なんてことない非日常 -6ページ目

なんてことない非日常

スキビ非公認二次創作サイトです。
駄文ばかりの辺境館ですが、広いお心で読んでいただける方歓迎しております。

§地上15Mの遠距離恋愛   7




 「琴南さん?どこに行くの?」



急に奏江が外回りの札を自分のネームボードに置き始めたので、蓮は首をひねった。



「あの・・すぐに戻ってきますから」



少し焦っている奏江に蓮は自分の鞄を持ち出して、ネームプレートの所に外回りの札を置いた。



「俺も出るから送るよ」



「いえっ・・半分は私用でして・・・」



「じゃあなおさら急ぐんだろ?」



いつもは冷静沈着な奏江が慌てているということは、何か事情があると感じたのだ。



「いえっ・・あの・・・大丈夫です・・」



奏江は周りの視線・・おもに女性たちばかりだが・・を気にして断るものの蓮は、サクサクと奏江とともに会社を出始めた。



「この間から世話になりっぱなしだからね・・少しぐらいお返しさせて?」



少しくらい周りの女性たちから睨まれる自分の立場を考えて欲しいとは思いながらも、どこか憎めない蓮の無邪気な様子に奏江は渋々申し出を受けるのだった。



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「・・え・・・ここ?」



「はい、ありがとうございました。後は自分で戻れますので」



蓮は奏江を降ろした所の意外性に目をパチクリしていた。

そんな蓮を気に留めることなく、いつもの調子に戻った奏江は一礼して車を降りた。



「琴南さん!」



「はい?」



歩き出そうとした奏江を蓮は慌てて呼び止めた。



「ここ・・琴南さんの家なの?」



見覚えのありすぎるマンションを真正面にしたこじんまりとした二階建てのアパート。

そこは『彼女』が住んでいる家だ。



「いえ・・友人の家でして・・・」



そう言いながら、階段を登っていく琴南を蓮は車から降りて慌てて追いかけた。



「その友人って・・どうかしたの?」



『彼女』の部屋の前に来ている奏江に、蓮は意を決してそう声をかけた。

すると案の定、奏江に不審な眼で睨まれた。



「・・・・・・あの・・?」



奏江の表情と声が硬くなったことで、蓮は慌てた。



「いやっ・・その・・・・そこの人と、最近話し・・というか顔を合わせることが多かったんだけど三日前から会えなくて・・・病気なのかな?とか思っていたから・・・」



しどろもどろそう言い募っている間も、奏江の表情は硬く蓮は焦ったままになった。

しかし、奏江は何かを思い出したようにはっとした。



(・・・もしかして・・・)

「あの・・・敦賀氏の住まいはあのマンションですか?」



このアパートの目の前にそびえたつマンションを指さす奏江に、蓮は一瞬呆然としたがすぐに頷いた。



「え?・・・あ、ああ・・・そう、あの10階・・・」



「はあ・・・・」



全ての事項に一致点が見つかった奏江のみが、小さくため息をついた。

蓮は何事かわからずに、怪しまれなくなったことだけにほっと一安心した。


そして奏江の言葉を待った。



「・・・例え、このように合鍵を渡される間柄で彼女のことを知り尽くしていても敦賀氏においそれと話すわけにはいきません」



鞄から鍵を出しつつ、そう説明した奏江はそれを扉のカギ穴に差し込むと当然のように開けた。



「え・・っと・・・琴南さん?話していることと、行動が一致していないいんだけど・・・」



ズカズカと部屋の中に入り、着替えなどを物色している奏江に玄関先から声をかける蓮はどうすればいいのかと辺りをキョロキョロした。



(・・これじゃあ、俺は怪しい人・・・だよな?)



