なんてことない非日常 -17ページ目

なんてことない非日常

スキビ非公認二次創作サイトです。
駄文ばかりの辺境館ですが、広いお心で読んでいただける方歓迎しております。

§ルートX    69





 「「はあ?!なにそれ!!?」」



社と奏江は、離れた場所に居ながらも目の前の人物が話した内容に目くじらを立ててそう叫んでいた。





***********



亡霊のようなキョーコに憑りつかれて、これ以上纏わり憑かれては心身の健康上よくないと奏江は事のいきさつを聞くことにした。



「ひっどい話ですね~~」



千織は毒ノートをスタンバって、口を尖らせるのをキョーコは苦笑した。


千織は、キョーコが話しはじめて直ぐにラブミー部室へ入ってきたため事の経緯をそのまま聞くことにしたのだ。



「逆恨みの上、とばっちり・・・しかも相手も芸能人だから訴えれば大事になる・・・」



「それだけじゃないよね~・・京子はまだまだ新人タレント、一方相手は新人といえど人気急上昇中のビジュアルバンドのボーカル・・・・」



「「勝ち目ないわね~~」」



「・・・・・・・・・・・・・・・」



現実をわざわざ明るみに出してくれる友人二人に、苦い顔をするキョーコはまた大きなため息をついた。



「・・・・私・・・ダメ男に好かれる周波でも出てるのかしら・・・」



どんより落ち込むキョーコを前に、奏江と千織は顔を見合わせた。



「敦賀さんは違うじゃない」



「そうそう、何だかんだでアンタのこと心配して手を差し出しているでしょう?」



「優しさの塊!って感じだし・・」



「そう?私はそれだけじゃない気もするけど・・・話を聞いた限りでは、今までの男たちよりは幾らかましな気がするわ」



奏江たちの会話を聞きながらキョーコは、先日レイノが言い放った言葉を思い出していた。


『それは・・どうかな?・・・・血に染まったその手は、もしかしたら次はお前を捉えるかもしれないぞ?』



(・・コーンが・・・私を?・・・・・そんなことあるはずない!・・ないって・・・思いたいけど・・・・・)



時折、激昂する蓮を目の当たりにしているのと言い得ぬほど冷たい空気を蓮が持っていることにキョーコは気が付き始めていた。



(・・・もしかしたら・・・今までの誰よりも・・・・・)



キョーコは蓮の冷たく固い声も思い出していた。



『アイツか?・・・君を襲ったのは・・・』

『・・・・どうして君は・・・』


(アイツに襲われたことよりも、コーンの声を聞いた時の方がずっと・・ずっと怖かった・・・・・コーンを・・・・『キケン』だと頭が判断した・・・)



「ちょっと!?大丈夫!?顔色悪いわよ!?」



思考の小部屋に迷い込んでいる間に、肩を震わせ身を抱きしめているキョーコに奏江と千織が心配そうに覗き込んできた。



「へ・・・平気!・・アイツ、変な電波でも送ってるのかしら!?ちょっと温かい飲み物でも買ってくるね!?二人にも買ってくるから待ってて!」



気丈に振る舞って、部屋を飛び出して行ったキョーコの態度に奏江と千織は見つめ合いため息を吐くことしかできなかった。




**************



「大丈夫なのか!?キョーコちゃん・・・」



「ええ・・・もう心配ないと思います」



蓮から大まかな出来事を聞いた社は、心配そうにオロオロして見せた。

すると蓮がクスリと笑みをこぼして、そう補足したのだ。



「ならいいけど・・・・・・」



取材も終わり、事務所の駐車場に戻ってきた二人は車から降りて事務所内に足を進めた。



「しっかし、キョーコちゃん危なっかしいな・・・お前・・ちゃんと見てないと彼女また碌でもないのに掴まるかもしれないぞ?!」



「・・・・・・わかってます・・・彼女のことは俺がしっかり守りますから・・・」



前を見てスタスタ歩きながらそう言い放った蓮の横顔を見て、社は押し黙った。



(あんな表情の奴に守られるなんて・・・キョーコちゃんって・・本当に男運ないかもしれないな・・・・)



