「ゴホッ、ゴホッ！ゴホッ！」
山手線の車内で、一人の男性が酷い咳をする。
私のいる車内には、私とその咳をする男性と他に８人の乗客がいて、私の近くにいた若い女性が私に
「隣の車輌に移りませんか？」
と声をかけてくれた。
すると、咳をしている男性が
「コロナなんてなぁ、ただの風邪何だよ！」
と因縁をつけてきた。若い女性は、咳の男性を無視して私を連れ隣の車輌に移った。すると、他の乗客らもその車輌を出た。
「ありがとうございました」
私が若い女性にそうお礼をいうと、
「いえいえ、新型コロナウイルス気を付けた方いいですよ。私の祖母が先日入院して、これから病院に行くところだったんです。直接は会えないんですけど、お見舞いに手紙書いてきたのでそれを渡そうと思って」
と話してくれた。嫌な気持ちのあと、とても穏やかな気持ちになれた。
『私も結婚でもしていれば、あんな孫がいたのかな？』
そんな思いに耽(ふけ)りつつ、私は目的地の駅に着き、電話をかけた。
「今、着いたよ」
あのキャバクラの店長だ。私に料理の指南をしてくれ！とのことで、やって来たのであった。