お客様から研ぎの依頼を受けた刀がありました。
室町時代迄は確実に遡る古いお刀でしたが、減りが激しく、状態がかなり傷んでいたので、研師の意見も聞いて、砥ごうと言う話になりましたが、研師からは、「焼き刃がかなり薄くなって居て、特に、物打ち付近では殆ど残って居ない。お金をかけて研ぐ価値は無い。」と言う見解が返って来ました。
それを依頼主にお伝えした所、「そう言う、言い難い事をしっかり言ってくれる研師さんは、信頼出来る。刃取りして何とか、綺麗にしてもらう様、もう一度お願いして欲しい。」と言われ、やむなく、お客様の意向をそのままお伝えしました。
しかし、研師さんは、「刃取りもして仕上げると、この位高くつくが、それでも大して綺麗になる訳では無いので、申し訳無いが、自分は辞退させて頂きたい。」
と言うので、再度、お客様に連絡を入れました。
刃取りをすると、焼き刃の無い刀でも焼き刃が残って居る様に見せる事は可能と思いますが、この研師さんは、頑なにそれを拒まれました。
しかし、研師さんも、気になった様で、もう一度、しっかり見てくれた様で、もう一度、メールが入って来ました。
「前回の研ぎで、息の根を止めた感じです。死人を生き返らせることは出来ません。」と書いてありました。
刀も命が有る物と言う事を大切に考えたいですね。
地肌良く見えて、斬れ味も充分なお刀です。
時代なりの疲れは有りますが、用の力十分なお刀です。
長寸の割に軽量で、居合の形でも使い易いと思います。
【長寸・斬れ味良し】「無銘」73.2cm 、鑑賞に・居合・試斬刀として!!!