まだまだ自然を吸収し足りないまーさんは、次なる場所を求めて海沿いへ向かう。
二人共訪れたことのない場所への探検を楽しんでいる。
工場地帯に車を走らせ、堤防から対岸を眺め、その後は砂浜のある海へと向かう。
五月の平日の昼間、誰もいない貸切のビーチ。
まーさんに石を渡して波打ち際に投げてもらう。
学生時代野球をしていたまーさんのフォームは、美しい。
ああ、野球部ってカッコイイ。
運動が大の苦手だったカオルは、運動部に強い憧れがある。
特に野球部には、好きな人もいたし、思い入れがある。
「カオルさんも投げてみてよ」と、小石を渡される。
まーさんの教えてくれる通りに投げても、全然飛ばずに手前で落ちる。
「女の人の投げ方だねぇ。スナップが全然きいてない」
と呆れるような声。
「私のことはいいから。まーさん投げてよ」
とまーさんを促す。
いつまででも見ていられるのだ、石投げをしているその姿は。
でもすぐに「腕が痛くなった」と、やめるまーさん。
残念、かっこいい所ずーっと眺めていたかったなぁ。
野球をしている人特有の体の使い方や、その体型や筋肉が美しいと感じる。
しなやかなその動きに見惚れるのだ。
長く海岸を歩き、頬が日焼けでチリチリしてくる。
さすがに暑くてバテてくる。
また木陰を求めて、古墳公園へ向かう。
おやつを食べて、また散歩する。
こんなに歩くまーさんは珍しい。
ベンチに座り、新緑の木々と鳥のさえずりを堪能する。
「最近カオルさんが言ってた、季節ごとに体調が変化するってことがわかってきたよ」
と言うまーさん。
日照時間で気分が鬱々としたり、元気になったり、そういう感覚がわかるようになったらしい。
だからかな?お散歩しようと持ちかけてきたのは。
太陽の光を浴びて、セロトニン出したかったのかな。
体調のことや、気持ちの変化など、お互いに色々話す。
まーさんにはまだわからないかもしれない、加齢の話もする。
「カオルさんまだまだ若いでしょ。老後はまだ先だよ」
とフォローしてくれるけど。
30代前半のまーさんと、40代半ばのカオルじゃ、やっぱり感じることは違うのだ。