早く奏江が出てきてほしいと思いながらも、ちらりと玄関からすぐのキッチンを見やった。

全体的にすっきりと片付いていた。

数日家にいなかったとは思えないほどキレイだった。

狭い部屋なのに、狭さを感じさせない家具の配置などで蓮はそこの住人に好感が持た。



(というか、彼女だと決まったわけじゃないけど・・・)



蓮は部屋をこれ以上みないように、外を眺めているとあらかた終わった奏江が鞄を手に戻ってきた。



「敦賀氏」



「は、はい」



奏江に思わず敬語で返してしまうところが悲しいが、今の状況下ではいた仕方がない。

緊張した面持ちの蓮をじっと見た後、奏江は一つの提案をした。



「敦賀氏、明日のランチをおごってください」



「!?」



突然の誘いに蓮が驚いいるころ、キョーコはようやく熱が引いて深い眠りの中にいるのだった。




つづく










§地上15Mの遠距離恋愛    6




 「っはあ・・・・・」



蓮は小さなため息を吐いた。


初めて会ってから、これまで一度も姿が見えなかったことなど無かった彼女と会えなくなってから3日たっていた。



(・・・俺・・何かしたかな・・・)



思い当たるのは、自分が休みだからと調子に乗って遅くまで会話したことだ。

だから、会えたら謝ろうと思っていたのだ。


しかし、会えるどころか家に明かりがつく気配すらないことに蓮は心配を募らせていた。



「もしかして・・・・」



「何が、もしかしてなんですか?」



考えていることが思わず口に出てしまった蓮の言葉を、奏江がすかさず拾ってきた。



「敦賀氏は、就業中でも色々思い悩んでいるようで大変ですね?」



奏江の刺すような言葉に、思わず眉を下げた蓮の肩を貴島が叩いてきた。



「なになに?うちのエースが悩んでいるのに相談に乗ってあげないの?琴南女史は」



「・・・なんで貴島さんが入ってくるんですか?」



「だって・・奏江ちゃんが構ってくれないから~」



「その呼び方やめてください!って何度も言ってるでしょうが!!」



持っていた厚手のファイルで叩かれても嬉しそうな貴島に対して、奏江は真っ赤になって怒っていた。

蓮が察するに、あの喫茶店のマスターと同じ呼び方だということが原因なのだろうと思い少し顔を綻ばせた。



「クスクス・・・二人ともありがとう、少し和んだよ」



「へ!?」



「それはよかったです、ああ・・そういえばコレできましたよ」



貴島はもののついでというように、企画書を蓮に差し出した。

それを蓮は苦笑しながら受け取ると、貴島はまた奏江をからかい始めた。


蓮は二人に気を使われてしまったことに反省すると、気持ちを切り替えて仕事に取り掛かるのだった。



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「・・うう・・・・・・頭・・いたい・・・」



キョーコは一人ベッドで臥せっていた。


奏江に脅迫じみた居残りを命じられて、結局奏江以外の者たちにまで相談することとなりあの日は大騒ぎの中喫茶店に泊まったのだ。


おかげで張っていた糸が切れたのか、キョーコはここ3日家にも帰れず喫茶店の2階にある社の家に泊めさせてもらっているのだ。


ここにいれば、回復したらすぐリストランテの手伝いができるから・・だとか。

何かあれば社経由で奏江にすぐ連絡ができるから・・だとか。

例の住人に介護されかねないから・・・とか。

さまざまな理由を付けられ、ここにいることになった。


昨夜から熱は、39度を行ったり来たり。

薬もその時にしか効かないため、胃が辛くなってきた。



「ううっ・・でも、これ以上社さんに迷惑をかけるわけには・・・」



ベッドから這いずって、家に帰る支度をしようとするとホットミルクを持ってきた社にみつかてしまった。



「キョーコちゃん・・・まだ動いたらダメだよ・・もし着替えを取りに帰りたいなら黒崎に車出させるから」



「そんなっ!ッゴホゴホ・・」



「ほら・・・これでキョーコちゃん返したら俺が奏江ちゃんに八つ裂きにされちゃう」



