《第三弾は、ちょっとした思い付きです。
こちらもフリーですので、お気に召された方お持ち帰りくださいね♪》
§イマドキの王子様事情
最上 キョーコとして生きてきて17年と数ヶ月・・また新たな真実に衝撃を隠せない表情で目の前で明るく話す男性を見つめていた。
「イマドキ王子様なんて、おばちゃんたちのアイドルの代名詞程度だよ~京子ちゃんって以外に乙女さんなんだね~?」
番組の打ち合わせで『草食系』『オラオラ系』『ロールキャベツ男子』『カフェオレ様』という語録が出てきてパニックになったキョーコに、最近の男の子はこういう風に分けられてることを教えられた。
その中に王子様系がないことに首を傾げると、先程のような回答が返ってきたのだ。
(お・・おばちゃん・・・!?)
王子様、王子様とのたまっていた子供時代がおばちゃん化呼ばわりされてキョーコがプチショックを受けていると、更なる衝撃が彼女を襲った。
「大体、最近の物語でもどっちかって言うと王子様って・・我がままで、人を顎でこき使って、そのくせ肝心な所では役に立たない?なのに美味しい所はさらっていっちゃうっていう厭味な役に回っていることが多いよね?」
アシスタント・ディレクターだという彼の話す、王子様像でキョーコの脳裏に浮かび上がったのはショータローでキョーコは膝の上で握り締めていた拳をぶるぶると振るわせた。
「まあ、お嬢様のイメージと同じような感じになってきたって言うことかな?」
「!!?」
憧れであり、目指していた対象が今や評判が地の底になっていると知りキョーコは愕然とした。
「まあ、ギャップ萌っていうのでお嬢様だけど必死に面倒見てくれようとするとか・・王子様気質の癖に妙に抜けてるとか?そこらへんが入ってくるとまた話は変わるけど・・・」
そんな独自の理論を並べているA・Dさんの言葉など、すでに耳には入ってないキョーコはブツブツといい始めた。
(そんなっイマドキの王子様・お嬢様事情がこんな状態になっていたなんて・・・)
しかし、キョーコが思い返してみても納得できてしまう面子しか思い浮かばず、さらに肩を落とした。
「それじゃあ、京子さん来週よろしくお願いします!」
「・・・・はい・・・」
カクン・・・カクン・・・とした動きで去っていくキョーコに一抹の不安を覚えたA・Dさんを残したままテレビ局を後にしようとしたその時だった。
「ああ~!!尚のポスター!!特大版!!やっぱりテレビ局いいわ~!!」
「本当本当!スタジオ観覧当たってよかったあああ!!」
その声に嫌な予感がしてチラリと振り返ったキョーコの目には、痛々しい尚のグッズを手にはしゃぐお嬢さんたちが映った。
きっとこの局である『ミュージックヘブン』の公開録画が行われるのだろう。
その昔、キョーコも何度となく送ったスタジオ観覧の抽選券だったが一度も当たることなく終わった。
(・・・・はっ!それが?今やこうして毎日のように出入りできるようになっているもの!!)
にゅうっと伸びる鼻をふって、芸能人らしく颯爽と歩き出そうとした瞬間だった。
「やっぱり尚は私の王子様よ~」
(!!?)
「本当本当、心のオアシス~」
(!!?)
人から潤いも何もかも奪い上げるアイツが!!?そう叫びだしたいのを堪えていると、彼女たちは好き勝手言い始めた。
「でも尚って絶対『ロールキャベツ』だよね?」
「ええ?!『オラオラ』っぽくない?・・こう・・・俺について来い!みたな?」
(!?・・・アイツについていくと、ろくなことないわよ!?)
経験者は語る。
「みんなといる時はそんな気させないのに、二人きりになったらガオって・・・きゃああ!襲われたぁい!」
(人がいるとかいないとか関係ないわよ!?万年発情期の胸大きければとりあえず誰でもオッケイなヤツなのに!?)
ああああ!!あの勘違いお嬢さんたちに言ってやりたい!!