先ほど、女性記者をビビらせた表情になってしまった蓮に社はただただキョーコの不運を憂うことしかできなかった。

するとふ・・・と蓮の表情から硬さが取れた。



「・・・・あれ?・・・・キョーコちゃん?」



「え?・・・あ!本当だ・・キョーコちゃん!!」



飲み物を買いに出たキョーコは、突然名前を呼ばれ驚きながら蓮たちを見つけ笑顔を作った。



「コ・・・敦賀さん・・・社さん・・・・・・今、お仕事終わりですか?」



「そう、とりあえずね・・・」



「とりあえず?」



社の言葉に、キョーコが首を捻ると蓮が苦笑した。



「この後、仕事の話で夕食を一緒させてもらうんだ・・・・俺にとってはどんな仕事よりもハードなんだよ・・・会食って・・・・」



「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」



蓮が決死の表情でそう語るのを、キョーコと社は半目で聞き流した。



「ところで・・キョーコちゃんは・・仕事終わり?」



「いえ・・・雑用を椹さんか仰せつかっていて・・・でも、その前にモー子さんたちとお話を・・・」



キョーコの言葉に、蓮は何かを感じ取ったのか眉間に皺を寄せた。



「・・・・・この間のこと?」



「えっ・・・あ・・・・うん・・・」



キョーコは顔を逸らしながら頷くと、蓮は小さなため息を付いた。



「・・・・そう・・・君の周りでも知っている者がいた方が、いいと思っていたところだったんだ・・・」



「そう・・・だね・・・・ありがとう・・・心配してくれて・・・」



「いいよ、それより仕事・・・戻らなくて平気?」



蓮にそう尋ねられて、キョーコは慌てた。



「あっ!二人に飲み物買いに来たところだったんだ!!」



「クスクス・・・じゃあ、早く買っていかないと怒られちゃうよ?」



「うん!じゃあ・・ね?コー・・・敦賀さん・・・・社さんも失礼します!!」



何か言いたそうな表情のキョーコは、それを無理に押しこめたように笑うと二人に手を振って走り去っていった。

その後ろ姿を、蓮も何か言いたそうな雰囲気で手を振って見送っていた。



(・・・なんだ?)



聞くに聞けない二人の雰囲気は、実は軽井沢から帰ってきてから既にできつつあったのだ・・・・・・




70へ


†Marriage end blue    14





 「わあああ~!!すっごぉ~い!!」



中身が7歳になったキョーコは、蓮のマンションについた途端口をあんぐり開けて歓声を上げた。

そしてすぐに部屋の中をパタパタ走り回り始めた。



「君の部屋はここだよ」



ゲストルームのドアを開けてやると、キョーコはすぐに走り寄ってきた。



「すごい!こんな部屋に住んでいいの?!」



「・・・うん・・・・」



きゃあきゃあと喜ぶキョーコを見つめながら、蓮は落ち込んでいた。



(・・・・なんか・・・人さらいの気分だ・・・・)



「ねえ、お兄ちゃん!お腹すいちゃった」



「あ・・・そうだね・・・じゃあ・・・何か頼もうか?」



すると、キョーコは頭を振った。



「私、卵焼き作れるよ!?」



「・・・え?」



「お母様がね?大好きなお店の味を教えてもらって上手にできるようになったんだよ!?」



キョーコはそう言いながら腕まくりをして、椅子を持ち上げ冷蔵庫の前まで持って行って初めて異変に気付いた。



「・・・・?・・・・お兄ちゃん家の冷蔵庫って小さいね?」



「え?・・・・・」



「だってね?私の家の冷蔵庫はイスに乗らないと届かないんだ~・・・あ!キッチンも小さい!これならイスがなくても作れる!」



キョーコのその言葉に蓮は、その姿を想像した。


7歳の身長では、当然キッチンも冷蔵庫も届かないだろう・・・それでも椅子を引きずり上ってまで居なくなった母親のために、卵焼きを作っている姿を。


目線が上がり、軽々材料が取り出せるのを喜びながらキョーコが卵焼きを作る姿を蓮は苦しそうな表情で見つめた。



「できたよ!」



キョーコが差し出したのは、毎朝作っていた今までのキョーコのものから比べれば形も歪で所々焦げたり崩れたりしていた。

それでも・・・・・



「・・おいしい・・・・・」



「本当!?」



「うん・・・・おいしいよ」



味は確かに毎朝キョーコが作っていた卵焼きの味だった。



「・・・きっと・・・素敵な奥さんになれるよ」



「本当!?やったあ!!・・・でも・・・お母様が食べてくれるのが先かな?えへへ」



照れ隠しなのか、そう言って笑うキョーコに蓮は胸が詰まった。


7歳のキョーコが慕っている母親は、今もなおその行方が分からないままなのだ。



(・・・・もしかして・・・そのことがこの記憶喪失の根本の原因なのか?)



裏切られたと嘆いたのは、宝田家でもなく宝田グループでもなく・・・・最愛の母親に見捨てられたという思いだけなのでは?

