彼にとっては、ただの遊びだったであろう5年前の関係。
カオルは本気だったからこそ、恨みつらみが溜まっている。
その後別の人を好きになれたから、どうでもよくなったけれども。
それでも自分に対しての情熱が低かった彼の対応は、忘れてはいない。
彼はそんなことに気付きもせず、新鮮そうにカオルとの話に興じている。
間が持たないから、カオルも色んな質問をする。
気持ち良さそうに答える彼を俯瞰して見て、出会い系のデートを思い出すカオル。
この感じ、久々だなぁ。
最近はもう、慣れ合った相手としかデートしてなかったからなぁ。
こうして一生懸命に会話の糸口を探るのは、新鮮でもある。
学生時代の事や仕事の事や趣味など、あらゆる話題を掘り起こし、手持ち無沙汰になってくる。
そろそろ夕方にもなるし、帰ろうかな、、、
店を出て車に乗ると「この後どうする?」と、聞かれる。
「そろそろ帰ろうかな」
「カオルさん疲れた?もう帰っちゃうの?」
「うん、帰ろうかな…Nくんはどこか行きたいとこあるの?」
「カオルさんがまだ大丈夫なら、ハグしたいな」
…やっぱり、そういう流れだよね。
「ホテルとか?それともNくんの部屋?」
「どちらでも、カオルさんの良い方で」
その返答に、帰ろうとしていたカオルの気が変わる。
「Nくんの部屋に行っても良いの?」
「えっ、逆にカオルさん来てくれるの?!」
「うん、ちょっと興味あるから見てみたいかも」
「嬉しい!来てよ♪」
とんとん拍子に、Nくんのアパートに行くことが決まる。
男子の一人暮らしの部屋には興味があるカオル。
過去好きだったNくんの部屋、少しだけお邪魔して帰ろうかな。
ホテルに行くと、することしないとダメな雰囲気だけど、部屋ならエッチしなくても良いよね。
実際まだ時間は早いし、真夏の明るい時間に帰るのは、なんだか物足りない。
多少疲れは出ているが、いつもと違うことをしたいと思っている自分もいる。
やっぱり、最近元気になってきているのかな。
前は2.3時間出かけたら、もう疲弊していたのに。
今はまだエネルギーが残っているのを感じる。
もう少し何かを期待している自分もいる。
久々に満ちている体を感じながら、Nくんの部屋へと向かう。