なんてことない非日常 -36ページ目

なんてことない非日常

スキビ非公認二次創作サイトです。
駄文ばかりの辺境館ですが、広いお心で読んでいただける方歓迎しております。

§ルートX   49





 キョーコがそれを知ったのはこの日の午後のことだった。



***************



キョーコの午前中は『Dark Moon』の撮影からだった。



「カット!・・・美緒!そこは台詞なしでいきましょう!」



「あ・・はい!」



配役のごたつきを解消するかのように、撮影はハイスピードで進んでいた。

ドラマの撮影自体初めてのキョーコにとっては、今何が行われているかさえも良くわかっていない状況だった。


ただ『美緒』になってしまえば、目の前に現れるのはほぼ敵。

睨みつけて、不敵に嗤う。

すると相手が勝手に戦いてくれて、いい画が撮れる。

そんな流れができていた。



「多くを語るよりも、ああやって暗い表情で笑って傷を見せるだけで美緒の存在を相手に・・テレビを見ている人に焼き付ける・・・彼女は本当に新人・・しかもタレントなんでしょうか?」



『操』役の大原が飯塚に訪ねると、飯塚は大きなため息をついた。

その大きさに周囲にいた人たちが少し強張った表情をしたが、飯塚は肩を落として苦笑した。



「あの子は私よりも『美緒』の心情を深く理解していたのね・・・あの傷でさえ武器に出来る『美緒』の底知れない恨みと強さを・・・監督もそれがわかってた・・・ダメね・・過去に囚われていたら私こそ役を切られてしまうわ」



「そ、そんな!それでもあの奇怪な行動には・・・」



「いやいや、元々なんかちょっと怖い雰囲気出せる子だったし・・」



飯塚を慰めるとはいえ、散々な言われようだな・・と、社は肩をすくめながらも騒動も一応の収束に向かったようで安堵のため息をついた。



「良かったな?蓮・・・キョーコちゃん認められたみたいで・・・・・・・・蓮?」



「え?ああ・・・そうですね?・・俺も負けてられませんね・・・・じゃあ、出番なので行って来ます」



「おお・・・いってらっしゃい・・・・?」



社が蓮に話しかけた時に向いていた方に何があるか確認した社は、大きなため息をついた。

そこには『嘉月』の友人役で出ている貴島 秀人がキョーコに話しかけている所だった。



(・・・・本当に・・重いよな・・・・・)



目ざとくキョーコの周りに馬の骨が現れないのかをチェックしていることを知り、社は心の底からキョーコに同情するのだった。



「では、ここで『美月』を想って見つめてください・・いいですか?『嘉月』」



「はい!」



頷く蓮に、百瀬は注意深い視線を向けていた。



「よろしく、百瀬さん」



「あ・・・はい!・・よろしくお願いします・・・・」



本番!と声がかかると二人とも意識を集中させて役に入った。



「スタート!」



監督の声と共に、生徒の一人として話していた『嘉月』の言葉が途切れた。

そのことに『嘉月』を意識していた『美月』は不思議に思って、そっと俯いていた顔を上げた。

そこには柔らかく愛おしそうに目を細める瞳があり、体中の血液が沸騰してしまう気がした。



「カット!オッケイです!!次は・・・」



次々と『嘉月』と『美月』のシーンが進むのを、キョーコは胸の奥が黒くなっていくのと腹の奥にどろりとした嫌な感情が渦巻くのを止める事ができなかった。



(あの視線も・・あの笑顔も・・・全部・・全部わたしなのに・・・・・)



愛おしそうに『美月』に触れているのは蓮ではないとわかっているのに、頭の片隅に現れ黒くて汚い自分を抑えることができずキョーコはスタジオの隅に移動した。

その後ろを追ってきたのは、先程から話しかけてくる貴島という男優だった。



「京子ちゃん、どうしたの?気分でも悪くなった?」



「いえ・・・大丈夫です・・・あの・・私は平気ですので・・・」



構われたくない一心で貴島を追いやろうとしたのだが、貴島には通じなかったようだ。



「俺もここにいたいから気にしないで?」



(・・・気に・・・する人が私以外にいるんです・・・)



とは口に出せず、キョーコは少し距離を取って貴島といることにした。


カットがかかった蓮は、いつの間にかキョーコが近くで見ていないことに気づいてスタジオ内に忙しなく視線を彷徨わせた。

するとスタジオの端っこで、仲良く(蓮にはそう見えた)貴島と並んでいるキョーコを発見した。



(・・・・あんな所で・・・なにしてんだよ・・・)