蓮は持っていた箸をグッと握りしめた。


あの心優しかったキョーコを壊して、側をいなくなった母親に知らず憎しみがこみ上げてくる。



「お兄ちゃん?」



キョーコに声をかけられて、蓮ははっとした。



「ごめん・・・美味しすぎて・・・うん・・・これならお母さんもきっと喜んでくれるよ・・・」



「本当!?もっともっと練習して、お母様が帰ってきたら一番上手に出来たのあげる!」



「・・・そう・・・だね・・・」



曖昧にしか笑えないのは、自分とは真逆の感情で親を見ている姿が眩しすぎたせいかもしれないと蓮は独り心の中を沈めた。

そんな蓮に気付かずに、キョーコは卵焼きをほおばりながら訪ねた。



「・・・・・宝田の叔父様、いつ戻ってこられるの?」



「ああ・・・電話してみるよ・・・食べたらお風呂に入って、もう休んで?」



「うん!」



卵焼きと、レトルトのごはんのみの食事を終えるとキョーコは片づけをして部屋に戻って行った。

そのことに安心して携帯を取った蓮の元に、キョーコが走って戻ってきた。



「お兄ちゃん!私の荷物にこんなのが入ってた!!」



キョーコが握りしめたものを、ポンと蓮の手に乗せると蓮は固まった。



「これって、大人の女の人が使う下着でしょう?なんで私の荷物が置いてあるところに入ってたのかな?」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



予想外の方向で、キョーコのブラジャーとショーツを手に入れてしまった蓮は呆然としたまま心の中で呟いた。



(・・・・これ・・・・記憶が戻った時、俺は殺されるのでは?・・・・・・)



しかし、これだけでは終わらなかった。



「お兄ちゃん!大変!!胸が腫れちゃった!!!」



「でっ出てくるなあ!!!」



説得して下着を受け取りお風呂に入る準備をしていたキョーコが脱衣所から裸で飛び出そうとするのを、蓮は必死の思いで扉を押し返して留めたり。



「こんな体になっちゃったからお母様も叔父様も私のこといらなくなっちゃったのかな!?」



わあああああああんん!!と裸のまま泣き出すキョーコを、見ないように扉を少し開けて説得したり。



「違うって!・・・その・・・・だ・・大丈夫!俺のせいだから!!」



「・・・・・・お兄ちゃんの?・・・せい?」



「そう!俺がお願いしたんだ・・・君と一緒に住みたいって」



「・・・こんな変な体なのに?」



「変じゃない!」



「・・・・でも・・・背中向けてる・・・」



グスグスと泣くキョーコの言葉に蓮は、内心頭を抱えた。



(勘弁してくれ・・・・・)



それでもキョーコは泣き止まないため、蓮は意を決して振り返ることにした。



「大丈夫、キョーコちゃんは変じゃない・・・ほら、お風呂入っておいで」



「わかった・・・お兄ちゃんがそう言うなら変じゃないんだね?」



「ちゃんと温まって・・・わかった?」



「うん!・・・わあ!!お風呂も広い!!」



バスルームにキョーコが入って行くと、蓮はスタスタと脱衣所を出てソファーに座りコーヒーを一口啜って小さく息を吐くと。


頭を抱えて項垂れた。



(もう耐えられん!なんだ!?拷問か!!?でも、見てない!顔しか見てない!!・・・・・・・お尻は・・ちょっと見たけど・・・・・・・・・・・・・・・・)



蓮ががっくりと脱力している間に、キョーコがお風呂から上がってきた。



「お兄ちゃん!ドライヤーして~」



その声に、蓮は恐る恐る振り返るとキョーコはワンピースタイプの寝巻を身に着けて濡れた髪でドライヤーを持ってきていた。

そのことにホッとして、ドライヤーを受け取ると、ソファーに座ったキョーコの髪を乾かし始めた。



「ふあああ~・・・」



大きな欠伸をし始めたキョーコに、蓮が思わず笑ったのだがすぐにその表情は凍りついた。

何気なく視線を下ろした先に、白い寝巻の下にうっすらとピンク色が透けているのが見えたのだ。



「!?・・・キ・・キョーコ・・ちゃん・・・そのっ・・・・下着・・・は?」



「着てるよ?」



「・・・・だ・・・・・よね・・・・・・・・・・・・」



きっとキョーコの着ている下着は、ショーツだけのことだろう。

蓮は、もうここで自分が壊れても誰も咎めない気がした。


ドクンドクンと頭が痛くなるほどの鼓動を抑えながら、キョーコの髪を乾かしてやる。

ふわりと香ってくる甘い匂いも、髪の感触も、頬の滑らかさも全て17歳のキョーコだ。


『約束』を思い出すまで、キョーコにキス以上のことはしないでおこうと決めたのに・・・。

わざと怒らせて注意を引いて、それでも甘い雰囲気にならないように線を引いて・・・。


しかし今目の前にいるキョーコは、そんな線引きなど意識もしない幼い考えのみで行動してくる。

だから・・・今、とうとう睡魔に勝てずに眠ってしまったキョーコが体を倒して蓮の胸に飛び込んでいても蓮はキョーコに何一つしてはいけないのだ。



(・・・・・・・・・・・・・・・・今すぐ俺を罵倒してほしい・・・)



お風呂上りの柔らかい温もり、規則的な寝息、苦にもならない重み。

どれもこれも蓮に眩暈を覚えさせるほどの誘惑を放っていた。



(今すぐ・・・罵倒しないと・・・・・)



蓮はドライヤーを取り落して、キョーコの体を抱きしめてその温もりを自分の中に取り込むかのように縋った。

そして、寝息を立てている唇に近づくと・・・・・・

バチン!!


