お客様から買わせて頂いたお刀の鞘です。
恐らく、元々このお刀の鞘では無く、鯉口が収まり難かったので、削って無理に合わせていたのでしょうが、ここまでボロボロに成ると危なくて使えません。
柄も合わせで、ガタガタだったのでどちらも作り直す気で、刀身はなかなかがっしりしていたので、健全性を評価して、そのまま使えるのは刀身だけと思いつつ、少し高めに値段を付けました。
当店の場合は、基本的に使う為の刀が欲しいので、やや短い軍刀サイズでしたが、刀身がしっかりして健全なら、まともに値段を付けます。
ただ、この刀は、拵が無いに等しいので、その分はやや低めに設定させて頂きました。
この刀に限らず、鯉口が割れてしまうまで、使い続ける方が時々居られます。
鞘の中で、鞘を切りながら刀勢を付けるので、そうなるのですが、そこまで行く前に、ほんの僅か補修をするだけで、鞘はうんと長持ちします。
私の普段使いの刀は、居合刀用の鞘が上手くピタリと合ったので、そのまま、かなりの年数使い続けています。
ただ、手入れは、マメにしています。
以前書いた記事で、鯉口の締め方を書いた物がありましたので、参考にしてください。
抜き付での斬りを良くやる時は、鯉口の刃の当たる部分が、溝の様に削れる事も有るので、そういう時は、竹の破片を縦に割って、針の様に細くした木片を木工用ボンドと共に埋める事も有ります。
自分のお刀なので、マメに自分で補修してやってください。
必要なものは、経木、もしくは、それに代わる木の破片(ナイフで竹の割り箸などを削って作るのも問題ないと思います。
そして木工用ボンド。はさみ。基本的には必要なものはこれだけです。
経木を3センチ程度の長さに切り幅は濃い口の刃の当たる部分の幅に合わせて切ります。
次に、木工用ボンドをたっぷりとつけて、それを濃い口の端のほうに貼り付けるだけです。
この時に、割り箸か何か鞘の内側に入るものでしっかりと押さえつけて、そのまま1時間も放置すれば(当然接着面を下にして乾かしてください)それで完成です。ものの5分程度でできる作業です。
そして、緩んだら、この作業を繰り返していれば、安物の替鞘や居合刀の鞘を流用しても、かなり長期間使用ができます。
こんな簡単なものは、ご承知の方も多いとは思うのですが、抜き付に慣れないうちは、どうしても鯉口を少しずつ切っていってしまうことが多いです。
そして、鯉口を切るのが一定を超えると、いきなり「バキッ」と鞘が割れてしまうことがあります。
そうすると、指を落としかねない大きな怪我につながります。
また、濃い口が緩んでいると、何かの拍子に下を向いたときに刀が鞘から飛び出してそれを止めようとして、一瞬刀を握ってしまって、これも指を落としかねない大きな怪我になることがあります。
なので、濃い口については、ややきつくて刀身が完全に収まりきらない位でもいいと思っています。
稽古する内にすり減りますから。
ただ、ちょっとした補修で安全に稽古出来、鞘も長持ちするのですから、まめにチェックして、補修してください。
こんな感じです。すぐ終わりますよ。
これをすると、しないで、寿命はな何倍も変わります。
大切なお刀、自分が怪我をしない為にも、緩んで来たら、やる習慣を付けてください。
販売するかどうか迷いましたが、ヤフオクで、分からない人に流すのも気が引けたので、ちゃんと理解して頂ける人にと思い、ホームページに、掲載しました。
正直、物打ちの焼き刃は、十分物を切断出来る程は残っていない気がします。
とりあえず、日本刀を持ってみたい人、形に使うのに、定寸有る刀を安く探していた方に、買ってもらえれば良いと思います。
刀の最期を看取るのも、刀屋さんの仕事と思い、買ってから、悪い部分に気付いた刀も、最近、時々アップするように成りました。