じっと視線を送っていると、その視線に気づいたキョーコがふにゃ・・と笑顔を作った。

それを見ただけで先程までの嫌な感情が薄らぐことに、我ながらゲンキンだと思いながらも小さく頷いてまたスタンバイに戻った。


キュッと靴を鳴らして振り返ると、直ぐ目の前に百瀬がじっと見上げていていた。



「!?・・・な・・なにかな?百瀬さん・・・」



「敦賀さん・・・・お願いがあります・・」



「え?・・」



目を丸くしている蓮に、百瀬は意を決した表情でキッと睨み上げた。



「ちゃんと私を・・・『美月』を見てください!」



「!?」



一方、キョーコの方でも貴島にこんなことを言われていた。



「・・・京子ちゃんって彼氏、いるよね?」



「へ!?な、なんでですか!?」



「・・・いや・・・・その・・後ろ首にあるの・・・キスマークでしょう?ギリギリ服から見えてる」



「!!?」



思わずキョーコは、両手を背中に回した。



「あはは、正直すぎだよ?女優さん目指すならそこは蚊に食われたとかなんとか誤魔化さないと」



笑いながらそう言われ、キョーコはただただ真っ赤になるしかなった。



「まあ・・相手は相当嫉妬深そうだから?俺はパスだけど・・・この世界には人のものを好き好んで欲しがる有象無象の輩がいるから気をつけなよ?・・・・ただ・・京子ちゃん、君・・正直すぎ・・・まあ、敦賀君もだけどね?」



「!!!!??」



悪戯っぽく笑った貴島に頭を撫でられたキョーコは、ギャ・・っと小さく悲鳴を上げて慌てて蓮を見たのだが蓮は百瀬となにやら話し込んでいたためキョーコはとりあえずほっと胸を撫で下ろした。

それでも貴島との会話で、二人の関係はバレているようだった。



(・・・コーン・・・・・どうしよう・・・)



キョーコが心の中でそう、蓮に助けを求めている一方で蓮もキョーコのことを考えていた。



(・・・さて・・・どうしようか・・・)



ふう・・・っと小さなため息をつく蓮は、先程百瀬から言われてしまった言葉を反芻していた。



『敦賀さん・・・私を見るとき誰かを重ねていますよね?・・カメラには『そう』映ってなくても私にはわかります・・・私、敦賀さんと思いっきり演技できるの楽しみにしていたんです・・でも、この状態だと私・・・『美月』になりきれません!もっと『嘉月』として私を見てくれませんか!?』



(・・・百瀬さんにはバレちゃってたな・・・・)



頬をポリポリとかきながら、蓮はスタジオの隅っこにいるキョーコに視線をやった。

すると、少し困ったような縋るような視線が返ってきた。



(うん?)



そのことに首を傾げていると、いないと思った貴島が手に飲み物を携えてキョーコの元に戻ってきた。

なにやら会話をして、また先程のような視線を蓮に投げたキョーコは貴島に促されるままその後ろをついてスタジオを出て行ってしまった。



(!?・・キョーコちゃん!?)



「敦賀君、次のシーンにいってもいいかな?」



「え!?・・・あ・・・・・・・」



啓文とキョーコのいなくなったスタジオ内を交互に視線を彷徨わせていた蓮は、大きなため息をつくと拳を強く握って頷いた。



「はい、いけます」



そう返事して、真っ直ぐ見つめてくる百瀬を見つめ返した蓮は指示された場所に向かうのだった。



***********



「すみません・・・貴島さん」



「いいよいいよ、次の仕事なら仕方ないし・・・監督にはもう言ってあるんだろう?」



「はい・・・・」



食事に誘ってくれた貴島に、キョーコはこのあと別の仕事があると断りを入れていた。



「もう時間なら急いだほうがいいよ」



「はい、すみません・・廊下までお見送りしていただいて・・」



「いいって、いいって・・・・頑張ってね?」



「はい、貴島さんも・・お疲れ様です」



申し訳なさそうに何度も頭を下げながら去っていくキョーコに、貴島は上機嫌で手を振った。



(・・・本当・・・敦賀君、なんであんなふつ~の子がいいのかな?演技は・・まあ・・凄いけど・・・女の子としては・・・可もなく不可もなく・・だよな~)