と、勢いよくブレーカーが落ちた。

どうやらドライヤーが壊れたらしい。

目の前が真っ暗になって、視界からキョーコが消えると蓮は正気に戻れた。


壊れたドライヤーからコンセントを抜き取り、ブレーカーを上げ、ソファーに寝かせていたキョーコを抱き上げて自分の寝室に運んだ蓮は一気に疲労感が増したのか息を吐けるだけ吐き出してその場にしゃがみ込んだ。



「はああああ・・・・・・・・・懐っこくなくても、懐っこくても・・・憎たらしい・・・・」



不貞腐れた蓮は、しゃがみ込んだ膝に頬杖をついた。

しかしその頬が緩んでいることなど、安心しきった様子で寝こけているキョーコが知るはずもなく・・・。



(明日も子どもだったら・・・・俺、どうすればいいのかな・・・・)



シャワーを浴びて、キョーコの隣に身を横たえると丸まって寝るキョーコの背を優しく叩きながら自分の眠りについたのだった。




**********



軽やかな包丁の音など、キョーコと一緒に住むまで蓮の家で聞いたことはなかった。

曽祖父の代から大きな貿易商で、祖母たちが家事などの労働をしている所など見たことがなかった。


特に蓮の母親は、根っからのお嬢様だったらしくいつもお門違いな子育てばかりをしていた。

幼い頃は、不思議だと思わなかったがそれなりに年齢がかさむと母の行動が可笑しなことに気付いた。



(・・・・・子供の成長のために、ノルマ通りの料理と量を無理矢理口に入れるとか・・・良いと言われる勉強法は何が何でもやらせるとか・・・・天然で超スパルタなんだよな・・・)



そのおかげで身についたこともある・・・しかし、重すぎる親の愛は蓮にとって重圧にしかならなくなっていた。


父の跡を継ぐためにジュニアスクール時代から、ヒズリグループに出入りして発言権まで得ていたがそれも次第に親族グループ反発派の者たちから嫌がらせを受けるようになったり心身共に疲弊していった。


だから、ガラの悪い仲間とつるむのはごく自然なことだったのかもしれない。


仲間との共通点は、『温かさを知らない』ことだったのかもしれない。

そんな寄り集まりだからか、結局は温もりなど手に入ることもない。


人といても結局、冷たい鉄の塊の中にいる気分で何年も過ごすうちにソレが当たり前になっていた。



「・・・・ん・・・・・・」



蓮はベッドの中を手で探る。

求めていた温もりは、ずっと昔からあったことを思いだしたのに簡単に手に入らない。


けれど昨夜は、不本意な展開だったが欲しかった温もりを手に入れられたからこんな昔の感情をアリアリと思いだしたのかもしれない。

少し重く冷たくなった心を、溶かして温めてくれる存在に触れようとベッドの中を手が探し回るがお目当てのモノにぶつかることはなかった。



(!?冷たい・・・)



自分の横に空いたスペースはもぬけの殻で、そこは随分前から人がいないらしく冷え切っていた。


蓮は飛び起き、リビングに走った。



「きゃあ!?・・・お・・おはよう・・ございます」



部屋のドアを勢いよく開けた音で、悲鳴を上げたキョーコがキッチンから朝の挨拶をしてきた。

呆然としている蓮は、キョーコの背後でコトコトといい音を立てている鍋や既に出来上がった朝食の一部がダイニングテーブルに並んでいるのを見つめた。



「顔、洗ってきてください」



その口調も、表情も、7歳のキョーコではなく見慣れたキョーコだった。



「・・・・・・・・・・・・・君・・・歳は?」



「は?17歳ですけど?・・・寝ぼけているんですか?」



首を傾げていたキョーコは、目を見開いたまま立ち尽くす蓮に温かい湯気が立ち上る炊き立てのご飯をよそった。



「早く準備しないと学校始まりますよ?・・・聞いてます?ご飯~」



「・・・・・うん・・・・用意・・・する・・・」



ホテ・・・っと、呆けながらも洗面所に向かおうとする蓮にキョーコは慌ててタオルを持って近寄ってきた。



「コーン!!タオル!!」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」



「タオル!洗面所に置いてないから」



はいっと柔らかく洗濯されたタオルを押し付けられた蓮は、忙しそうにキッチンに戻ろうとするキョーコの手首を掴んで引き留めた。



「・・・いま・・・・・・・・・なんて・・・」



「え?タオルが、洗面所にないから・・・」



「そうじゃない!俺のこと・・・コーン・・・って・・・」



真剣な顔でそう言った蓮に、キョーコは怪訝な表情をした。



「何言っているの?昔っからこうやって呼んでるじゃない・・・・『約束』通り、私が16歳になったら結婚して一緒に住むっていうのも叶えたから幸せボケでもしましたか?」



にんまりと笑って見せるキョーコに、蓮はただただ驚くしかなかったのだが更なる驚きがこの後待ち構えているのだった。




15へ





























 

