A子71歳 P17 | 風合瀬のブログ

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「わぁ(笑)」


    彼女たちのホッとした顔が嬉しかった。


    店長の本当の意図はわかっていた。


「今日は本当にありがとうございました。これで彼女たちの料理もグッと価値が出て、売り上げに繋がります」


そう言って、店長は私に茶封筒を渡そうとした。


「生意気なことするんじゃないよ」


「それじゃあ、俺の気が済みませんよ」


「じゃあ、これだけ貰っとく」


    茶封筒には、多分50万円ほど入っていた。私はそこから1万円だけ頂き、店を後にした。


    彼は頭を深々下げ、私を見送ってくれた。


    彼は父子家庭に育つ。母親は不倫相手と出ていってしまったという。彼がまだ6歳のころ。そんな生い立ちから、女性への不信感かまあり、当時キャスト(女性)をモノのように扱っていた。


「あなたねぇ、そんな物言いあるの?女性はあんたが思っている強い生き物じゃないのよ。自分が傷付きたくないと思って臆病になっているのと同じ!自分がされて嫌なことは、相手も同じ。女性だって同じなの!分かる?」


    私はキャバクラの営業中、彼を外に連れ出し説教をした。それから、彼は私を母親のように慕うようになり、仕事終わりによく飲んだものだった。


「女性ってさ、ウソ付いても平気じゃん?」


「バレないだけよ。まぁ、後は忘れるのが女性の方が上手いかな」


「そういう割にはさぁ、昔のこと突然持ち出したりするよね?」


「それはさぁ、あなたが他の女にチョッカイだしたからでしょう?」


    私が店を止めてからも、年に数度は会ったり電話したりしていた。そういう知れた仲だからこそ、彼の本心もわかっていたし、彼も私がちゃんとすることはすることをわかっていた。


「キャバクラで働く女も男も、客だって心の隙間埋めに来てる。今回のコロナ禍で彼女たちは切羽詰まってた。きっとおばちゃんが来てくれたらその隙間埋めてくれると思ってた」


「それ!…心の隙間の部分、私があんたに昔言ったことだよね?」


「そうだっけ?(笑)」