先日、なんとかルートを更新したばかりなのに早速の浮気です。
彼女~も書いていないのに、お待ちになっている方には申し訳ありませんが病なので致し方ないと諦めてお付き合いくだされば嬉しいです(涙)
予定では1日おきで、5話ほどで終わらせたいのですがこちらの病気も重くてSSはSSに非ず。という病持ちでもありますので多少オーバーするかもしれませんが、どうぞ生暖かい目で見ていてくださると嬉しいです。
おバカな病発症中の、ユンまんまでした。
§地上15Mの遠距離恋愛 1
世の中にはたくさんの恋人たちが溢れている。
近く寄り添って、離れがたくて。
たまに距離に泣かされたり。
それでもお互い強く惹かれあって・・・
きっと惹かれあう二人には、どんな障害だって問題ない。・・・・・はずだ。
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
「はああ~・・酔っちゃったみた~い・・・敦賀さ~ん」
グラスを傾けていた女性のその言葉に、普通の男なら鼻の下を伸ばして煌びやかな宿泊先を探しに旅に出るだろう。
しかし、呼ばれた男は美麗な顔を整った笑顔で覆うとすくっと立ち上がった。
「それじゃあ、帰らないとね?」
男の行動に女性は、まったく酔っていないのではないかというほど素早く立ち上がった。
「ですよね!?・・・今日こそ、敦賀さんのお宅に・・・」
「今、タクシー呼んだから」
「・・・は?」
しな垂れかかりかけた女性を、やってきたタクシーに投げるように放り込むと貼り付けたままの笑顔で手を振り見送った。
「・・・・はあ・・」
男は疲れたように大きく息を吐くと、きっちりと結ばれたネクタイを指でずらして弛めた。
「・・・帰ろ」
先ほどまで賑やかしすぎた自分の周りが静かになり、やっと素の自分になれたのかビジネスバッグを適当に持ちプラプラと帰路についた。
男のマンションは、広いエントランスから自分の居住区までほぼ他人に合うことなくいける専用エレベータがついているようなオートロックの高級マンションだった。
居住区にエレベーターが着き、のろのろとカードキーでドアを開けるといつもの場所に鞄を落としいつものようにスーツをハンガーにかけ風呂の自動湯沸かし器にスイッチを入れた。
Tシャツとスウェットに着替え、オールバックにしていた髪をぐしゃぐしゃとつぶし冷蔵庫からビールの缶を取り出し広いベランダに出た。
プシュッツ!・・・と、よく冷えた缶ビールから心地いい音が聞こえたかと思うと男は喉を鳴らして中の液体を飲み込んだ。
「っ・・・ふう・・・・・」
今日一番の大きなため息をついて、真っ暗な夜空を見上げた。
「今日も見えないな・・・」
周りが明るすぎるせいで闇しか出さない空に、また疲れが増してもう一つため息を落とした。
今の生活を選んだことに後悔はないが、以前住んでいたところとは全く違う夜空の有様にマシンガンのように話を打ち込んできた女性の甲高い声が耳に蘇り辟易した気分をぶり返した。
男は頭をガシガシとさらに乱して、ベランダの手すりにふて腐れたように寄りかかると下の通りを何気なく眺めた。
すでに深夜の時間帯、最近増えた青い街灯に照らされた通りは人が行きかう気配がない。
男は残りわずかになったビールをちびちびと飲んでいく。
それもなくなってしまおうかという時、暗い夜道を軽快な足運びでかけていく人影を見つけた。
男の子っぽい服装に、リュックサックとキャップといった格好の者は軽快な足取りのまま眼下にあるこじんまりとしたアパートに消えた。
だが、直ぐに一室に明かりが付き先ほどの者の家がそこだとすぐに予想がついてしまった。
(・・・なんか・・見ない方がいいよな・・・)
例え相手が男だとしても、プライバシーを覗いている気がして男は早々に部屋に戻ろうとした。
しかし、明かりのついた部屋の窓がガラリと開いた音に思わず男は振り返ってしまった。
予想に反して、ベランダに出てきたのは男と同じようにTシャツとスウェットの格好でビールを片手に持った女性だった。
(・・・・いや・・女性というよりは・・・女の子?)