初日から二人の空気に、何かあると踏んでいた貴島は数日間様子を見ていたそこで気づいたのは蓮が物凄く遠巻きにキョーコを気にしているということだった。

蓮が女性から好意の視線を浴びるのはいつものことなので、キョーコが蓮を見つめていても何の不思議も感じなかったのだが蓮が誰か一人の女性を特別に意識しているのを見るのははじめてだった。



(単なるフェミニスト君だと思ってたけど・・・・)



キョーコに構い始めた途端、射るような視線が飛んでくるようになった。

そのことが至極楽しくなってしまい、わざと蓮の前で構い続けたのだ。



(・・・明日はどんな風に声かけよっかな~♪)



新しいおもちゃを見つけた貴島は上機嫌で、怒れる魔王が待っているとも知らずに撮影スタジオに戻るのだった。



************



貴島が蓮にマークされたと知る前に、キョーコは別のことを知らされて愕然とした表情になっていた。



「あ~・・・やっぱりショックだよね?」



「えっ・・・いえ・・・・」



慌てて否定したキョーコに、今度は話しかけていた相手が驚きの表情になった。



「え!?でも・・・『プリズナー』のプロモに出てたんだから少しは気になるでしょう?チャート2位って・・」



そう告げてきたのは、今日これから収録される『ジャポネット・スコープ』のアシスタント・ディレクターだった。



「え・・・・ええ・・・まあ・・・そう・・ですね?」



そんな返事で曖昧に返すと、アシスタント・ディレクターはまたキョーコをじっと上から下まで眺めた。



「いや~・・・本当に京子さんって凄いですね!?『プリズナー』の時の天使とも『Dark Moon』の本郷 美緒とも違う雰囲気で」



(・・・・それは・・暗に、素の私じゃ迫力も何も無いと言いたいのかしら・・・)



頬を引きつらせたキョーコに気づいた相手は、何かと言葉を付け足したのだがもうそれはキョーコの耳には届いていなかった。

ただ、あの不和 尚が・・・デェビュー以来一度も1位スタート以外したことない不破 尚が2位に甘んじていることがキョーコには信じられず、どうしてこうなったのか真相が知りたいと強く思ってしまっていたのだった。




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《こんばんは!絶賛、3周年記念中のユンまんまです。

駄文に駄文にだっぶ~~んを提供中に、ちょっこと提出物を・・・・・・


現在、某魔人様の所で行われている『人魚ちゃんフェア』(なんか違う)に私もちょっくら顔を出させてもらおうと思いまして・・・。


他のマスター様たちが、それはもう!それはもうううう!!!(ジタジタ♪)素敵なお話を上げている所に恐縮ですが・・・本当に思いつきをですね?ちょろっと・・ね?

書いてみた・・・しだいでして・・・・・

設定だけ思いついた状態で、先はまだ・・・なんですけど、『面白そう!』と思っていただけたら調子に乗って先を書くかもです・・・・


こんな中途半端なのでもいいのかな!!?・・・・・押し付け!!!!(グイグイっ!!~~~っエイエイおしこみおしこみ・・・ギュっ!グギっバキっぐちゃっ・・・・・ガコン!!ふうう~・・・・・逃走!!!)



噂の人魚フェア~ に押し込みました!!(ちょっと変形しましたが。うふふw)




ユンまんまでした!!》






§漂う恋心は深海で




 ずっと・・・ずっと見てきたんだ・・・。


俺はこの日をどんなに待ち望んだだろう。


君が・・・・この海の中に泡となって堕ちてくる日を・・・・・。





*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆




「・・・・う・・・・・・んっ・・・・?」




彼女は重く閉じていた瞳を開けた。



(・・・・私・・・・あ・・・そうか・・・・)



みんなの言いつけも破って、人間に姿を見せてその人間に恋をしてしまい・・・・そしてその恋を失った。



(泡に・・・なったらこんな気分なのね・・・・・・・・・・うん?手が・・・ある・・・・・)



目の前にかざした細くて白い腕。

手を開くと懐かしい水かきが見えた。



(・・・・・・?・・・・・・)



足を動かしてみるけど酷く重くて、少ししただけで体がだるくなってしまい休憩することにした。



(・・・私・・・泡になったんじゃ?・・・)



あたりを見回してみても静かな海の底。

自分の周りには海草たちから出た泡がユラユラ上へと向かって上っていくだけ。


自分が住んでいたにぎやかな海とは違う、静か過ぎて冷たい海流の底らしい。


しかし、不思議と見覚えがある。



(・・・!・・あるはずだわ!?ここは・・・)