この世に王子様なんてっ
(・・・・・・・・・・・・・・あ・・・・・)
怒りに体をブルブル震わせていたキョーコだったが、あることを思い出して動きを止めた。
「・・・ねえ・・ちょっと・・あの人さっきからいるんですけど・・・」
「もしかして抽選に漏れた人じゃない?・・いこいこっ」
そんなことを言われていてもキョーコの耳にはもう何も入っていなかった。
ふらりと足を動かして、無意識のうちに辿り着いた事務所のラブミー部室。
呆けたまま椅子を引いてそこにちょこんと座った。
「・・・・・・・・・・あいたいなあ・・・・・」
ため息と共に吐き出した言葉は、誰もいない部屋の中に虚しくこだます・・・はずだった。
「誰に会いたいって?」
「!!?・・・敦賀さん!!?」
「大丈夫?なんだか呆けていたけど」
どうやら部室にて寛いでいた蓮に気づかずに、キョーコは入ってきて目の前に座るとそのままぼやいてしまったらしい。
「あ・・大丈夫です・・・じゃなくてっどうしてここにいるんですか!?」
「・・・いちゃ・・ダメ?」
「ダメ・・じゃ・・ないですけど・・・」
勢いよく立ち上がった時に倒れた椅子を起こすと、キョーコは居心地悪そうに肩をすぼめてちょこんと座った。
「・・・で?・・誰に会いたいの?」
「・・へ?」
詠みかけていた台本をパタンと閉じて、キョトンとしているキョーコを真っ直ぐ見つめてくる蓮にドギマギとしながらキョーコは答えた。
「・・・・あ・・えっと・・・王子様に・・・」
「!?」
当たり前の反応で、蓮が目を見開いて驚いているとキョーコは恥ずかしそうに今日あったことを掻い摘んで(特にショータローの所を摘んで)話した。
「でも・・私、わがままで傍若無人な王子様ばかりじゃないって知っているんです・・・」
その時、キョーコの脳裏にいるのが誰かわかって蓮は表情を無くした。
「・・・・・・本当に?」
「はい!・・・彼は・・努力していました・・飛べるように・・お父さんを超えられるように・・」
キョーコの言葉に、今度は蓮が暗い顔になった。
「・・・わからないよ?彼だって本当はわがままで、傍若無人で、他人のことを思いやることができない奴かもしれないじゃないか」
するとキョーコはまた立ち上がり、蓮の目の前にあるテーブルを叩いた。
「どうして敦賀さんはいつもそんなことを言うんですか!?そんなに私のコーンが嫌いなんですか!?」
「(・・・『私の』・・・)・・・・・・・・別に・・・ただ、一般論を言ってみただけだよ・・・」
ぷいっとそっぽを向く蓮に、キョーコの憤りは収まらなかった。
「もし、彼に他人を思いやる心が薄らいでしまった時はきっと彼の綺麗な心を誰かが汚したときだと思います!・・私にあの石を渡してしまったから・・・・浄化できなのかも・・・・」
急にしょぼんとなってしまったキョーコに、蓮は慌てた。
「いやっ・・それとコレとは別物・・・だろう?・・・元々の性格かもしれないし・・・」
「コーンは優しい、いい王子様なんです!!・・・だから・・私のことも救ってくれた・・・でも・・私は・・・・・・・・っ・・ぐすっ・・」
「!!!!!~~~っだ、大丈夫!最上さんがそう思っているなら、彼もきっといい王子様のままでいるよ!?妖精界にはイマドキとか関係ないんだし・・」
目に涙を溜め始めたキョーコに、蓮は必死になって宥め椅子から立ち上がるとその細い肩に手を添えようとした。
『ガションガシャ・・カラカラカラ・・・・』
「!!?」
すると、ちょうど飲み物を買いに席を外していた社がタイミング悪く戻ってきて入り口のところで青ざめて買ってきたものを全て落としてしまっていた。
「あっ・・いや、社さんあのっ・・も、最上さんも落ち着いて・・・」
「ふ・・えっ・・コーンっ!!」
「え・・えええ~~っ!?」
「・・・・蓮・・・・おま・・え・・・」
「ええええ!?ちがっ」
慌てに慌てている蓮の知らぬところで、キョーコは一人心を固めた。
(今度・・・今度あったら必ず、コーンの心を元の綺麗な王子様の頃に戻してあげるからね!?)
その時がいつになるのか・・・この頃のキョーコはまだ知らないでいたのだが、とりあえず目の前で世間的には王子様扱いされそうな蓮が社に詰め寄られて必死に言い訳している姿を見てやっぱり世の中にはもう王子様はいないのかもと思うキョーコなのだった。
end