さっぱりとしたショートカットに、細い首筋と細い肩を少し大きめのTシャツが包み隠しているが女の子で間違いはないだろう。
先ほどの格好は、一応カモフラージュだったのだろう。
女の子は缶ビールを控えめに開けると、コクコクと喉を鳴らし満面の笑顔で息をついた。
時間が深夜ということもあるからだろうか、どんなに耳を澄ませても彼女の声は一つも聞こえない。
しかし、口の片側に広げた手を添えてまるで大声を出しているかのように口をパクパクと動かしていた。
『うまいぞー!!!』
そんな風に男には読み取れた。
「ぶふっ!」
あまりにも爽快な様子に、男は思わず噴き出していた。
すると、彼女は男に気付いて目を丸くしながらじっと見つめてきた。
(やば・・)
思わず口元を隠した男に対して、彼女はしばし目を見開いていたが恥ずかしそうにポリポリと頬を掻いたあと持っていたビール缶を上に掲げた。
そして開いている手で、指をちょいちょいと誘うように合図をしてきた。
どうやら乾杯しようと言っているようだ。
もう空になってしまっているが、男は笑顔でそれに答えた。
深夜に静かな乾杯を交わした二人の表情はとても晴れやかで。
その日から、この時間が二人にとって特別なものになるのだがこの時はそんなこと微塵も思わなかった。
それが二人の始まりだった。
つづく
§ルートX 76
「・・・・・・・・・・・・・・」
ガタ・・・ドスン・・・ガタッタ!・・・パタパタ、ガチャン!!がたっ
「・・・・・・・少しは落ち着いたらどうだ?クーよ」
先ほどから立ち上がっては座って、また立ち上がってはテーブルにつまずいて。
歩き回れば部屋に飾ってある調度品を壊しているクーに、ローリィは飽きれながら忠告した。
「うっ・・・そう・・だな・・・うわっちぃ!!」
落ち着こうと飲んだコーヒーは淹れたてで、クーは熱さのあまり噴き出した。
「うわっ!?きったねーな・・おい、片づけてやれ・・ついでに氷水にこいつを突っ込んで来い」
「ボス・・・・それはひどい・・」
苛立ちをそのまま口にするローリィに、クーが情けない表情をしたため大きくため息をついた。
「だったらもう少し落ち着け、そろそろ蓮も・・」
「社長、敦賀様が到着したと連絡が」
「おう、さすが無遅刻キング・・時間ぴったりだな」
ローリィが感心している横で、クーは頭からクッションをかぶりソファーの隅で丸くなり震えた。
「ボボボボスっややややはりわわわわわたしは・・」
「おいおい、だいぶスクラッチが効いてるな・・・その壊れたレディオ治して座れ」
「いいいいいやだ!!絶対、冷たい目をして『なんでこんなところにいるんですか?』とか『あなたとの関係は全く何もありませんよね?』とか言ってきそうだ!!」
クッションに下敷きになりながら半泣きで叫ぶクーに頭を抱えたローリィは、冷たく言い放った。
「お前の骨はちゃんと拾ってやるから」
「ボス!!??(泣)」
扉の向こう側でそんなことが行われているとも知らずに、蓮は通称セバスチャンの導きのまま連れてこられた場所で立っていた。
「お二人ともお待ちです。どうぞ」
「・・・・はい」
『お二人』の言葉に緊張しながら、蓮は扉をノックした。
するとしばらくの沈黙の後、ローリィが扉を開けて顔を覗かせた。
「・・・社長?」
「・・・あ~・・・なんだ・・・まあ、入れ」
なんだかやつれている様にも見えるローリィに首を傾げながら蓮が中に入ると、緊張しながらも会おうと決心した人の姿はどこにもなかった。
「あ~・・なんだ・・・あいつも緊張しているというか・・・」
バツが悪そうに頭を掻いているローリィの言葉を耳にしながら、蓮が辺りをぐるっと見渡すと変に膨らんだカーテンの束が目に入った。
そのカーテンを見た後、ローリィの表情を確認するとほとほと困ったというように眉根を寄せて見せた。
蓮は何も言わず、スタスタとそのカーテンに歩み寄った。
カーテンは近づいてくるとは思わなかったのか、右往左往していたが直前で歩みを止められたためそのままじっとすることにした。
「・・・・・お久しぶりです・・・・父さん」
まさかその言葉が聞けると思っていなかったクーは、顔だけを覗かせてマジマジと蓮の顔を見詰めた。
「・・・久遠・・・・」
「・・・・・ところで・・なにしてるんですか?」
中年のオヤジが、カーテンにくるまれた姿にさすがの蓮もそこはかなとなく悲しさを覚え憐みの眼差しを向けてしまった。
その視線を痛く感じながら、クーは咳払いとともにゴゾゴゾとカーテンから出てくると何事もなかったようにソファーに座りなおした。
「・・・久しぶりだな・・・我が息子よ」
キメ顔と、張りのある声でごまかしてはみたものの、蓮とローリィから向けられる痛い視線にクーは顔を引きつらせながら耐えた。
しかし、それも五分と持たなかった。
「だってだって絶対久遠怒ってると思ったんだもん~!!社長の言うとおりにしただけなのにさあ!」
「・・・・・・・・・・」
まるで駄々っ子のような態度のクーに、静かに青筋を立てている蓮にローリィは座るように促した。
