初エッチをした後も、I川さんはまめに連絡をくれた。
カオルの恋愛ルールブックでは、エッチした後に相手から連絡があるのは、悪くない兆候である。
仕事の合間のLINEや電話。
それが当たり前になっていた。
こんなに仕事中に電話をくれる人なんて今までいなかったから、かなり本気で私のこと想ってくれてるんだわ〜
とカオルは、のぼせ上がっていた。
2人は、仕事中や休みの日や、隙間の時間を見つけては、会うようになっていた。
バレエ教室に街に出れば、休憩時間中の彼と会ったり。
外回りの業務をしている彼から呼び出されたら、出かけて行ったり。
仕事帰りの彼と待ち合わせして、車中でイチャイチャしたり。
もう生活の中心はI川さんになっていた。
LINEの内容も情熱的で、私を欲してくれるやりとりや、賛辞や褒め言葉のオンパレード。
そんなこと言われ慣れていないカオルには、強烈な媚薬だった。
みるみる間に、I川さんにハマっていく。
そりゃあ夫が言ってくれないこと、してくれないことを、言ったりしてくれたりしたら、心がとろけてしまうのも当然だ。
夫から経済制裁をくらい、自由を奪われているその反動から、余計、心は彼の方へと向かっていく。
だか一方で、年越しのお泊まり事件でギクシャクした夫婦仲を修復させねば、という思いもあった。
勤務日は毎日夫が迎えに来て、晩ご飯まで作るようになっていた。
ありがたいけど、ありがた迷惑だわ、、
今までほったらかしていたくせに、今更私に注意を向けてきたと思ったら、今度は監視するかのような視線で、息苦しい…
一応普通に過ごしてはいたが、窮屈な日常を送っていた。
そんな夫婦関係に風を入れたくて、カオルは旅行の計画を立てた。
どこか知らない土地は行けば、お互いに目線が変わって気分転換になるかもしれない。
そう思い、この重苦しい日常から逃れるようにカオルは夫との海外旅行を決めた。