「ああ・・気がついた?キョーコちゃん」



「!?・・・っ・・クオン・・様・・・・私・・・」



「ああ・・いいよ、起き上がらなくて・・って言っても起き上がれないか・・・薬の副作用で・・・」



申し訳なさそうな苦笑で、海藻のお茶を運んできてくれたクオンにキョーコは目を見開いた。



「薬・・・そう!あの薬、人間になる薬で・・・・ええ!?声っ戻ってる!?」



色々なことにパニックを起こすキョーコを宥めるように、人魚族とは違う尾を動かして傍に来たクオンはそっと綺麗な虹色のグラスを差し出した。



「コレを飲んで落ち着いて?」



優しい眼差しで差し出されたものだったのだが、キョーコはクオンを見たあとそのグラスをまじまじと見つめた。



「クス・・大丈夫、もう魔法は入ってないよ?まあ・・疲労回復の薬が混ざっているから少し苦いけど・・・・・体が動かないと今、君が陥っている状況を理解できないと思うけど?」



そう言われてしまうと、キョーコは渋々そのグラスを受け取り一気に飲み干すしかなかった。



「!!・・にが・・・」



「でも、もう苦しくないだろう?」



「・・・・あ・・・本当だ・・・」



さっきまで動かせなかった足が動くことに気づいたキョーコは、エイッと懐かしい感触の足・・尾ひれを動かしてみた。


『ジャラ・・・・』



「!!?」



足が重いのは薬の副作用だと思っていたキョーコの目の前に、尾ひれを縛り付ける鎖のついた鉄輪が姿を現した。



「ク・・・クオン・・・様?・・・・これは・・いったい・・・」



キョーコは空になったグラスを持った指をカタカタいわせながら、なにやら準備をしだしたクオンを瞳孔の開きかかった目で見つめた。



「ああ・・・・だって・・・逃げられたら困っちゃうし?」



ニッコリと笑うクオンは、深海の真珠のようにキラキラと輝いて見えたがキョーコにはそのことが余計に怖いと下半身の鱗が総毛だった。


震えるキョーコの目の前に、蓮は一枚の昆布をかざした。

もちろん、普通の昆布ではない。

この海の世界では、大切な契約書としての役割を担っているものだ。



「それ!?」



『ガション!』



「!!」



契約書には見覚えがあって、キョーコはそれに手を伸ばそうとしたのだが足を絡め取っている鎖によって阻まれた。



「ああ・・足が傷ついちゃうから暴れないで?・・・そう・・この契約書はあの時のものだよね?」



「・・・・・・・・・・・」



キョーコはクオンの真意を見極めようと、表情を固くしながらも黙って次の言葉を待った。



「そんなに警戒しなくても、俺はあの時に契約した約束を守ってもらいたいだけなんだよ?キョーコちゃん」



「約束って・・・・」



キョーコの記憶にあるのは、人間になるための薬をクオンから譲ってもらった時に声を引き換えにした・・そして人間の姿のまま海に入ると泡となってしまうという契約だった。



「私は声を・・・・」



「そうだね?・・・あの時は、とりあえず声を借りたかな?」



「とりあえず!!?」



「だって・・コレに書いてあるよね?『この薬を欲するものは、自らの大切なものを渡すべし』って・・」



「・・・だから・・・声を渡しましたよね?」



「ええ~?・・確かにキョーコちゃんの歌は綺麗だけど、『声ぐらいなら、いっか~』っていうつもりで俺に渡したよね?」



「!!(・・・バレてる・・・)」



「俺が欲しいものは別のものだからね?」



「・・別?」



「声も含めて・・・君が欲しかったんだ」



「・・・・へ?」



突然告げられた言葉に、キョーコはただただ呆けるしかできなかった。



「ずっと・・ずっと君を見ていたんだ・・・」



「ク・・オン・・?」



「君が俺をそういう対象として見ていないことなんか知っていた・・・・けれど、人間なんかに君を奪われるなんて考えたこともなかったっ!!・・・・」



がしゃん!!と小さな小瓶を並べたテーブルの上を、クオンの掌が叩きつけられた。

怒りでかこめかみに青筋を浮き上がらせた横顔は、キョーコが見たこともないクオンだった。


そのことにキョーコが硬直すると、クオンはいつも通りの笑顔に戻って振り返った。



「・・・でもね?・・・これはチャンスだと思った・・・・」



「チャ・・ンス?・・・」



「・・・君を・・・・俺の海でずっと、君が暮らしていくことができるチャンスだよ?」



その言葉にキョーコが呆けていると先程の衝撃で、クオンの拳から少し血が流れ出した。