「まあ・・ラブミー部の依頼をしたのは俺だが、それ以外には何もしてないぞ?」
「ちょっ!?ぅ、裏切者!!」
ギロリと蓮に睨まれ、クーが小さな悲鳴を上げたものの直ぐに目を丸くした。
蓮が、深々と頭を下げたからだ。
「?・・・なにを・・・」
「ありがとうございます」
急に礼を言われるとは思ってもいなかったため、クーは目を丸くした。
「なんのことだ?」
「・・・俺との関係を・・・キョーコちゃんに言わないでいてくれたことに・・・・」
少し目の奥を暗く光らせてそう呟く蓮に、クーは眉根を悲壮感を乗せて引き締めた。
「あなたが俺の父だとか・・・過去にあったこととか・・・」
少しうつむき加減にそう口にしていたのだが、額に不穏な空気を感じて蓮はとっさにそれを左手で庇った。
危うくあと少しで、ものすごっく痛そうなデコピンをクーからお見舞いされるところだった。
「何を言うかと思えば・・・お前はそんなに父が信用できないか!?」
クーの言葉に蓮は目を丸くすると、しばらく考え込んだ。
「・・・・・・・・・少なからずは・・・ばらすかと・・・」
「・・・ほお~・・・なら、今すぐあの子に・・」
蓮の言葉に気を悪くしたクーは、無表情で携帯を取り出したため、蓮は慌てた。
「いえっあのっ・・・・・・キョーコちゃんの様子も変だったので・・・」
蓮にそう言われて、クーはふて腐れながらぼそりと溢した。
「・・・・まあ、子供じみた喧嘩はしたがな・・」
「・・それは聞きました・・・・・」
何をやっているのかという蓮の視線に、クーは嫌な汗を拭きながら口を尖らせた。
「か、彼女の力量を図るために仕方なくだな・・・」
「それで喧嘩してどうするんですか・・・・・まったく・・・」
そうため息をついて見せながらも、今朝見たキョーコは少し物悲しそうだったのが蓮は気になってそのまま閉口した。
それが不安になったのか、クーはオロオロしだしローリィの横に座りなおした。
「ボスっ久遠怒っているのか!?」
「・・・自分の息子だろ、表情ぐらい読めないのか?」
「ここ数年は良好な関係じゃなかったから・・・・」
「お前(親)がわからないのに、俺がわかるわけないだろう」
「う・・ぐぐぐ・・・・」
そう返しながらも、ローリィは思い悩んでいる様子の蓮を伺った。
「最上君なら、新しい仕事のことで悩んでいるのかもしれないな・・・」
何気なく言われた言葉に、蓮ははっとしてローリィを見た。
「新しい・・・そういえば・・昨日聞きに行くと言ってたけど・・・何かあったんですか?」
「・・・・そこは彼女のいないところで勝手に言うことじゃないだろう」
「・・・それは・・・そう・・・ですね・・・・」
「まあ、少し自分が思っていたのとは違う役が来たみたいだったがな」
その言葉に、蓮は少しだけ過去が過り拳を握りしめた。
そんな蓮を見ながらも、クーはわざとらしく口を挟んだ。
「あの子は随分と変色な役者だから、今のうちに強制しとくことも必要だろうな」
「・・・・まあ・・・そうだな・・・」
ローリィは蓮の様子を伺いながら肯定すると、蓮は小さく息を吐いて握りしめていた拳を解放した。
「確かに・・・必要だとは思います・・・得手不得手関係なく熟せるようにならなくてはいけない・・」
頭では分かっていても、納得がいかなくて煮え湯を何度も飲まされた記憶に蓮はそのまま閉口した。
「そう・・・・例えそれが、どんなに嫌な役でも・・・・」
クーは黙って俯いた蓮の隣に、そっと腰を下ろした。
「苦しみ抜いた先に、何かを掴める・・彼女はそういう役者だと私は思っている・・・お前と同じ、一度掴むと何にも揺るがない強い心を持った役者になると・・・・私はそう思っているよ・・・・・久遠」
まっすぐ見詰めて、そう微笑むクーに蓮は目を丸くした後困ったように笑った。
「・・・それは・・・困ったな・・・・尊敬する父と母のように、似たもの夫婦になりそうで」
蓮のくしゃりと笑った顔に、クーは信じられないと一度は頭を振ったものの目頭が熱くなってくるのを抑えることはできなかった。
「・・・まだ・・・私たちを・・・・尊敬してくれるのか?」
目頭を覆った手が震えているのを、蓮は申し訳なく思いながらも見詰めて頷いた。
「・・・今まで・・一度だって尊敬を忘れたことなどありません・・・貴方だけではなく、貴方の美しい奥様も」
「久遠っ」
クーは溢れる感情のまま蓮の両手を握りしめた。
「私だって・・・一度も息子を・・・愛する息子を忘れたことなどない・・・彼女も・・・いつまででも君がありのままの姿で戻ってきてくれると信じて待っている」
「・・・はい・・・・元の姿で貴方たちのところに戻ります・・・・必ず」
感動的なシーンのはずなのだが、そばにいたローリィは微妙な表情になっていた。
「えらく遠回しな言い方だな?期限でも決めたらどうだ?」
「「えっ?」」
思わぬ提案に二人は驚きの声を上げるのを、ローリィはにんまりと笑顔を作ってその期限を口にしようと開くのだった。
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