§アラビアン・ナイトは眠れない    出張→帰社(残業)





 『と・・言うわけで、秘書課の方からの申請でね?先月から、全社員対象で同性での宿泊の場合ツインルームにすることで出張費を減らすことにしたんですよ~・・上役が、豪華なシングルばかり使ってるのを怒った秘書課の新人さんが全員デェラックス・ツインにすることで無駄遣いを減らすことにしたんですって・・・最近の新人さんは凄いわね~上役たちが完全に言い負かされてたらしいわよ~』



蓮と正体がばれてから初めての出張に来たキョーコは、蓮がかけている携帯の向こう側の会話を聞いて一人の人物の顔が思い浮かんだ。



(モー子さあああああああんっ!!!)



心の中でキョーコは滂沱の涙を流しながら、大学からの親友で『仕事』を引き受けた理由の人物の姿を思い出した。


倹約家の琴南 奏江がたった半年で、秘書課から経理課を動かせるほどの力を付けていたことに尊敬と恐怖を抱くが・・・・



(タイミングが悪すぎでしょう!!?)



『男』として姿を偽っているままでいることに、この時ほど後悔したことはなかった。



「あ~・・・・えっと・・・・どう・・・しようか?」



とりあえずチェックインをしたものの、二人はロビーで会社に確認の電話をしていたのだ。

携帯を切った蓮は、眉根を寄せ京太に振り返った。

既に京太が本当は女の子だと知っている蓮とは、恋人なので同室でも構わないはずなのだが事はそんなに簡単ではなかった。

京太は青ざめて俯いた。



「ど・・・・・どう・・・しましょう・・・・」



なぜなら二人は、まだ親密な関係にまで至っていなかったからだ。


しばしの無言が続いた後、蓮はまた電話をかけ始めた。



「はい・・・そうですか・・・わかりました・・・」



そんな会話を電話をかけては繰り返し、大きなため息をつくことを数回して蓮は諦め顔で京太の荷物を持った。



「え?・・・敦賀主任?」



「・・・ごめん・・・・この周辺のホテル全滅だった・・・ここも、他のホテルも空きがないって・・・・」



その答えに、京太は頷くしかなった。



「そうですよね・・・・・だって・・・今日、明日が大きな花火大会なら・・・僕たちの部屋が取れているだけでもすごいことですもんね・・・」



駅に着いた時から、多くの場所に貼られた『全国花火師大会』のポスターを目にしていた京太はそう言って項垂れた。



「とりあえず部屋に行こう・・・明日の打ち合わせもしたいし・・・・・・・」



「・・・・はい・・・・・」



蓮の後ろをトボトボと付いて行きながらキョーコは目をグルグル回した。



(ど・・どうしよう!!だって・・・・今回の出張3泊4日だよ!!?しかも花火大会とだだカブリ・・・)



企画した商品の完成を確認するため、どうしてもこの日程が必要なのはわかっているのだがそれでも同部屋に3日間一緒だという事実にキョーコはどうすればいいのかわからなくなっていた。



「広いね?」



「わ・・・本当だ・・・・」



今までのスタンダードクラスでシングルの部屋は本当に狭かったのだが、役員もこのグレードに統一したことで役員以下の者たちには豪華に感じた。



(…って言っても役員の人たちは一人でツインに泊まるのよね・・・・これ以上のクラスに泊まっていたなんてそりゃあモー子さんが怒って改革しちゃうのもわかるかも・・・・)



それでもタイミングが・・・と、ブツブツ言っている京太を尻目に蓮はテキパキとテーブルにノートパソコンを出した。



「京太、明日の打ち合わせをしよう」



「あっ・・はい!」



(そうだった!ここには仕事に来てるのにっ・・・敦賀さんなんか・・・ほら・・・何とも思ってないみたい・・・・)



