柄を作成する時、幾つかやり方は有りますが、大きな違いとして、サメを巻きザメ(正式)とするのか、短冊(略式)で済ますのかという点が大きく変わります。

 

 ちなみに、居合刀(稽古用の模擬刀)は特注で無い限り、全て短冊です。

 

 

 

 2つの柄下地の写真を撮りました。

 

 上は上の柄は、側面までサメが巻いているのが見えるかと思いますが、巻きザメで、多くは真裏の中央までくるりとサメ皮で包んであります。

 

 下の柄は、側面が木で中央の糸の隙間から見える部分にだけ、短冊状のサメが張られているのが分かるかと思います。(少し拡大して見て頂くと、サメの端の部分が切られていてザラザラしたサメの斬り跡が見えると思います。)

 

 どちらも昔の刀の柄です。古くから、こういう安く作るための工夫はされていた事が分かります。

 

 

 これは、居合刀用の柄木ですが、最初から短冊で作る様に、真ん中の見える部分にサメを貼る溝がある事が分かるかと思います。

 

 ここで言いたいのは、短冊で作った柄下地を使って巻きザメにする事も、その逆に巻きザメで作った柄下地を短冊に作り直すのは、木の厚みが変わったりするので、殆ど無理だと言う事です。

 

 価格的には、巻きザメの方が技術的にも、材料的にも圧倒的に高く成ります。

 

 

 これは、巻きザメに使った後のサメの端材です。

 

 当店は基本的に「本鮫」を使うので、大きい小さいと個体差は有るものの、一番上の2本柄木が並んでいる物の上の柄木の右端の方を見て頂くと、「親粒」と呼ばれる他のサメの表面よりやや大きな粒が付いていますが、そこを選んで、サメを切って使うので、1枚のサメから1振り分のサメしか取れません。後は端材と成ります。

 

 ところが、短冊だと、上の写真の端材を短冊状に斬って使えば上手く使えば、5振り分位の短冊が取れます。(当店の現代金具の項目で多数販売しています)

 

 サメは乾いていると表面は石のように硬いので、強さに置いては、短冊の柄下地に比べると明らかに丈夫です。

 

 それに、サメを短冊状にカットするのは私でも出来ますが、くるりと撒いて裏面でピタリと合わせるのは、ちょっと技術が必要に成ります。

 

 なので、作成価格が大きく変わるのです。

 

 当店の柄巻きの項目にサメの張替というオプションが有りますが、これは短冊の張ったサメを、古い物を剥がして、新しい短冊に変える事で有って、本歌の巻きザメで作られた柄では出来ないのです。

 

 ただ、分からずに、本歌の巻きザメの柄をサメ交換して欲しい。或いは逆に短冊の柄下地の柄を巻きザメに出来ないかと言う依頼は結構多いです。

 

 それが出来ないのは、短冊と、巻きザメでは、柄の木の形が微妙に違うからだと言う事を理解して頂けば有難いです。

 

 

 

 

 

大変ダイナミックな刃紋のお刀です。

そして、拵が、一枚鮫の大変見事で味のある拵が付いています。

多少摺り上げられた跡が有りますが、これは、先の大戦で軍刀拵にする為に短くされたのでは無いかと思います。

しかし、その後立派な拵をあてがわれた所を見ると、出自の良さが現れていると思います。

観賞用としても大変良いお刀かと思います。

【豪華な拵えの美しい刀】「無銘」67.5cm 、鑑賞に・居合・試斬刀として!!!