するとその血の匂いを嗅ぎつけたサメが、直ぐにクオンの家の周りを泳ぎだした。


複雑に入り組んだ岩で出来た家の周りをうろうろするサメのせいで、ただでさえ暗いこの空間に影ができた。


その影のせいか、クオンの表情がどんどん仄暗く見えた。



「君を俺から遠ざけるためにうろついていた君の姉君たちも、この海を統べる君のお父上からも・・・・君を蔑ろにした人間たちからも・・・君を、誰の手にも渡さない・・・・君は俺だけのものだ・・そして・・俺も・・君だけのものだ」



「クオンっ・・・・・一体どうしちゃったの!?私が人間になる時、あんなに優しく・・・」



「君を止めた姉君たちを説得して、人間になる薬を渡したのに?」



「そうよ!?お父様の病気だってあなたの薬のお陰で治って・・・」



「君のお父上を治したのは人魚族ではない俺が、この海で生きてくためには必要だと思ったからだよ?・・・キョーコちゃん・・・君はもうここから出られないよ?なぜなら・・・人間に恋をした人魚姫は、海の泡になったんだって・・・そういう噺になっているんだから・・・・だから・・君をここへ堕としたんだ」



そう言って笑ったクオンは、二人を丸呑みしようと襲い掛かってきたサメのえらに腕を突き入れると物凄い力で振り回した。

するとキョーコの目の前で、大きなホオジロサメが何回転もスローモーションで回転して飛んでいった。



「キョーコちゃん、良かったね?今日はサメ料理を食べられるよ?」



「ク・・・オ・・・・・・」



今まで見たこともない物凄い力を振るうクオンに、キョーコは逃げられないと悟った。




イルカの尾を持つクオン。

特異種族である彼に見初められた人魚のキョーコは、その想いを受けて深海に沈むことになるのだった。




*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆



一応・・続く・・かも?


《・・・・・えっと・・・続き必要・・・・ですか?・・・・・ですよね?・・・・・・・・チーン・・←のーぷらん》



追記:続くことが決定しました。

うん・・毎回ですみません。



と、いうことで   2へ続く!!






 




§ルートX   48





 「・・・・すみません・・・・でした・・・」



静かな車内、キョーコの何度目かの謝罪にも蓮は口を開くことなくハンドルを操っていく。


夜も更けようとしていく時間、すれ違う車もまばらになりつつある。



「・・・心配・・・かけて・・・」



少し泣き出しそうに弱々しい声に、無表情だった蓮の眉間に皺が寄る。



「・・・・本当にね?・・・」



「っ!ごめんなさい!・・でも・・考え出したら止まらなくなってて・・・」



「だからって・・俺にも何も言わずに・・・」



「・・・ごめん・・・コーン・・心配・・させて・・・・」



しょんぼりと項垂れているキョーコを横目で見やりながら蓮は、いつもの帰り道とは違う方へとハンドルを切った。



「!?・・・え?」



ぐん・・っと大きくカーブした車にキョーコは顔を上げた。

きょろきょろと車から外の景色を見る。

見たことはあっても見慣れない景色。

営業の終わった店も多くあり、明かりもまばらで昼間に見たことがある景色は知らないものと大差なくなってきていた。



「コーン!?どこに・・」



「・・・君を思いっきり泣かせられるところに行く」



「え!?」



「俺を心配させた罰」



にいっと笑った蓮の横顔は、キョーコの苦手な夜を纏った艶めかしい男の顔だった。


蓮の表情にキョーコが怯えているうちに、車は細い山道を登り始めた。

最初はあった常夜灯も徐々に消えて車のヘッドライトだけになっていった。


安定感のある蓮の運転のお陰か、クネクネとした山道でも酔うことなく20分後何もない駐車場に辿り着いた。



「降りて」



短く言葉をかけられ、キョーコはここに置き去りにされるかもしれない・・と思いながら恐る恐る車から降りた。

少し冷たい強めの風に体が押される。



「!・・・・・コー・・」



よろけそうになった瞬間、蓮に後ろからしっかりと抱きとめられた。



「キョーコちゃん、上・・見て?」



蓮に促されるまま顔を上げると、所々に雲が邪魔をしているが街中で見る何倍もの星たちが輝きを放っていた。



「っ・・うわあ・・・・きれー・・・・」



「この駐車場から歩いて30分先に天文観測所があるらしいんだけど・・・天文観測の邪魔になるからって、この周辺は常夜灯を置かないんだって、だから駐車場のここでも十分綺麗な星空を見れるんだ」



