深い眠りから起き、家の近くまで戻ってくる。
カオルお手製クレープをおやつタイムに食べる。
まーさんも飲み物とお菓子を準備してくれていた。
事前に準備してくれていることは、デートに対する意気込みを感じられるので嬉しいものだ。
米粉と豆乳のヘルシークレープを、まーさんは「美味しい!」と食べてくれる。
朝からいそいそと作った甲斐がある。
簡単そうに見えて、クレープは意外と手がかかるのだ。
薄く綺麗な生地を焼くのは難しいから。
しかしまーさんがモグモグ食べてくれたから、満足である。
食べた後は、横たわってイチャイチャしながらまた愛し合う。
ひとつになっている時は、言葉なんてなくてもそれだけでいい。
結局会っている時は、そんなに話さなくても大丈夫なのだ。
話すよりも、お互いの存在を肌で感じていたい。
だから今日もいつも通りのデートと変わりはない。
この前の長電話から何かが変わった気がしたが、やることは変わらない。
すっごく甘々になっているかと思えば、まーさんはいつも通りだったし、カオルも大して変わりない。
引っ付いていられれば、それでもう体は満足するのだ。
それ以上求めることはない。
会える距離なら、電話より会って引っ付きたい。
話すよりも体で触れ合いたい。
カオルはそんなことをまーさんに伝えた。
「オレもそう思うよ。引っ付いてるのが9で、話すのが1の割合がちょうど良いんじゃない?」
とまーさんも答える。
確かに、それが安心できる割合かも。
「この前の男の人から連絡きた?」
と不意打ちで尋問してくるまーさん。
来てないよ、と答えると、本当かなぁ?と疑いの眼差し。
あれ以降、シンちゃんからは何のお誘いもないし、社交辞令だったんだろう。
もしくは奥さんにバレたかなぁ、なんて、、
そんな裏事情もなくはないかも。
嫉妬深いまーさんには、もうシンちゃんの話は御法度だ。
けどまーさん自身は、それをネタにして茶化してくる余裕はできたようだ。
「元彼の話もしない方が良い?」
「別にカオルさんがしたいなら、してもいいけど。昔の話だから、そこまで気にならないけど」
そんな風に言いつつも、実際にカオルが元彼や夫のことを話題にすると、面白くなさそうである。
そりゃあそうだよな、面白くないよなぁ。
カオルだって、まーさんの過去の女の話なんて聞きたくないもの。
人ってそんなもんだよなぁ。
心が広い狭いとかそういうことではなく、好きな人の過去の好きだった人の話なんて、誰だって聞きたくないよね。