広告看板の会社 | 片桐あきひろオフィシャルブログ

広告看板の会社

今回の研修でご一緒した、和歌山市に本社のある広告看板会社の経営者から話を聴かせてもらいました。

広告用の看板の制作と設置作業は、建物を竣工させる段階での最後の工程になるため、当初予算の使い具合によっては予算が削られることがあるそうです。

建設工事などを始め全ての仕事は、総予算を組んでから工事に着手しますが、工程の中で予定外の調整や仕事が発生することから、予定以上の予算が使われることになります。

その結果、最終工程の予算、つまりまだ仕事に着手していない分野の予算で調整することになります。

広告看板は建設工事に伴う最終の工程なので、ここに予算のしわ寄せが行くことになります。

当初予算が削られ、減額された予算内で仕事をすることになります。

もちろん断ることもできるのですが、断ればその予算で仕事を請ける会社が出てくるので、予算が合わないからと断ってしまうと次の仕事の機会は失うことになります。

仕方がないので「その仕事が赤字であっても請け負う」ことになるのです。

つまりその仕事が赤字であっても、継続して仕事を請けることでトータルとして利益がでるようにしているのです。

社長によると「利益が出なくても仕事を断ることができない業種で、最も予算のしわ寄せがくる業種のひとつです」ということです。

今から30年前の畳一畳ぐらいの看板製作費は約1万円だったそうです。

わが国では30年間もデフレ経済が続いてきたことから、製作費の価格は据え置かれた状態にあり、現在でも約1万5千円から2万円が相場だそうです。

「つまり30年間も価格変動が少ない仕事の一つ」となっています。

中には30年前の価格の1万円で制作を請け負っている先もあり、このように値上げを言っても受けてくれないところもあるのです。

社長は「現在、資材費や光熱費が上昇していますが、その値上がり分は価格に転換できていません。また京阪神での仕事が多いのですが、阪神高速の料金が値上がりしていますが、それも原価に参入できないので据え置いています。なので社員の給与を上げたいのですが、上げることができていません」ということです。

原材料費や光熱費などの上昇による看板製作費の値上げのお願いをしていますが、「話を聴いて受けてくれる会社はほとんどありません」という状態です。

更にペンキなど材料や資材のメーカーからは「突然、会社に封筒が郵送されてきて『価格改定のお願い。原材料費高騰のため、〇月〇日から改定となりますのでよろしくお願いいたします』と通知が来ます。

これはメーカーからの通告で、こちら側の意見は聴いてくれることはありません」ということです。

またはメーカーの営業担当から電話がかかって来て「価格改定のお願いで訪問したいのですがいつ頃が良いでしょうか」と話があります。

来てもらっても、来てもらわなくても、「価格改定のお願い」を断れば納品してくれないだけのことですから、メーカーからの値上げは避けられないのです。

「こちらの仕事は値上げできないのに、メーカーは一方通行なので特に昨年からの材料費の値上げが続いているので利益がどんどん削られています」ということです。

そのため「今春も社員さんの給与は上げられていない」状況です。

このまま価格転換ができなければ従業員さんの賃上げもできませんし、会社の利益確保も益々厳しい状況になっていきます。

「本当にこの業界は競争が激しく値上げができないしくみになっています。子どもに跡を継いでもらう予定ですが、将来が心配です」と話してくれました。

小規模の会社が賃上げできない現状を伝えてくれました。

今春、全国統計では中小企業の賃上げもなされていますが、統計に反映されていない更に規模の小さな会社では、社員のために賃上げしたいけれど出来る状況にはなっていないことが分かります。

県内の小規模企業の課題だと認識しています。