最近、また、柄糸について、いろいろ質問を受けることが多く成って来たので、かなり初期の頃に書いたブログの記事ですか、解説している記事が有るので、新しいお客様にも理解して頂く為載せてみたいと思います。

 

 

 皆さんは、柄糸と言うと、何を思い浮かべられるでしょうか?

 

 当店では、柄糸として、正絹、正絹絹紡糸、表革、ヌバックを販売しており、偶に、お客様の要望で木綿を取り寄せたりして居ます。

 

 拵の注文を受ける時、これらの商品の違いについて、色々と尋ねられることがあります。

なので、少しその違いについて前回は3部作にしましたが今回は、1回にまとめて、話をしてみたいと思います。

 

 先ずは織物の糸から。

 

 正絹については、あまり説明の必要もないと思いますが、絹糸のことです。それも、絹糸の特徴である、光沢があり手足の非常に長い物のみで作られている物を、当店では正絹としています。

 

 言い方を変えれば、「本絹」と言い換えてもいいかもしれません。

 

 これに対して、あまり知られていないのが、正絹絹紡糸です。

 

 こちらも、100%絹糸であるという点では、正絹と何ら変わり有りません。

 

 ただ、こちらは、同じ絹糸でも毛足が短く、昔なら、クズ糸として処理されて居た物を撚り合わせ、作られているので、光沢は、正絹ですが、手触りは、毛羽立った感じで木綿の手触りに近い物です。

 

 強度的には、どちらも差は殆ど無いそうですが、捨てて居た様な部分を有効活用している分、価格は、一般の正絹の柄糸に比べ、半額程度で買う事が出来ます。

木綿の手触りが好きと言う方には、木綿とほとんど同じ価格で、正絹の光沢があるので、結構受けています。

 

 木綿についても、ほとんど説明の必要がないと思いますが、綿花から採れる植物性の繊維です。

 

 居合刀の場合、殆どは木綿なので、真剣の拵をする時も、木綿を希望する方が時々いらっしゃいます。

 

 当店では、普段木綿の取り扱いをしていないので、お客様から特に木綿で柄を巻いて欲しいと希望があった場合は、その都度、個別に部材屋さんから卸ろしてもらっています。

 

 ちゃんとした本歌の拵をする場合は、正絹が1番綺麗でオススメですが、バリューセットで安く使い易さ重視でいくなら、正絹絹紡糸も悪く無いと思います。

 

 正絹絹紡糸の柄糸は、私の知る限りは、当店以外の店で扱って居るのを見たことが有りませんが、これもれっきとした、シルク100%ですから、柄巻の練習等に、安い材料の欲しい向きには面白いかと思います。

 

 いずれの糸も使い込んで行くと、手垢でカチカチに固まってきます。

 

 そこまで頑張って稽古しましょう。(つづく)

 

 

正絹の柄糸です。

<font color="#000000">柄糸 正絹 (黒)</font>

 

正絹絹紡糸の柄糸です。

柄糸 正絹絹紡糸 (黒)

 

どちらも、写真で見る程度では、殆ど区別がつきませんね。

触って、手触りを確かめるか、ドアップにして、毛足の立具合を見ると

違いが出るんですけど。

 

 

 

 昨日は、主に繊維系の使糸について話をしましたので、今日は、革系の柄糸について少し話をしたいと思います。

 

 革の柄糸と言うと、牛革が中心になっていますが、それ以外にももっと高級なものでは鹿革や爬虫類系の皮も柄糸として使われているものがあります。

 

 当店では、革製品の柄糸としては、牛表革(芯有り・芯無し)とヌバック(芯有り・芯無し)、豚ヌバック芯入り、の5種類を置いています。

 

 色は、黒と茶色が有るので、合計9種類に成るでしょうか。

 

 表側は、比較的誰でもわかると思うのですが、「ヌバック」については、「どういうものでしょうか?」という質問をよくいただきます。

 

 刀剣商によっては、ヌバックを裏革として表記してるとこもありますが、これは正しくありません。

 

 裏革とは、英語で言うと「スエード」と成ります。

 

 スエードは、本当に革の裏側を使う為、毛羽立った感じで、握りやすく手触りも良いものです。

 

 その反面、皮革業界では、使用頻度が少なく、高価と成る上、強度も、表革比べて劣ると言った難点もあります。

 

 更に、夏場など、汗を吸って表面がベタベタになってしまうことがあります。

 

 そこで登場するのがヌバックです。

 

 ヌバックは基本的に、表革です。

 

 表面を処理して毛羽立たさせることにより、裏側のように加工したものです。

 

 表面的には裏革(スエード)のように見えますが、実は表革なので、耐久性にも優れています。価格的にもスエードよりも安価です。

 

