写真にある海軍軍刀拵は、お客様の依頼で、当店で作成したものです。
勿論金具は、お客様が当時の物を用意頂きました。
刀身は「高山刀」です。
この後、研ぎに出して、お客様に引き渡しと成ります。
鞘は、サメ巻仕様では無く、本漆の石目仕様です。
ただ、現在一般に行われている乾漆の石目仕上げでは無く、戦時中の軍刀の石目を再現して欲しいとの事でした。
現在やっている所が無いとの事で、岐阜におられる上撰の職人さんと会い(その人以外、誰も引き受けてくれなかったので)、職人さんが持っておられた、三式軍刀を見て、「この仕様で行けるか、塗師に頼んでみる。」と意識合わせをしました。
以前も、鉄鞘軍刀の再生をさせて頂いた事がありますが、その時も大変な難産で、鯉口金具に傷みが有り、駐爪が利かずやや不本意な出来と成りました。
その時は、軍刀の模造刀を作っていたメーカーに依頼しましたが、前回の悪戦苦闘に、「もう軍刀は勘弁して欲しい。」と言われてしまいました。
最期の手段で、太刀拵でも何でも、依頼した物を「出来ない」と言った事の無い「上撰」の職人さんに泣きつきました。
「しょうがないね~」と何とか引き受けてもらったものの、軍刀独特の石目塗で、先ず躓きました。
とりあえず、三式軍刀の塗を出来る限り再現してもらう事で、塗師さんに悪戦苦闘してもらうことに成りました。
(写真ではちょっと分かり難いですね)
柄糸も数社から取り寄せ、最もお客様が見本として送られてきた写真に近い物を採用しました。
しかし、最大の問題は、刀身と太刀金具が別の刀の物であったため、責金物や足金物が刀身に対して小さめで微妙な薄さで、強度も何とか出す為、長時間かけて、大変慎重に作ってもらう事と成りました。
それでも何とか、お客様に見せられるレベルで、出来上がってきてホッとしています。
本当にピッカピカで、綺麗に出来ました。
長さ、やや短めですが、その分、抜き打ちは大変楽です。
刀身は、なかなか綺麗で、刃も良く立っています。
研ぎ直しをしていない分、格安ですが、形も試斬も十分行えます。
因みに、当店のトップページにはめている動画で、私が竹と畳表を斬っている動画で使用している刀は、65.8㎝の軍刀身です。
短くても、技を大きく見せる事も、しっかり斬る事も出来ると思います。