最近、多くあるのが、拵作成と同時に目釘穴を2つにして二本目釘に改造して欲しいと言う希望が良く寄せられます。
物理的には簡単ですが、少し面倒な手続きが有るので、少し説明します。
二本目釘は、試斬を良くする流派等において、柄をより強靭にする為に行われます。
一般の形居合に比べ、試斬を行うと柄木の消耗が激しく、より早くに柄のガタツキが出ます。
試斬をほとんどしない場合は、二本目釘はほぼ必要ないと思われます。
柄の強化を行うには、二本目釘にする他、柄木を桜や樫の木等の硬木する方法や、当店で以前に行いましたが、ステンレスの強いプレートを柄のサメの下に形を綺麗に整形して埋め込む等、いくつかの方法が有りますが、硬木で作ったり、ステンレスのプレートを加工する事の出来る職人さんは滅多に居ません。
ある意味、二本目釘は、普通の職人さんでも出来る、簡単な柄の強化策である事は間違いないと思います。
私が長く使用していた「河野貞光」刀匠のお刀は、何万本の竹や畳表を斬ったか知れない程斬りましたが、未だ二本の目釘をしっかりとさすと、柄は少しもガタツキも出ていない事で立証されています。
ただ、勝手に穴を増やすと、登録証と記載内容が異なってしまう為、そのままで、刀を持ち続けると、違法状態と成ります。
なので、ちゃんとした手続きが必要と成ります。
先ず、登録証に記載の都道府県教育委員会に、改造したい旨、電話連絡すると、必要な申請書を送ってくれます。
その書類を書いて、茎の押し形を取ります。
そして申請すると、遠方の都道府県の場合、所有者の住所地の都道府県と連絡を取って、所有者の住所地の教育委員会から、穴を開けて改造の上、何月何日に、現物を持って審査に来てくださいと連絡が来ます。
これが、申請して、1ケ月半位先の日付で来ますので、その間に、控え見釘をドリルで開けて申請書通りに改造した物を持って行って確認してもらいます。
この時、そもそもの長さや反りが違って、登録証と合致しない場合、全国照会が行われ、全国に教育委員会に、該当する刀が無いか調べることに成るので、下手をすると手続きだけで3ケ月を超える事も有ります。
樋の有る無しも登録証の原簿には記載されていますので、チェックされますが、後樋を彫った場合は、反りが大きく成ってしまう可能性が有るので、出来れば、樋彫りと二本目釘化は同時にしない方がスムーズに行くと思います。
そして、現物確認でその刀が登録証と同じ刀で、申請通りの改造が施されていると認められると、その場で、手数料を払って、新しい登録証を作ってもらえます。
なので、正式に手続きを踏んで二本目釘に改造する場合は、普通に拵を作るよりも最低1ケ月半程度、下手をすると3ケ月程度手続きだけで時間がかかってしまう事が有る事を理解して、刀を使うタイミングを計って行うと良いと思います。
長さ2尺4寸弱有り、刀身重量も900gを超える豪刀ですが、手にズッシリ来る感覚はなかなか心地よい物が有ります。
形中心の居合では、軽い刀身と深樋で「ヒュンヒュン」鳴る刀がもてはやされますが、スポーツ的な居合の刀では無く、重い刀身で相手を悪しきるような迫力のあるお刀です。
摺り上げられて尚、この長さ、重量が有る所に戦国の刀であった事が証明されている様に感じます。ずしりとした重さが、心を静めてくれる様な迫力あるお刀です。