I川さんと深い仲になって、はじめの頃は週に何回か会ったりしていた。
隙間時間を合わせては、会いに行ったり、会いに来てくれたりしていた。
それが段々と、何週間かに一度休みが重なった時に、ホテルに行くというデートになった。
もちろんエッチはしたい。
けど、カオルとしては、たまーにのガッツリとしたデートより、頻度高めにちょこちょこ会う方が望ましかった。
おりしも年度末にも差し掛かり、I川さんの業務は忙しさを増し、LINEや電話も回数が減ってきていた。
淋しいなぁ。
ケータイの画面を何度も確認する。
LINEの通知の赤い数字が付いてないか、幾度も確かめる。
いくら忙しくても、休憩時間に一回のLINEくらいできるよね?
どんどんと不満と淋しさが募っていく。
気持ちが離れてしまったのかな?
カオルの不安をよそに、たまに職場で会うI川さんは嬉しそうな表情で近づいてくる。
「休憩時間に来ない?」
と、K宮さんとも交わったあの狭い事務所に誘われた。
短い休憩時間の間に、近況を話しながら、だんだん体の距離が近づいていく。
「ごめんね、最近忙しくて。あまり連絡できなくて」
I川さんは申し訳なさそうな顔でキスしてくる。
「うん。そうだよね、忙しいよね…」
こういう時のカオルはつい、仕事に理解のある女を演じてしまう。
そのまま体に触れられて、スカートの下に彼が潜ったら、もう淋しいなんて言えなくなる。
気持ちいいけど、最後まで出来ない虚しさもある。
I川さんはK宮さんとは違い、職場でそれ以上のことはしてこなかった。
カオルは仕事中に書いた手紙を渡した。
あくまでも重くならないように、メモ帳のような用紙に軽い文章で。
I川さんは目を細め、喜んでくれた。
その様子を見てると、愛が冷めたようには思えない。
会っている時には熱い眼差しで見つめてくれる。
まだ信じていいんだよね?
私のこと好きだよね?
言葉で確認したいけど、聞けない。
だって、言葉ではいくらでも言えるもの。
でも何の約束も関係性への言葉もないと、何を拠り所にすれば良いかわからなくなる。
次はいつ会えるんだろう、、
好きなのに、好かれてるはずなのに。
カオルの不安はどんどん大きくなっていくのだった。