最近、80代、70代の方の見事な暗譜演奏を間近に拝聴する機会が立て続けにありました。

それも5分とかの短い曲ではなく、リサイタルまるごととか、そうでなくても15分くらいとか・・そういうレベルです。

ピアノにおける暗譜演奏は、ソロ演奏の場合はごく普通のスタイルですが、楽譜を立てて弾くピアニストも別に珍しいというわけでもなく、どちらがいいとか悪いとか、それは私にはわかりません。

ただ、譜めくり人をつけるのが面倒だったり、老眼のために楽譜と鍵盤の焦点のスイッチングが困難だったりという理由で、基本的には、私は暗譜のスタイルです。

 

個人的なことを言いますと、35歳で再開して以来、ふたつの「もうダメ~」な危機がありまして、

ひとつは再開直後、つまり10何年ぶりかで人前で弾く、しかも暗譜で・・・というとき、

もう一回は45歳あたり(つまり5年くらい前)の頃、

・・・・ですね。

再開直後はまあ、無理もないわけです。以前とりあえずあったはずの音感も、いつの間にか「どの音もド」状態になってましたし(これはしばらくしたら回復しました)、楽譜もじ~っと眺めてよく考えないと、なんの音だかわからないんですね。10年20年ブランクのある外国語みたいな感じでしょうか。

その状態で「暗譜」ですから(笑)。朝から晩まで公園で子供と遊び倒していて、夜は夜で公園ママ友と飲んだりしてて、活字もなにも読んでないぞ~みたいな頭でどうせいと(汗)。

しかも忘れもしない、シューマンでした。決して覚えやすくはないと思う。

とくに失敗した記憶もないですけど、このとき「あ、自分は本番ってこんなに緊張するんだ」と初めて思ったような気がします。それ以前は緊張の記憶はあまりない・・・

その後42の時だったと思いますけど、勢いと力任せで、一時間くらいのプログラムを仲間に聴いてもらう機会を作りました。そのときはもちろん不安はありましたけど、「覚えられない・・ダメだ・・」という危機感はそこまでなかったような気がします。

自分の記憶の異変に気付いたのは、45の時でした。

いろいろ工夫してその場では覚えたつもりのものが、実は定着してない。二日くらいたつとバグができてる。そのバグを埋めると、また次のバグができる。そのバクを埋めるとまた次のバグが・・・・・ということで、いつまでもいつまでも終わらない。

どうなっちゃったのかと思いましたね。

私は記憶に関しては、とくに苦労した覚えはなくて、生物とか歴史とか「いざとなったら丸覚え~」という安易な勉強で世の中渡ってきたやつなので、記憶部分がダメになると取り柄はないに等しい(笑)。

正確にいうと「覚えられない」ということではなくて、「覚えたものをすぐに忘れる」という恐怖ですね。

とくに、大人になって新たに手掛けた曲はすぐ忘れちゃうんですけど、ならば、「なんとかせめて本番までは持たせよう」ということです。

「覚える」のではなくて、「忘れないようにする」という感じですか。

覚える段階では、もちろん、「耳で」「手で」「目で」「内容で(分析して)」ということで、できるだけ多くのものを使って保険かけますけど、

そのどれもがとっとと失せていくわけです(汗)。

指の間からざーっと砂がこぼれていく感じです。

それをなんとか引き留める。とにかく、ヒマがあったら思い出す。

覚える作業の一方で、忘れない作業もしなければならないので、もうぐるぐるですね(笑)。

こういう、記憶に関することは個人差が大きいと思うので、いくつになってもなんともない方もおられると思いますけど、

同年代の仲間と一緒に弾くと、やはり、年々、譜落ちが増える。

それまでは盤石の暗譜だった人も「・・・ウソ・・・」というオチ方をする。

それをなんとかしようとすると、「忘れないために」ぐるぐるせねばならないわけで、「そうまでして暗譜せんでも」ということなんですが、

俳優の名前も「あれ??」とすぐ忘れる昨今、なにかで記憶のルートを確保しとかないと、ますます困ったことになるかも・・・という、またこれも一種の恐怖でしょうか。

 

・・・・というわけで、それなりに苦労してます(笑)。