可能性へのPregnant P3 | 風合瀬のブログ

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「アクスル、お前のお父さんの凄いな」


    アクスルはあの宇宙世紀宣言をしたアーヴィン・バゥエルバッハの息子である。彼は父親の意向で、本国ドイツではなくイギリスのハイスクールに通っていた。宇宙世紀宣言の放送を寮で観ていた。


「どうかなぁ」


    多感な時期のアクスルにとって、何とも言えない恥ずかしさがあった。


「何だよ、それだけかよ。宇宙世紀とかってアニメみたいな話だけど、オレは宇宙で仕事したいなぁ」


    アクスルと話す彼はボブ・サイトウ。父親が日本人で母親がアメリカ人。"お互い"混血ということもあり、仲が良かった。


「僕たちみたいのは、宇宙に行くのがいいのかなぁ」


「止めろよ、そういうの」


    アクスルの父、アーヴィン・バゥエルバッハの生い立ちは複雑であった。彼はアフリカの難民キャンプで生まれた。母親も難民で彼女は11才でアーヴィンを生んだ。父親はフランス人兵士。実はその母親もどこかの国の兵士との間に生まれた。アフリカや中東の難民の子供たちは、外国の兵士の慰みモノとして安いと数百円ほどで体をゆるす。世界の軍隊の中には幼い少女や少年との性交を目的に兵士になる者が少なからずいて、難民キャンプには世界中の様々な国の男との混血児が大勢いた。


   アーヴィンもそんな混血児の一人であった。彼はたまたまヨーロッパを中心とした戦災孤児を救う団体に救われ、ドイツ人夫婦の養子となった。アーヴィンの母親は戦闘に巻き込まれ死亡していた。そんな経験がアーヴィン・バゥエルバッハを「宇宙世紀宣言」させるまでに育てたのであろう。もちろん、アーヴィンの養父母が彼を大切に育てたことも。


    アーヴィンが息子のアクスルをイギリスの学校に寮住まいさせたのは、人種差別の意識の高いドイツよりも、イギリスかフランスなどで人生経験を積んだ方が、アクスルのためになる!と思っていたからだ…と、アクスルは信じていたのだが…。


    アクスルにはもっと大きな意思が働いていた。


「アーヴィンさん、我々は次の段階に移行します。宇宙での人類の中心は混血。多様なDNAのによる新たな種の発現が未来を構築して行くはずです」


「わかっています。だからこそ、私に宇宙世紀宣言をさせ、アクスルを人身御供に捧げさせたのでしょう?」