出会い系15人目の男、独身30歳カズさん。
なんやかんやで、こちらが都合を合わせて、週末の夕方に会うことにする。
習い事を終えた後の時間に、迎えに来てもらうよう伝えたが、市街地に不慣れなのか、場所を把握できていないようだ。
若いんだから、地図アプリで確認できるだろーが!
そんな怒りすら出てくる。
道や場所が分からない男にはイライラするカオルである。
それは夫が、道や場所に詳しいからであり、分からないことはすぐに調べて自身で解決できる能力を持っているからだ。
そしてそんな夫の側にいるカオルも、同じく詳しくなるし、調べることも厭わない。
そういう能力に男らしさや頼り甲斐を見出すカオルにとって、道や場所が分からずオロオロしている男は苛立ちの的にしかならない。
カオルがだいぶ譲って、あちらの分かる場所で待ち合わせる。
車は立派な普通車だ。
「はじめまして」
助手席に乗り込み挨拶をする。
写真よりは悪くない印象だ。
とりあえずドライブしようということで、走り出す。
話しかけたら、受け答えはちゃんとできるようだ。
だが提案力や気遣いは全くない。
習い事を終えて喉が渇いたカオルは、コンビニでコーヒーが飲みたいと催促する。
喉が潤ったら少し落ち着いてきた。
カズさんに仕事や恋愛の話を振って、自身の身の上話もする。
カズさんは高校時代には彼女がいたらしいが、それ以降何もなく、今に至るらしい。
恋愛の話よりも、友達とのゲームが楽しいと言ってる所を見ると、きっと彼女も必須ではないんだろうなぁと感じる。
自分のライフスタイルを変えず、彼女が欲しいと言っても、このままだと厳しいでしょうねぇ、と思った。
終始カオルがリードして、1時間の短い初顔合わせは終わった。
案の定、後のメールで
「カオル、めちゃくちゃ美人だった!栗山千明と柴咲コウとIZ ONEのユジンに似てる!めちゃくちゃスタイル良い!」
「彼女になって!また会いたい!」
などの興奮した内容が送られてくる。
褒められるのは大好物なカオル。
そういうメールにはノリノリで返信する。
だが、じゃあいつ会うかとか具体的に話を詰めようとすると、途端に滞るのだ。
ご飯に連れてってよ、と言っても渋るような返事。
そう、独身のくせにカズさんはケチな男だ。
自由になるお金はあるだろうに、恋愛に注ぐ気はないようだ。
そんなニオイを嗅ぎ取ると、こちらも気持ちが冷める。
逆光源氏で、自分色に染めようなんて思っていたことが、白々しくなる。
自分色に染めれるのは、相手が素直な場合に限る。
いくら言葉で、私のこと気に入ってくれたと言っても、行動が全く伴っていない。
いくら褒めてくれても、何の足しにもならない。
実際に会ってデートして、触れ合ってナンボでしょ⁈
触れない男には興味ない。
会えない男なんて、男じゃない。
こういう時、メッセージのやりとり、言葉だけで満足できる人が羨ましく感じる。
私はやっぱり、会いたいし、触りたいし、キスしてエッチして、そういうことができないと満足できないんだよなぁ、、、
しみじみ自分の欲求を難しく感じるカオルであった。