4月になり、新年度が始まった。
カオルの仕事はそう忙しくもなく、その暇さが余計にI川さんのことを考えさせてしまっていた。
暇だと不安が募るので、週一で習っていたバレエ教室の時間を増やし、週二ペースにしてみた。
体を動かして疲れさせないと、エネルギーが有り余ってしょうがない。
子どもの頃好きだった絵を描くことにも、チャレンジした。
自画像を描いて、パステルや絵の具で色をつける。
何かしら体や手を動かしてないと、おかしくなりそうだから。
何もしてないと、脳みそは、
何で彼は連絡くれないんだろう?
と悶々と考えだすから。
そしてLINEの画面と睨めっこする羽目になるから。
まあ結局、何してたって頭のどこかにはI川さんがいて、全てを忘れることなんてできやしないんだけど。
カオルは今までの男の連絡先を総動員してみた。
はぁー、過去の男って何でこんなに、どーでも良くなるんだろう?
前はあんなに好きだったのにね。
数える程の男しか連絡先には残っていないけど、とりあえずLINEやメールをしてみる。
とにかく気を紛らわしたい。
I川さんに執着しているこの想いを、少しでも他に逸らしたい。
こんなことしても、根本的な解決にはならないと分かっていても、男の穴は男でしか埋められない。
一度発動し出した恋愛欲は、どこまでも大きく貪欲になり、カオルには制御できないとこまできていた。
前回のNくんの時とはまた違う、恋の辛さが襲ってくる。
Nくんに関しては、片想いの要素が強かった。
けどI川さんは、熱い気持ちで押してきてくれてたのに、そこからの下り坂が激しくて。
もう自分が悪いのか、相手が悪いのかもわからない。
「新年度が始まったから、慌ただしくて。ごめんね、なかなか連絡できなくて」
そんなLINEがI川さんから届く。
私は、ごめんね、と謝られることが嫌いだ。
だって、ずっと私が待ち侘びてるみたいじゃないか。
淋しいだなんて一言も言っていないのに、なぜ彼は謝ってくるんだろう?
なんか偉そうじゃない?
彼の方が立場が上って感じじゃない?
モヤモヤする。
この、男からの
「忙しくて連絡できなくてごめんね」
という言葉が、これからずっとカオルを蝕んでいくことになる。
この言葉の何に引っかかっているのか?
それは今後解明されるのか?
カオルはモヤモヤとしたまま、数少ない男たちにコンタクトをとることを試みるのだった。