にっこり笑う社の凄惨な姿が容易に想像できたキョーコは、渋々ベッドに戻りホットミルクをゆっくりと口に運んだ。



「あの・・・お店は・・・」



時間は10時半。

今が仕込みの一番忙しい時だ。


申し訳なさそうなキョーコに、社はクスリと微笑んで見せた。



「大丈夫、今日も光君が助っ人で入ってるしキョーコちゃんを扱き使い過ぎの黒崎も少しはありがたみを知ればいいんだよ」



爽やかな笑顔で言われたことに、キョーコは何も返せず社に言われるまま横になるしかなかったのだった。



「それじゃあ、お昼過ぎにおかゆと薬持ってくるね?」



「あ、あの!社さん・・」



「うん?」



空になったマグカップをトレーに乗せて、出て行こうとした社をキョーコはとっさに呼び止めた。



「あのっ・・・さっきの・・」



「さっき?」



「着替え取に・・」



「ああ、黒崎に車を出させるやつ?」



「・・・・・はい、その・・大変心苦しいんですが、お願いしていいですか?」



「もちろん、黒崎にも伝えておくよ」



「よろしくお願いいたします」



社はキョーコに笑顔で手を振ると、部屋を後にした。



「はあ・・・・3日も会ってないな・・・・」



誰もいなくなると、キョーコは思わず呟いていた。


きっとこんな風に思っているのは自分だけだろう・・と、考えながらも心の中でもしかして会えないでいることを残念がってくれているかな?など思い浮かんでは熱を上げつつ打ち消したりしていた。



「おーい、キョーコ?」



考えを打ち消したり、マンションの彼を思い出してみたりウツラウツラしていたキョーコの元におかゆを持ってきた黒崎が顔を覗かせた。



「!っすみま・・ゴッホゴホゴホ」



「急に起き上んな・・うつされたらこっちもたまんねーから早く治せ・・おかゆ・・に近いと思ってリゾット持ってきた」



「ありがとうございます・・・なんか・・みんなが優しくて・・・泣けてきちゃいますぅ~」



急に涙腺を崩壊させたキョーコに黒崎は焦った。



「急に泣くな!?ちゃんと喰え、そして薬も飲め!そして寝ろ!!」



乱暴にテーブルの上にリゾットを置き、半ば叫びながら逃げ去る黒崎に社から話しが通っているか聞きたかったがそれはかなわなかった。


モソモソとベッドから起きだし、少しずつリゾットを食べると薬を飲んでまたベッドに戻るころ黒崎が食器を片づけに戻ってきた。



「お・・おい・・・もう大丈夫か?」



泣いてないか、恐々確認しながら来た黒崎にキョーコは笑って見せた。



「はい・・大丈夫ですよ」



「あれ・・だいぶ残ってるな・・・」



「あんまりお腹空いてなくて・・・あの、それより・・・って聞いてます?」



どうしたらもっと食べてくれるものになるか思案中の黒崎に、キョーコが声をかけると首を傾げられた。



「なんだ?」



「あの・・社さんから聞かれました?」



「ああ、家に一旦帰りたいってあれか?」



「はい」



「却下」



「ええ!?ッゴホゴホ」



簡単に断られ、キョーコは思わず叫んでしまい咳き込むと黒崎にじろりと睨まれた。



「ほら見ろ・・そんな体調じゃ、無理だ・・奏江嬢に頼んで取ってきてもらえ」



「で、でも・・・」



「なんだかんだで、アイツは面倒見いいからやってくれるだろう・・・それともどうしても帰らなきゃいけない理由でもあんのか?」



「・・・・・・・・・・・」



きっと自宅に戻れるのは午後のオープン前だろう。

その時に戻っても、彼に会うことなど叶わない。

そんな考えを見透かされているようで、キョーコは落ち込んだ。



「・・・・わかりました・・・モー子さんにお願いします」



「おう・・早く治したらいいだろう」



黒崎はポンポンとキョーコの頭を叩くと、部屋を出て行った。


キョーコはただただため息をつくしかなかった。

しかし、眠るしかできな状況は好都合だったのかもしれない。

自分の中にある、彼に会えないと悲しいと感じる感情と真正面から向き合うことができたのだ。



(もし・・・待っていてもらえたら・・・・)



