シリーズ3回目の今日は、革の柄糸に表示してある「芯入り」「芯無し」について話をしたいと思います。
まず、革の柄糸ですが、構造としては、薄い皮を左右から三つ折りにして、1本の紐状のものに作ってあります。
この中に、薄い科学繊維で作った、帯状の芯を入れるのが、「芯入り」、何も入れないのが「芯無し」です。
では、何のために芯を入れるのかと言う話ですが、これは革は収縮すると言う特性によります。
正絹の柄糸であれば、多少強い力で引っ張ってもそれほど伸びて薄くなるという事はありません。
これに対し、革の場合は、その使用される部分によって、縦に伸びたり、横に伸びたり、かなり大幅に収縮し、場所によっては非常に薄くなってしまったりすることがあります。
ただ、これに薄い繊維の芯を入れた場合、その収縮がほとんど起こらなくなります。
なので、かなり強い力で柄糸を巻いても、皮が伸びすぎて変な形になってしまうということがありません。それで「芯入り」と言うものができたのです。
ただ、芯入り、芯無しなしの違いについても、多分にそれを巻く職人さんの好みによるところが大きいです。非常に強い力できつく巻く職人さんは、芯入りでないとダメと言われますし、別の職人さんは、芯が入ると使っていく内に、手に馴染み難いと言われ、芯無ししか使われません。
確かに、他の革製品で身に着ける衣類や、靴等も、長く手入れをして使っていれば、革製品の場合、ある程度収縮して、身体に馴染んでくるところがあると思いますが、芯入りの場合は、芯により収縮が抑えられているので、最後まで、最初のままの状態が続き、馴染んでいくという側面は押さえられると思います。
使い手に取っても、どちらが良いかも、好みによって変わります。
芯入りの特に表革の場合、日頃、十分刀や木刀を振っていて、掌の皮が分厚くなっている人には、しっかりとした、柄と感じられるでしょうし、掌がやや柔らかめの人には、柄が固くて、手が痛く成る事もあると思います。
私は、殆どが、ヌバックかスエードの柄を使用していますが、以前、一度だけ、自分用に芯入りの表革で柄を作成してもらったことが有りますが、慣れない表革と言う事も有ったかも知れませんが、柄糸の捻りの部分の山が手に痛くて、何本か太目の竹を斬ったところで、刀を変えた事があります。それ以来、ヌバックの芯無しか、正絹絹紡糸で作ってもらう様に成りました。
まあ、握り心地も、人の好みです。とりあえず、その特性をお伝えしたところで、今回のお話しは終了とさせて頂きます。
芯入りの表革
芯無しの表革
写真の都合で、茶色と黒とを載せましたが、ぱっと見はどちらも
殆ど変りません。ただ、切り口を見ると、芯有は、真ん中に白い
繊維を挟んであるのがかすかに確認できます。
やや浅い樋が掻かれいていて、しっかり振らないと樋鳴りがし難いですが、しっかり振ればちゃんと樋鳴りもしてくれます。
刀身のバランス良く振り易くて扱い易いお刀です。