スペースアート | 片桐あきひろオフィシャルブログ

スペースアート

わが国のスペースアートの第一人者である池下章裕さんと懇談する機会に恵まれました。

昨日から和歌山市に入っていたので、今日、お会いして懇談する幸運に恵まれました。

 

 

池下先生のことはJAXAから聴いていたので、名前は15年ぐらい前から知っていて「紹介します」との話もあったのですが、これまで直接お会いする機会はありませんでした。

過去に、和歌山県民文化会館や和歌山ビッグウエーブで開催された作品の展示は鑑賞していましたが、今回は友人を介してご縁をいただいたことから、直接会う機会となったものです。

池下先生との懇談は熱量が増えていくことを感じる素晴らしい時間となりました。

最初はスペースワンのロケット発射に関しての話題です。

 

残念ながらスペースワンの初号機の打ち上げは失敗に終わりましたが、それは失敗ではないという話です。

日本人はうまく行かなければ失敗と定義づけする傾向があります。

スペースワンの打ち上げに関しても「失敗した」と思っている人がいると思います。

でもこれは失敗ではありません。

ロケットの分野では、初号機から打ち上げを成功させるよりも失敗する方が、より良い成功に至ると考えられています。

これは失敗することなく成功してしまうと、うまくいった原因を推理しなければならないので却って不安になるからです。

 

2回、3回と打ち上げに失敗すれば、失敗の原因を特定できますから失敗の原因を取り除いていくことができます。

ところがいきなり成功してしまうと失敗経験がないため、失敗経験の蓄積がなく、次の打ち上げは大丈夫だろうかと、いつ失敗するか分からない不安感が生じるのです。

だから将来に不安を抱えないためにも、数回程度は失敗する方か良いのです。

つまり失敗は次のつながるものだと捉えるのです。

私達が失敗と表現していることは、実は失敗ではなく成功に至る道のりの過程に過ぎないのです。

 

ここで思い出すのはかつての「はやぶさプロジェクト」です。

このプロジェクトは加点方式で計画を進めました。

うまく進んだらプラス5点、かなり進展できたらプラス10点という方式で計画の進捗を加点していきます。

では失敗した場合は次のような考え方になります。

少しの失敗はプラス1点、大きな失敗はプラス0.5点というように、失敗しても加点していくのです。

 

この方式だと、プロジェクトがスタートした時は0点ですが、失敗してもうまく進んでも必ず加点されてくことになります。

大きな失敗して0点に戻るのではなく、加点されるのでスタッフの気持ちの中では前進していくのです。

 

「大きなミスをしてしまったから、またスタート地点からだ」と思うことなく、「この失敗の原因は〇〇にあるから失敗原因は特定できたので、今後はこの〇〇の検討はしなくても大丈夫。次は他のところの不安を取り除いていこう」と考えることになるのです。

プロジェクトは必ず進んでいくのです。

 

日本人、そして日本企業の多くは減点方式なので失敗を避けようとするのです。

小さな成功を積み重ねて来ても、一つ大きな失敗をしてしまうと大きく減点されるので、それまで積み上げてきた点数が一気に吹き飛んでしまうのです。

その結果、人事考課や処遇面でマイナス要因となり将来に響くことを恐れてしまうのです。

このため減点方式では安全サイド、危険かもしれないと思ったことは回避することになるのです。

危険かもしれないと思っている先に成功が待っていることもありますから、失敗を恐れると成功に辿り着けないこともあるのです。

 

それよりも失敗は不安要因を消していくものなので成功に近づいていると考えることがプロジェクトには必要なのです。

宇宙は加点方式で進めなければ、前例がないことが多いので、前を向いて進むことはできなくなります。

スペースワンの初号機打ち上げは失敗ではなく、成功するために必要なものだと考えたいと思います。

 

池下先生との懇談の時間は加点方式の意見交換となりました。

熱量があがったのも失敗は失敗ではなく、成功につながるものであるとの考えを前提にしていたからです。

 

池下先生には、素晴らしい時間を共有させていただいたことに感謝しています。

僕にとっては15年越しの待望の懇談の機会となりました。