封印してきた感情を少しだけ解放してあげてもいいかもしれない。

そんな考えを薬のおかげか熱が冷めてきた頭で、巡らせ始めるのだった。



つづく













§地上15Mの遠距離恋愛   5




 

 「・・・・甘かった・・」



リストランテは11時半オープンにも関わらず、すでに十数人以上の女性たちが列を作って店の前に並んでいた。

時計を確認してもまだ20分以上は開かないし、この女性ばかりの列に男一人で並ぶというのも耐え難かった。


蓮は渋々予定を変更して、先日入った隣の喫茶店の方へと向かった。



「いらっしゃ・・・あれ?貴方は・・・」



「こんにちは・・・空いてますか?」



蓮の姿を見つけた社は、笑顔でカウンターを勧めてくれた。



「ええ、隣と違ってガラガラです。それにしても、一瞬わかりませんでした・・髪を下ろされていたので」



社の言葉に、蓮は苦笑した。



「会社では優秀な部下に見下されないように、一種の武装が必要で・・」



「あははは・・奏江ちゃんはきついですからね~」



蓮の言葉に直ぐ感づいた社がそう答えたと同時に、喫茶店とリストランテを結ぶドアが開き奏江が姿を見せた。



「ったく・・・あの子は・・・」



ぶつぶつと怒りながら、蓮の横の席にストンと腰を下ろした奏江は一度社を見た後勢いよく蓮の方に振り返った。



「敦賀氏!?」



「・・こんにちは、琴南さん・・・そんなに驚くことかな?」



「あ・・いえ・・・いつも休日に出勤してらっしゃるのを知っていたので、珍しいというか・・・」



「俺だって、そんなに働けないよ・・・ところで・・・すごい所から出入りしていたけど・・・」



蓮はずっと飾りだと思っていた扉が、店同士を行き来できるものだとは知らなかったため驚いていたのだが奏江たちにはごく普通のことだったらしい。



「もともと、 この喫茶店とリストランテは一つのお店で倖一さんのものだったの・・・でも、倖一さん一人でやるには広すぎるって友人のシェフが店を探しているのを聞きつけてここを改装したんだって」



「へえ・・・・でも、店は繋げなくても・・・」



蓮の疑問に、今度は社がコーヒーを淹れつつ答えてくれた。



「俺は道楽でここを継いだもんだから、家賃とかいらないって言ったんだけど黒崎がそれじゃダメだって・・・それならと、ここを繋げてお得意さんの時だけ向こうの料理をこっちに出前して欲しいって頼んだらO.Kされちゃって・・・外通ると衛生的によくないかっらってここを繋げることにしたんだ」



