工作の依頼が有り、柄の太さの見本に、今お使いの刀の柄をお預かりしました。
ただ、目釘穴の感じがおかしかったので良く見てみると、覗きこんだ向こうに、二方向から光が見えているのが分かるでしょうか。
このお刀の目釘穴は、かなり広がってしまっていて、ちゃんと効いていない状態である事が分かりました。
一般に刀屋さんでお刀を買う場合、刀屋さんは、美術鑑賞用としてお刀を販売するのが普通です。
なので、拵は、他の刀の物を合わせてあるだけと言う事が非常に多いのです。
要は体裁よく付いていればそれでいいのです。
それでも、経木等で補強して、ガタツキを無くしてくれていれば、良いのですが、ガタのあるまま販売している事も多いのです。
軽く振る程度なら大事には成らないでしょうが、試斬等した場合に、柄折れすると大きな事故にも繋がります。
この柄の場合、柄の内側は、経木でしっかり締めてあるので、目釘が通ってさえいれば、大きくガタつく事は無かったと思います。
ただ、目釘は非常に不安定で、やや斜めに刺さっていました。
不意に外れてもおかしくありません。
とりあえず、オーナーの方には、柄の作り直しを勧めました。
皆さんも、稽古に使う刀を購入された時は、目釘が緩んだり、変な方向に入っていないか、十分注意してください。
刀身は、時代のあるもので、綺麗に研げば、審査に出しても面白いかと思います。
拵も短めの特注品ですが、駐爪もしっかり効いていて、まずまず程度の良い98式軍刀拵だと思います。
軍刀ファンの方なら、軍刀拵を手に入れても、駐爪がしっかり利いている物は大変少ない事を良くご存じかと思います。
この拵えは、大変微妙な所でキッチリ駐爪がしっかり利いています。
今と成っては、歴史的な資料と言っても良いと思います。
大事に後世へ保管して頂きたいですね。