 原価で言うと、「スエード」→「ヌバック」→「表革」と言った感じになります。

 

 私自身は、スエードの柄糸を使った刀も持っていますが、使い方が荒いのか、汗でねちゃねちゃになる前に、表面がツルツルの表革の様に成ってしまって、スエードに悪印象は無かったのですが、先日、仲間の刀を見せてもらって、気持ち悪い程ねちゃねちゃしていて、いろんな方から「革の柄は、汗で直ぐべたべたに成る」と聞かされていたのがやっと理解できました。

 

 ヌバックもスエードも、稽古を重ねれば、表面は摩擦でツルツルに成ります。

 

 私の一番多く使用した刀は、元は茶色のスエードでしたが、今では表面が黒光りするほどツルツルで、誰もスエードと見てくれません。すり減りも大分としているようで、表面は、下地のサメの粒粒模様がそのまま外に表れています。

 

  明日は、芯入りと芯無しの説明をすることとして、今日はこの辺りで。(つづく)

 

 黒の表革です

柄糸 牛表革(黒)芯無し

 

黒のヌバックです

柄糸 牛革ヌバック(黒)芯無し

 

 

 

 シリーズ3回目の今日は、革の柄糸に表示してある「芯入り」「芯無し」について話をしたいと思います。

 

 まず、革の柄糸ですが、構造としては、薄い皮を左右から三つ折りにして、1本の紐状のものに作ってあります。

 

 この中に、薄い科学繊維で作った、帯状の芯を入れるのが、「芯入り」、何も入れないのが「芯無し」です。

 

 では、何のために芯を入れるのかと言う話ですが、これは革は収縮すると言う特性によります。

 

 正絹の柄糸であれば、多少強い力で引っ張ってもそれほど伸びて薄くなるという事はありません。

 

 これに対し、革の場合は、その使用される部分によって、縦に伸びたり、横に伸びたり、かなり大幅に収縮し、場所によっては非常に薄くなってしまったりすることがあります。

 

 ただ、これに薄い繊維の芯を入れた場合、その収縮がほとんど起こらなくなります。

 

 なので、かなり強い力で柄糸を巻いても、皮が伸びすぎて変な形になってしまうということがありません。それで「芯入り」と言うものができたのです。

 

 ただ、芯入り、芯無しなしの違いについても、多分にそれを巻く職人さんの好みによるところが大きいです。非常に強い力できつく巻く職人さんは、芯入りでないとダメと言われますし、別の職人さんは、芯が入ると使っていく内に、手に馴染み難いと言われ、芯無ししか使われません。

 

確かに、他の革製品で身に着ける衣類や、靴等も、長く手入れをして使っていれば、革製品の場合、ある程度収縮して、身体に馴染んでくるところがあると思いますが、芯入りの場合は、芯により収縮が抑えられているので、最後まで、最初のままの状態が続き、馴染んでいくという側面は押さえられると思います。

 

 使い手に取っても、どちらが良いかも、好みによって変わります。

 

 芯入りの特に表革の場合、日頃、十分刀や木刀を振っていて、掌の皮が分厚くなっている人には、しっかりとした、柄と感じられるでしょうし、掌がやや柔らかめの人には、柄が固くて、手が痛く成る事もあると思います。

 

 私は、殆どが、ヌバックかスエードの柄を使用していますが、以前、一度だけ、自分用に芯入りの表革で柄を作成してもらったことが有りますが、慣れない表革と言う事も有ったかも知れませんが、柄糸の捻りの部分の山が手に痛くて、何本か太目の竹を斬ったところで、刀を変えた事があります。それ以来、ヌバックの芯無しか、正絹絹紡糸で作ってもらう様に成りました。

 

 まあ、握り心地も、人の好みです。とりあえず、その特性をお伝えしたところで、今回のお話しは終了とさせて頂きます。

 

芯入りの表革

池田美術 柄糸 牛表革(茶)芯入り

 

芯無しの表革

池田美術 柄糸 牛表革(黒)芯無し

 

 写真の都合で、茶色と黒とを載せましたが、ぱっと見はどちらも

殆ど変りません。ただ、切り口を見ると、芯有は、真ん中に白い

繊維を挟んであるのがかすかに確認できます。

 

以上です。ご理解頂けたでしょうか。

写真では、革の柄糸が旧タイプの写真を使用していますが、現在大手の部材屋さんも発注するメーカーに全面的に切り替えた為、品質は著しく向上しています。

よろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

やや軽量でバランス良く、オールラウンドに使えるお刀です。

 

【バランス良く・斬れ味抜群】「無銘」 69.6cm 、鑑賞に・居合・試斬刀として!!!