書類を出し、パソコンを起動させている姿はいつも会社で見慣れている『主任』の蓮だった。

京太は気合を入れ直して、自分のカバンから書類を取り出すと蓮の前に腰を掛けて打ち合わせを始めるのだった。



+++++++++



「よし・・・これで明日の視察も上手くいくだろう・・・飯にでも行くか?」



「はい!」



京太はすっかり緊張を解いて、自分の荷物を漁りだした。

そんな京太の後ろ姿に蓮が、こっそりため息を付いていることなど知らずに。


近くのファミレスで夕食を摂っていると、窓の外に少しだけ花火が垣間見れた。



「主任!すごいですね!?ここからでも見える!」



覗き込むようにしないと見れないが、京太は嬉しそうにそう声を上げた。



「クスクス・・髪にソース付くよ?」



頭を下げたせいでハンバーグプレートの上に髪の毛が付きそうになったのを、寸でのところで蓮が摘まんで阻止してくれた。



「すっ・・すみません!・・・・はしゃいじゃって・・」



「いいよ・・・いつもは周りの方がうるさいからね?・・・京太と二人なんて久しぶりだし、俺も楽しいよ」



蓮は何気なく言ったようだが、その言葉に京太はボフッと顔を真っ赤にして爆発させた。

それからは、大好きなハンバーグのはずなのに京太は味がわからなくなったままホテルの部屋に戻ってきた。

仕事もなく、手持ちぶたさと先ほどの蓮の言葉がまだ耳に残っていて部屋の隅で立ち尽くしている京太に蓮が声をかけた。



「京太、明日早いし先に入れ」



「え!?そんなっ主任が先にどうぞ!!」



ホテルの浴衣を差し出した蓮に、京太が遠慮すると蓮が何かを考える素振りをした。

そしてわざとらしくニヤリと笑って見せた。



「・・・じゃあ・・・・一緒に入る?」



「お先にお風呂いただきます!!」



バタン!と勢いよく閉まるバスルームの扉に蓮は苦笑いをした。

しかし中からシャワーの音が聞こえてくると、蓮はたちまち落ち着かなくなり外に出ることにした。



(あんな挑発しておいて・・・俺・・・こんなんで3日間もつのか?)



緊張しまくっているキョーコをこれ以上怯えさせないために、ここにいる間は『男』で『後輩』の『京太』だと割り切り接しようと決めたのにキョーコの一つ一つの動作に思わず心が折れそうになってしまうことに蓮は思わず頭を抱えていた。

そんな蓮に全く気付いていない様子のキョーコを思いだし、ため息をつくと寝付け薬代わりにビールを何本か買い込み部屋に戻ることにした。

カードキーを差し込み扉を開けようとして、蓮はハタとした。



(・・・・・あの時・・・浴衣着てたけど・・・・なんで俺、京太が女の子だって気が付かなかったんだ?)



以前、京太がまだ女の子だと気付かなかった時一緒に出張に来て自分の部屋で寝こけた京太を抱き上げて部屋まで連れて行ったのに、何も気付けなかったことに蓮は一抹の不安が出てきた。



(自己申告で女の子だと受け止めたけど・・・もしかして・・・・・・・)



途中まで考えて蓮は頭を振った。

そして意を決するようにドアを開けた。



「あ・・・お、お風呂お先しました!」



「!・・」



すっかり京太ではなくキョーコに戻り、ホテルの浴衣を纏い濡れた頭をバスタオルでゴシゴシと拭いているのを目撃した蓮は持っていたビールの缶を絨毯の上に落とした。



「あ・・ビール・・買いに行かれていたんですか?」



キョーコがすっ・・としゃがんでビールの缶を拾うのを、蓮はうっかり見下ろしてしまった。



「ごめん・・・それ、冷蔵庫に入れておいて・・・・風呂・・行ってくる・・・」



「え?・・・あ・・はい・・わかりました」



いつもなら一緒に拾うはずの蓮が踵を返して、風呂に入る準備をし始めるとキョーコはポカンとした。

そのキョーコをそのままに、蓮はバタバタと風呂場に駆け込んだ。

が、すぐに扉を開けて顔を背けたまま声をかけた。



「京太!明日早いからさっさと寝るんだぞ?!俺が上がる前にベッドに入っておけ!わかったか!?」



「え!?あ・・・・・はい・・・・」



何だかわからないが、早く床につかないと怒られるようだと感じたキョーコはビールを冷蔵庫にキッチリと直すと明日の用意をささっとしてすぐにお布団をかぶった。


その頃、蓮は頭からシャワーを冷水で浴びていた。

そうすることで、蓮は先ほど目撃した光景を脳裏から追い出そうとしていたのだ。


しかし・・・

湯気で上気した肌。

濡れた髪。

そして・・・・・



(・・・・・・・・胸・・・・あった・・・・・・)



****************




「主任!起きてください・・・バイキング行きましょう?」



朝6時半、京太のその声で蓮は目を覚ました。

というか、体を起こした。

昨夜買ってきたビールは一本残らず飲み干しても眠気など連れてきてくれなかった。



「・・・・・・・・・・いい・・・・京太だけ食べておいで・・・俺はシャワー浴びる」



「ええ!?朝食は一日の元気の源ですよ!?」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ・・・シャワー浴びたらいく・・・先に行ってて・・・」



