海沿いのホテル。
カオルが気合を入れてきた服も下着も、一枚一枚ゆっくりと脱がされる。
I川さんは普段のお調子者感や、仕事での強気な感じは一切出さずに、丁寧に優しく愛撫してくれた。
キスをして、その唇はカオルの胸から下半身へと続いていった。
そうそれは、カオルが結婚して以来ずっと求めていた行為だった。
男性に奉仕されること。
夫はその行為を全くしない人であった。
理由を聞いても言葉を濁すばかり。
エッチの際の口での奉仕は、愛情表現だと思っていたカオルには、その夫からの拒否はとても辛いものだった。
私は愛されていないのだろうか?
私の体に問題があるのだろうか?
長らく悩んでいたが、結婚10年も過ぎれば段々薄れてもいき。
そもそもセックス自体を求めてこない夫であるから、奉仕がどうのこうの言ってる次元でもなかった。
兎にも角にも、夫婦においての性生活で不満足この上ないカオルにとって、I川さんの前戯は非常に魅力的なものだった。
私は愛されているんだ、と勘違いさせるほどには充分なものであった。
そして結合する、その部分においてもI川さんのモノは非常に立派だった。
今持ってその記録を塗り替えた男はいない。
がしかし、ことエッチに関しては、そこが大きければ良い訳でもなく。
大きすぎても、なんだか拡張されてる間が強くて、気持ちいいまでは辿り着けなかった。
けどI川さんが発する、カオルの体に対しての賛美や奉仕には、うっとりとするほどの効力があった。
その言葉や行為だけで、どんどんと女の部分が花開いていくのがわかる。
ぐんぐんと満ちて潤い開いていく。
NくんやK宮さんの時にはない、女として上に置かれている感じが、カオルを気持ち良くさせた。
I川さんは頂点に達した後も、愛おしげな愛撫を繰り返してくれた。
腕枕やハグやキス、潤んだ瞳で見つめる。
その全てが「好き」を代弁してくれていた。
あぁ、幸せ。
やっぱり私の幸せは、ここに在るんだわ。
エッチをすること。
体ごと愛されること。
体が気持ち良くなること。
カオルにとって体の快楽は、何よりも大事なことだ。
そして体が快楽を覚えると、次は必ず心までをも求めてしまう。
最初は軽い気持ちで交わっていても、次第に重さを増していく。
コントロールなんてできない。
カオルにとって恋愛は、至福なのか試練なのか。
答えなんて今だってわからないけど。
とにかくまたひとつの恋が始まってしまったのである。