ひとつ前の記事でUpしたふたつの動画で、「あれ?」と思われた方もいらしたかと思いますが、

このふたつの演奏は繰り返しのときに戻る場所が違っているんですね。

クレア・ファンチさんは、折り返して「Doppio movimento」に戻るのですけど、アブデーエワさんは「Grave」に帰ります。

どちらが聴きなれているかというとクレアさんのほうではないかと思いますし、私ももし繰り返すときはそちらを選択しています。

以前初めて、「Grave」に戻るバージョンをきいたとき、「ええええっ~」と驚いたのを覚えていますが、これはナショナル・エディション(エキエル版)を採用している演奏。

ナショナルエディションは前回2005年のときから、ショパンコンクールの使用推奨楽譜になっていますが、

使ってみるとわかりますけど、「・・・・ええっ」という耳慣れない音がけっこうありまして、まずそれに慣れるまでにちょっと時間がかかります。

私はバラード集だけしか持っていないのですが、「今までのウン十年聴いてきたショパンはなんだったのか?」というくらいの衝撃の音とかもありまして、

以降、結局パデレフスキ版に戻っております(殴)。

 

アブデーエワさんが昨年のショパンコンクールで、すべてのラウンドの曲をこのナショナルエディションで弾いたというのは有名な話で、

審査員のフー・ツォン氏もたしかその点に言及していたと思います。

どうしてこの版を採用したのかということについては、私も非常に興味があったのですけど、昨晩彼女へのインタビュー記事を見つけ、

「そこまで入れ込んでいたんだ~」とちょっと驚きました。

以下、一部転載。

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  「たとえば《幻想ポロネーズ》を例にとると、これまで耳に慣れ親しんだ音とは違った音が出てきます。アーティキュレーション、スラー、レガート、スタッカートなど、多くのところが違っています。テンポもそうです。随所に不協和音のような音が聴こえます。ちょっと聴くとまちがって弾いているのではないかと思われますが、実はこれこそがショパンが書いた音なのです」 
アヴデーエワは版の話になると身を乗り出し、一気に雄弁になる。大きな目が輝きを増し、表情が明るく好奇心に満ちあふれる。「幻想ポロネーズ」は今回の第3次予選の課題曲に選ばれ、20名が演奏した。
「この作品の不協和音に聴こえる箇所ですが、私はショパンが何かと闘っている、反抗しているように思えてならないのです。私にとってショパンは革命家のイメージ。わざとそういう音を入れたのではないかとさえ思ってしまいます。ショパンはハーモニーやテンポ、リズムなどすべての面で新しい世界を創造し、常に前を見つめ、革命を起こしたのです。今回、ショパン・コンクールを受けるにあたり、長い期間にわたってショパンと対峙するなかで、私のなかでショパンが生きた人間として存在するようになりました。いつも頭のなかでショパンが鳴り響いていました。作品に入り込んでいけばいくほどショパンが生きてくる。その思いをステージにぶつけました」

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このインタビュー記事はこちらです。

アブデーエワさんほか、河村尚子さん、辻井伸行さん&横山幸雄さん、田村響さん、萩原麻未さん、と 

興味深く、読み応えのあるインタビュー記事が掲載されています。

 

実は、昨年のショパンコンクールのときは私アブデーエワさんのことはノーマークでして、

あとから録音録画を見てみても、「・・・私はやっぱりヴンダーくんが・・・」と思っておりました。

今でもその気持ちに変わりないですが(笑)、

この「葬送」の演奏、あと信念自信に満ちたステージナマ-などなどアブ姐さんにはしびれました。

 

ほかの作曲家の楽曲もいつか機会があれば聴いてみたいものです。