「へ・・へえ・・・変わった・・交換条件ですね?」



それなら一つの店にしてしまえばいいのにと思わなくもなかったが、それはそれで折り合いがつかないらしい。

蓮は出されたコーヒーを飲みながら、ここのお得意様じゃない自分は向こうの料理を頼めないなあ・・と、ぼんやり思っていた。



「ところで・・敦賀氏は、なぜここに?」



「え?・・・ああ・・・実は、リストランテに行こうと思ったんだけど・・・」



そう言いながら蓮が窓の外に見える女子の列を苦笑いで見つけると、奏江は大きく頷いた。



「ああ、今日は光君がいる日か・・」



「光君?」



「そっ、フロアーの石橋 光君・・・なかなかのイケメンなのに、ちょっと残念なところが可愛いとちょっとした話題になってるの・・・それ目当てのお客さんが大多数かな?」





「なるほど・・」





客層は完全に女性ばかり。

しかもよく見ると、食事をしに来ているはずなのにカメラを首から下げている人たちも少なくはない。


中に入れたとしても、ゆっくり食事をできる環境じゃなかったな・・・少し残念な気持ちでコーヒーを啜っていると奏江がまたあの扉に向かい始めた。





「敦賀さんも同じのでいいですよね?」





「え?」





唐突に質問されて驚いているうちに奏江は、扉を開けて「さっきの一つ追加して」と叫んでいた。





「クスクス・・・さっき、奏江ちゃんが自分のランチを頼んでいたんです・・本日のおススメはキハダマグロのステーキでしたよ?」





笑顔の社にそう言われ、蓮は頷いて奏江の方を見た。

彼女はまだ中に向かって何やら叫んでいた。

すると、奏江とは違う女性の声が返ってきた。





「わかったってば、上がったらちゃんと連絡するから!」





その言葉を聞いて納得したのか、奏江は一安心した表情で戻ってきた。





「揉めてない?」





「へ?何のことですか?」





戻ってきた奏江に蓮がそう声をかけると、奏江は首を傾げた。





「だって・・」





蓮がリストランテの方を見つめながら不安顔をすると、奏江はため息をついた。





「ああ・・・ちょっと困った子がいるんです・・・真っ正直過ぎて、痛い目見てるくせにまたうかうか何かに突っ込もうとしているアホな子が・・・」





(散々な言われようだな・・・)





奏江のため息交じりの話しに、蓮は言われている相手を少し可愛そうに思いながらも奏江の面倒見の良さにクスリと微笑んだ。





「奏江ちゃん、いい子でしょう?」





微笑んだのを見られたのか、社がすかさず言うのを蓮は頷いて返した。

すると、奏江は顔を真っ赤にしてカウンターをバシンと叩いた。





「なに、訳の分からないことを言っているんですか!?二人とも!!」





そんなことをしている間に、奏江が勝手に頼んでいたペペロンチーノが届いた。





「・・・・・・・・・社さん・・・本日のおススメは?」





「あれ?俺、奏江ちゃんが頼んだって言いました?」





「・・・・・・・・・・・・」



ペペロンチーノが美味しかったから良かったのだが、社の小さな悪戯に蓮は今度はちゃんと店の方に行こうと思ったのだった。



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「お疲れ様でした~!」



今日は早めに上がらせてもらったキョーコは、外には出ずに隣の喫茶店に続く扉を押した。



「お待たせモー子さんっ」



「本当よ・・・ほら、こっち来て」



奏江は、すでに社に話しを通してあるのか奥の個室へとキョーコを招いた。



「すみません、社さんっ」



すでに閉店時間を過ぎているのに、店を使わせてもらうことに恐縮しながら奏江の後を追うキョーコに社は笑顔で手を振った。



「さて・・・・話してもらうわよ?最近の腑抜けの原因を」



「・・・・・・・・そ・・れは・・・」



奏江の迫り具合が乱暴で、キョーコは思わず身を引いてしまった。



「奏江ちゃん、そんなに迫ったら言いたくても言えないよ?」



キョーコの援護に来たかのように、社がコーヒーを持ってやって来た。



「はい、キョーコちゃんミルク多めにしておいたよ?」



「あ、ありがとうございます!」



笑顔で会話する二人に奏江はイライラしながら、コーヒーにミルクを垂らしカチャカチャとスプーンで混ぜるとそれを一気に飲み干した。



「倖一さんはもういいから片づけに戻ってください」



ピリッとした空気を直線的に向けられたため、社はスゴスゴと戻っていくしかなかった。



「さて・・・邪魔者はいなくなったし・・・・・・」



奏江が本題に入ろうとしたのだが、それをすぐに止めた。

すると・・・



「お、おすなって!」



「俺、押してませんよ?」



「話が聞こえないっ」



個室の入り口でガタガタと外野の声が聞こえてきたのだ。

奏江のこめかみに青筋が入るのを、キョーコは怯えた表情で見守っているうちに外野が鬼の形相になった奏江に蹴散らされるのだった。



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その頃、蓮は明かりのつかない部屋をベランダから眺め一人ため息をつくのだった。




つづく