「わかりました!絶対来てくださいよ!?」



蓮の苦悩など全く気付いていないで、京太にすっかり戻ったキョーコに小さくイラつきながら蓮はシャワーを浴びるのだった。



「・・・・敦賀さん・・・・寝れなかったのかな・・・・・」



欺く言うキョーコも昨晩は眠れなかった。

ウトウト・・とすると、蓮がため息を付いているのが聞こえたからだ。



(・・・・一緒の部屋・・・やっぱり嫌だったのかな・・・・)



いつもは京太として、休日にキョーコとして会ってくれている蓮だがキス止まりが今の現状だった。


京太はワイシャツの上から、自分の胸を見下ろした。



(こんなストレッチ素材のインナーで潰れて無くなっちゃうぐらいの胸だし・・・もしかして・・・・)



京太は同じように仕事で来ているのか、ビジネススーツの女性を見つめた。

女性モノのワイシャツはピンク色で胸元のフリルが愛らしい。

そしてふっくらとした丸みが二つ、シャツのボタンホールを少しだけ引っ張っていてその形を強調していた。



「・・・・はあ・・・・・・」



京太が箸を置いてため息を付くと、目の前にコーヒーが置かれた。



「もうお腹いっぱい?部屋に戻る?」



「敦賀さ・・・主任・・・いえっ!ちゃんと食べます!・・・・というか、主任コーヒーだけですか?!」


コーヒーのみを置いて席に座る蓮に、京太が睨みを利かせた。

すると蓮は困ったように苦笑して見せた。


「・・・昨夜飲み過ぎたから・・・」



「じゃあ、お味噌汁だけでも飲んでください!今、主任の取ってきますから」



「いいよ・・・京太のちょうだい?」



「え!?で、でもっもう口付けて・・・」



慌てる京太を構うことなく、蓮は味噌汁椀を取り上げると飲み始めた。



「それはなに?」



「あ・・・スクランブルエッグ・・・」



「あー・・」



「?」



目の前で口を開け始めた蓮に、京太が首を傾げると蓮がムスッとした表情になった。



「それ、ちょうだい」



「え!?」



「ほら、早く・・・食べる気無くなるよ?朝食は一日の元気の源なんでしょう?」



「じ・・自分で・・・」



「やだ、面倒」



「めっ!?」



いつもの蓮らしからぬ発言に面食らいながら、京太は渋々蓮に『あ~ん』をすることになったのだった。


その後は、いつもの蓮だった。

仕事もいつも通りこなし・・・いつもよりもずっとキレッキレだった気がしないでもないが、とにかく平穏に終わった。


しかし、ホテルに戻ると打ち合わせを終えた途端キョーコに戻って膝枕をして欲しいと言って来たり女性モノの服を買ってきてそれを着て食事に行こうと言って来たり様子が可笑しかった。


