいると必然的に発生する。そしてそのメカニズムを知って適切な経済政策を採らないと格差がますます拡大する、マルクスが指摘したとおりのことがこの10年に起こっている。

 

成長神話を信じる人達のもう一つの言い分は「不景気に入った時には、金融緩和、政府投資、規制緩和、とケインズは言っている。」とケインズを盲目的に信じているのである。

しかし、この政策は、新しい魅力的な購買意欲を掻き立てるような製品があり、人々の購買意欲が高く、企業もその製品の生産設備を充実させたいと考えている場合に当てはまるもので、そうでない低成長の経済には当てはまらない。

新たな経済成長は、あくまで、成長の源泉である科学技術の新たな発展による魅力ある製品の出現が必要なのである。

 

 

2つ目の問題・・・低成長時代の経済理論が未だ無いという問題・・・。

イギリスのサッチャー首相のサッチャリズムやアメリカのレーガノミックスで採られた

「新自由主義」と言う新しい理論がもてはやされた時代があった。

しかし、この理論は、国有企業を民営化したり、規制を緩和して企業間、労働者の競争意欲を高めれば経済は成長する・・・というもので、いわば、ムチで人々を叱咤激励するようなもので、もともと低成長時代にある経済を高度な経済成長に導くものではなかった。 経済成長は科学技術の進歩がもたらすもので、新自由主義と言った小手先の政策ではないことを証明しただけだった。 この理論は自由競争を拡大させさらなる格差の拡大を生んだだけであった。

かくして、3人の天才に継ぐ4人目の天才、低成長時代の経済理論を打ち立てる天才が未だ現れていないのである・・・。 4人目の天才が現れていないゆえ、従来の成長期の経済運営に頼ることになり、トンチンカンな経済政策がこの10年日本経済を痛めることになった。

 

安定期に入った経済の運営はどうあるべきなのか・・・?