ここのところ、辻井氏でメディアはもちきりです。

私は彼が小学校のころに初めてその名をきき、全盲の方だということに驚きましたけど、その後のご活躍や演奏を耳にするうちに、一人の才能あふれる若き音楽家としてしか意識してしていませんでしたし、ショパンコンクールの経緯からしてもいずれこういう大きなタイトルをとられるだろうと予測していましたので、今回のフィーバーぶりにはちょっとびっくりしています。

・・・そうではあるのですが、やはりいろいろ考えさせられます。
彼の音楽性がずば抜けたものであるのは自明のこととしても、やはり「教育」というものは必要なわけで、その内容はいかなるものであったのか・・・
彼の高校までの師も現在の大学での師も大変有名な方で、それぞれのお弟子さんには綺羅星のごとくいわゆる「才能」が並んでおられると思うのですが、辻井氏には他のお弟子さんと違ったアプローチもある面では必要であったはず。
私のような凡才にとってはやはり「どうやって譜面を取り込んでいったのだろう」ということが大きな疑問。・・・辻井氏の場合は点字楽譜を使わず、知人のピアニストに片手ずつ演奏してもらってそれをすべて記憶していったということなのですが、通常ピアノを習う場合には「耳からばかり覚えて弾かず、楽譜を丁寧に読みましょう」という指導がされるわけで、とくに対位法などの曲は知らず知らずにうちにかなり視覚的なものに助けられているのではないか・・と思うわけです。
耳からだけで複雑な音楽を自分のものにしていくというのは、これはものすごい集中力と大量の練習がなければあり得ないこととしか思えないのですが、氏の実際はどのようなものであったのか・・・

そういう疑問が非常に低次元に思えるくらい、氏の演奏は高みに達しているわけで、演奏を聴いている間はただ音楽に耳を傾けるばかりなのですけど、やはりここまでのご本人の努力、それと周囲のサポートというものは、親として、またピアノに少しご縁のあるものして、手の届かないものとばかり思わず、少しでも近づいていきたいところではあります。

コンクールに優勝したあというのは、殺人的なスケジュール、ソロ・コンチェルトの新曲依頼(もちろんレパートリーはたくさんおありでしょうが)、レコーディングなどなど消耗されることが多いと思います。
世間のことです、あたたかい声ばかりとは限りませんし、不調や故障には情け容赦ない批評があるかもしれません。

まだ20歳、マイペースが許されるところは無理してでもマイペースに持ち込みながら、心身に留意して活動していかれることを願ってやみません。