さらに可笑しいのは、初日は先にキョーコに風呂に入るように言っていたのにさっさと自分が入りあっという間にベッドに飛び込むのだ。

驚きながらも、その方が何だか落ち着いてシャワーに入れることに気付いてキョーコは何も言うことなく無事3日間を終えた。


「無事視察も終わったし、商品のチャックも済んで良かったですね?」



「ああ・・・」



帰りの新幹線の中で、笑顔の京太に対し蓮は疲れた表情でリクライニングを倒しそっけない返事をしただけだった。



「この後は帰社して、報告書を出すだけですよね?」



「そう・・・」



「あの・・・それ、僕がしておくので主任は帰ってください」



京太の発言に、蓮は体を起こして目を見張った。



「どうして?」



「え?・・だって・・何だかお疲れみたいですし・・・・報告書なら僕でもかけるように、主任がまとめてくれているし・・・」



蓮の驚き様に、京太の方が度肝を抜かれジッ・・・と鋭い視線を向ける蓮から逃れるようにもぞもぞと動きながらそう答えると京太の肩を蓮が力強く掴んできた。



「嫌だ・・・帰らない」



「え!?」



「君も・・・帰さないから・・・・キョーコちゃん」



「!?」



京太の姿で本名を呼ばれるのはめったになく、しかも新幹線の中という公共の場で呼ばれるとは思っていなかったキョーコは口から心臓が飛び出しそうになった。



「へ!?あの・・主任・・・」



「もう無理!もう限界!!」



慌てふためく京太の顔を両手で包み込み、窓に押し付けるように京太に覆いかぶさった。



「んんっ~!!?」


唇を塞がれて、叫んだ声は全部蓮に飲み込まれてしまったキョーコは目をグルグル回した。


「ふっ!?・・・・っはぁっ!?」


長い口づけで目を回している間に、それが深くなってキョーコは体中に力が入った。

今までこんなに深く熱のこもったキスなど受けたことがなかったからだ。


「っは・・・・ぁっ・・・」


口の中にぐっと押し入ってくる熱の塊に、キョーコは思わず眉間に皺を寄せ息苦しさと体に走る痺れに戸惑い蓮の腕を握りしめた。


首筋と頬を蓮の細く長い指が支え、逃げようとするキョーコを捉えて離さなかった。


「っはあっ・・・れっん・・・くるし・・っ・・・」


息継ぎにと少し唇が離れた瞬間、訴えを口にするがそれはまたあっという間に食まれて言えなくされてしまう。

しばしキョーコが訴えても、蓮の行為はそのまま延長されてとうとうキョーコの体から力が抜けきってしまった。


キョーコの体がくったりとなり、抵抗することが無くなったのを期に蓮はそのままその細い体を抱きしめた。


「この3日間地獄かと思ったよ・・・・」


「ほへぁ?」


「だってそうだろ?君とこんな形で夜を過ごすことになるなんて思ってもみなかったのに・・・君は全く普通に接してくるし・・初日はガチガチだったからそうなるように促したのは俺だから、文句は言えないけど・・・でも、君は無防備すぎる!」


蓮にぎゅうぎゅうと、さらに抱きしめられてキョーコは小さく呻いた。

しかしそれ以上に、蓮から伝わってくる熱と訴えてくる低い声がキョーコの手をそろりと動かし蓮の背を掴んだ。


「気にしないふりをするのが辛いほど、平気でお風呂上り濡れ髪でウロウロするし、寝顔は可愛いし・・・京太の状態なのに我慢できなくて、キョーコちゃん扱いしちゃって・・それでも素直に聞いてくれちゃうし・・・君に関すると俺は、どうやら理性を捨てやすくなるみたいだ」


「すてっ!?・・・ちょ・・・あの!?ここ新幹線の中っ」


「わかってる・・・けれど・・・ごめん・・・止まりません」


「へ!?・・んっ~~!!!」


また濃厚な口づけをされ、終点頃には京太の唇はぽってり熟れ頃になっていた。



「蓮さん・・・手は・・・繋がない方が・・・」


「ダメ、逃げるだろ?」


「帰社するんですから逃げません!・・・・その・・・その後も・・・逃げませんから・・・・」


駅のホームで、しばし見つめ合うと蓮は納得したのかその手を離した。


「・・・・うん・・・・わかった・・・」


少し名残惜しそうな蓮に、京太は申し訳なさそうに隣を歩いたが後ろから女性の会話が聞こえてきた。



「ねえねえ!今のって・・もしかして!?」


「うそっ!?あんなイケメン同士で!?」


「イケメン同士だからアリなんじゃない!!」



「じゃあ・・・やっぱり・・・B・Lっ!?」


「きゃああ~!!って・・そんなこと考えられる私たちが腐ってるわよね~」


冷や汗を流していた京太の側を、彼女たちはそんな会話をしながらもチラチラ蓮たちを盗み見て通り過ぎて行った。


「しゅ・・・主任・・・やっぱり今夜は・・・」



「ダメ、というか今の会話気にするんだったら不本意だけどアソコ・・使うかな?」


「へ?・・・アソコ?」



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報告書を書き終えたころ、社内には蓮と京太しかいなくなっていた。

「主任!あの・・・どこへ?・・」

京太は蓮に引きずられるようにして、資料倉庫へと連れてこられた。

「はい、これに着替えて」


渡されたのは、先日蓮が我慢しきれず買い与えたキョーコ用の洋服だった。


「・・・・本当に不本意だけど・・・アソコで・・・」


蓮が指差した先には、以前ローリィからもらった京太専用更衣室だった。


「それと、それに着替えたらこれを付けて?」


「・・・社内パス・・・」


「キョーコちゃんの姿は、一応ここでは無関係の人間だからね・・・」


蓮から渡されたパスを受け取り、京太は着替えることにした。


「うん・・やっぱりよく似合う」


髪型も京太仕様から、キョーコモードに変えていて蓮は目を細めてその姿を眺めた。


「キョーコちゃん・・・・これから俺の家に連れて行くけど・・・・泊まってくれますか?」


「!・・・・・・っ・・・・は・・いっ」


蓮の意思を嫌というほど、新幹線の中で伝えられていたためキョーコはその言葉の意味を明確に理解し真っ赤になりながらも頷いた。

そんなキョーコに、蓮は蕩けた笑顔をするとその手を取り会社を出るのだった。


*************


間もなく夜が明けようとしているのか、空が薄らと白くなっていた。

遠くに車の走り去る音が聞こえる。


キョーコはベランダに出て、少し冷たい朝の空気を吸っていた。


蓮の高級マンションはいつ来ても緊張するな・・・とキョーコは思いながらも、昨夜の蓮の言葉と行動を思い出すと爆発してしまいそうだった。


だが、それを静かにさせるものがキョーコの脳裏の片隅にあることを安心しきった寝顔でベッドに沈んでいる蓮は知らずにいたのだった。




つづく