自分の風邪を自分で治す | 松山市はなみずき通り近くの漢方専門薬局・針灸院 春日漢方

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  自分の風邪は自分で治す

 先週の水曜日の夕方、さむ気がひどいのに気がつきました。足が特に冷えて、逆に頭は逆上せています。そういえば、昨日から咳がポツポツ出ていたような?
 なんのきっかけも無かったのに、半年ぶりくらいで風邪を引いたようです。風邪の引き初めで、足が冷えて逆上せる場合には、個人的には呉茱萸湯(ごしゅゆとう)がよく効きます。ただしどなたにも、よく効くわけではありません。私のように、胃が弱くてすぐに食欲が落ちて、冷え症の人に限ります。

 さっそく生のヒネ生姜6g、呉茱萸と太棗4g、朝鮮人参3gを煎じました。漢方薬の中でもいちばん美味しくない処方でしょう。一口飲んだら震えがきます。しかし飲めば、すぐにお腹の中が暖まって、いい感じです。
 その日の晩御飯は、ふだんの3分の1しか食べられませんでした。というか、体調が悪くなると、すぐに食べる量を落とすし、胃に負担になるものを避ける習慣になっています。
 しかし、次の朝は風邪が本格化して、全身がだるくて食欲はさらに無くなり、さむ気がします。体温計がないので分かりませんが、38度くらいあるんじゃないでしょうか?



 呉茱萸湯を何度か飲んでいって、それで治ってしまうはずだったのに、その日の寝る前に飲んだ分が、強烈に胸焼けを起こしました。それで堪らず咽喉に指を入れて少し吐きました。
 風邪を引いてから薄い色の小便がよく出ていたのに、夕方から小便の出が悪くなっていました。
 これは呉茱萸湯がしだいに体調に合わなくなってきて、胃の中に余計な水分が溜まったせいで吐き気に現れたのでしょう。

 次の朝、煎じた処方は茯苓甘草湯(ぶくりょうかんぞうとう)。これもヒネ生姜4g、茯苓3g、桂皮2g、甘草1g。 いたってシンプル、軽量なお薬です。
 腎臓の働きが落ちたからでしょうか、小便の出が悪くなると、胃に水分が停滞して、吐き気や下痢、頭痛や目まいなどを起こします。そのときに茯苓というキノコの1種が利尿します。
 この処方は風邪の治りが悪く、いっこうに食欲が戻らないという場合があります。その場合に、もし少し吐き気がしたり、小便の出がわるいのを確かめて、もし口が乾かなければ、この茯苓甘草湯。口が渇けば五苓散(ごれいさん)になります。
 茯苓甘草湯を1日分服用して、その日の夕方には、ふだんの食事に近い量が食べられるまで回復しました。



 さて風邪も3日目になって、食欲は戻ったけれど、体力が戻りません。針灸治療は患者さんが来られればちゃんとやりますが、誰も来なければ椅子に座っていても寝てしまいます。少し動いてもすぐに息が上がります。
 呉茱萸湯でしくじったのが、体力を大きく損なったようです。一度、わざと吐いたので、胸はすっきりしましたが、これも体力を損じました。
 漢方医学では、汗でも大便・小便でも、何か物質が排泄されるときには、熱量も一緒に出て行くと考えます。生理の出血なんかも、かなり熱が奪われてさむ気がしたり下痢になることが多いでしょう。
 吐くのもかなり内部の熱を奪ってしまいます。多くの場合、吐いた後はぐったりへばってしまいますよね。
 体力の回復に血の元を作り出す朝鮮人参を中心にして、咳や鼻水がまだ残っているので、半夏や細辛・杏仁を加えた処方を服用しています。体力が本当に元通りになるまで、すこし日数がかかりそうです。




 風邪と一言でいいますが、漢方には「風邪薬」はありません。上に上げた呉茱萸湯や茯苓甘草湯を風邪に使うのも、漢方家の流派によっては想像もつかないやり方になります。
 個々の患者さんの体質と風邪の症状に応じて、千変万化の対処法が必要なのが、風邪の漢方治療の難しいところです。今回は久しぶりの風邪引きで、だいぶ手こずりました。

 写真は近所の一宮神社の寒桜。昨年3月の写真 ソメイヨシノより3週間早く咲きます。2枚目の写真には、メジロがたくさん来てるけど見えませんね。