「すごい・・・・」



キョーコは細い腕を伸ばして星に手をかざした。

その手を蓮が包んだ。



「もう・・泣いていいよ?・・今日はよく、頑張ったね?」



冷たい風と青白く光る星とは対照的な、蓮から贈られた温もりと言葉にキョーコの中でカチカチになっていた神経が解き放たれた。



「!?な・・・・んっ・・でぇ・・・っ」



口を開くたび、ボロボロと大粒の涙がキョーコの瞳から溢れた。



「そりゃあ・・・普通なら、あの状況は逃げ出したいし・・一度出てしまったら戻ってくる時は平常心ではいられないからね?・・・きっと、物凄く張り詰めていたんだろうなって思ってた・・・・だから・・・俺にも教えて欲しかったんだ・・飛び出し先ぐらい・・・」



背中越しから伝わる蓮の熱と言葉に、キョーコの喉は小さく鳴った。



「本来なら、役を放棄したと思われても仕方なかったんだよ?」



「っつ~~っはぃっ・・・」



「行き先も告げないから・・・戻ってくるまで気が気じゃなかったんだから・・」



「~っん!・・・っず・・」



「キョーコちゃんの美緒、完璧だった・・・一緒に競演できるのがすごく嬉しいよ」



「ずっず・・ほんと?」



「うん・・・俺も・・負けてられない」



ぎゅっと後ろから抱きしめてくる蓮に、キョーコは泣きながらも笑った。



「えへへ・・・・」



「こら!本当に心配したんだよ?!・・これで普通の美緒で戻ってきたら・・・」



「・・も・・戻ってきたら?」



「・・・・・・・・・・・」



「いやあああああ!!なんかいってよ~!!余計に怖い~!!」



星空の下、二人は一時はしゃぐと車に戻ることにした。



「?・・・ねえ、コーン・・・」



「うん?」



キョーコは先程まで気づかなかったが、駐車場の一番隅っこに自分たち以外に車が停まっているのが目に入った。



「あの車・・少し揺れてるけど・・平気かな?壊れてるの?」



蓮も今まで気づかなかったようで、キョーコの視線を追ってその車を見た。



「・・・・キョーコちゃん、早く車に乗って」



「へ?」



「いいから早く・・・俺たちはお邪魔なの」



「???」



訳がわからずキョーコは蓮に急かされるまま車に乗り込み、少しのドライブを終えると自宅へと帰りついた。

その道中、あの車の正体を蓮から教えられたキョーコは口の端から小さな悲鳴を上げ続けることにはなったが・・・。



「俺たちもいつか・・・スル?」



「絶対しない!!!」



「星空見ながらとか・・・いいかもよ?」



「絶対、見てる暇なんてないもん!!」



(家の中でも十分、暇なんか与えてくれないくせに!!)



仲のいい時間をベッドで過ごした二人は、一緒にお風呂に入りながらこれまた仲睦まじくちょっと刺激的な内容の会話を喧々囂々語りあうのだった。




***************



『ガン!!!』



ガシャン・・・ガラガラガラ・・・・・



物が壊れる音に祥子は慌てて飛び起きた。



「尚!?」



「・・・わり・・・起こした・・・」



低く呻くような声はお酒によってか少し擦れていた。



「尚・・・お酒はもう・・・・」



冷蔵庫から取り出した缶ビールを、ふらついている尚から取り上げると、床に散らばったたくさんの缶にぶつかった。



「!?・・・」



祥子にお酒を取り上げられると、尚はふらふらとどこかに行きだした。



「尚!?どこ行くの!!?」



「・・・・ねる・・」



確かにその先は尚の寝室なのだが、祥子は尚の背中が部屋の中に消えるのを見送ると散乱した部屋を片付けにかかった。



「!?・・・・・・・・尚・・・・」



たくさんのごみの中に、尚が愛用していたギターのネックが折られた状態でリビングに放り捨てられているのを見つけてしまい祥子は一人その場にうずくまるのだった。





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