§だから・・・45 | なんてことない非日常

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§だから・・・45



 まさかの展開は、もう当たり前になっていると蓮もキョーコも悟りを開いた表情になっていた。


「おーい!そっち布足りるか?!」


「こっちに花をもっと飾って!?」


目の前にはものの小一時間で教会もどきが立ち上がっていくのを、ただただ恐ろしい・・と見つめるしかなかった。


「・・・社長・・・何も今すぐでなくても・・・」


蓮は無駄だとわかっていてもそう口にすると、当たりのように異論が返ってきた。


「なに言っているんだ!?クーもジュリもいるし、お前たち二人のスケジュールも今日を逃すと先は3ヶ月以降だって言うじゃないか!思い立ったが吉日だ!!」


(・・・・・・・・・・・・・思いつきで即行動の人だからな)


蓮はもうローリィを説得することを諦めた。
その代わり、真っ青になっているキョーコの元に両膝をついた。


「最上さん・・・大丈夫?」


そっと、椅子に座ったまま膝に置いた手を握り締めているその手を取るとキョーコが蓮と目を合わせてきた。


「・・・・・れ・・・さ・・・・」


「うん?」


「い・・いいんですか?」


「ああ・・・まあ、本当はもっとちゃんとプロポーズしてから・・」


「違いますよ!」


キョーコの大きな声に、皆が振り返った。
だがそれにもかまわずキョーコは続けた。


「だってっ結婚ですよ!?一生一緒にいるということですよ?!」


「うん、だからちゃんとしたかったんだけど・・・」


「一生蓮さんが私と一緒にいてくれるわけなんてないじゃないですか!?」


泣き出しそうな声でそう叫んだキョーコに、蓮はピシリと固まり頬を引くつかせた。


「・・・なにかな?君は俺が浮気性だとでも言いたいのかな?」


小さな怒りの炎を背後に背負い始めた蓮に、キョーコは怯えながらも言い返した。


「だって!浮気は男の甲斐性だって言うし・・私のようにつまんない女に蓮さんが・・・満足されるかわからないし・・だって・・・シテ・・・ないんだったら・・・なおさら・・・・・わかんないじゃないですかああ!!」


「わかるよ!身体は確かに欲しい!けれどそれだけじゃないんだ!!最上さんの存在自体が俺には必要なんだ!!ずっとそう言ってきているだろ!?」


「だって!信じられないんだもん!蓮さんに『キョーコ』って言われるたび・・・・もしかしたらアイツみたいに私は家政婦になっていくんじゃ・・・とか・・・『キョーコちゃん』って言われると・・・・私以外の人だと思っていた名前だから呼ばれるたび、私じゃダメかもしれないって不安になって・・」


ポロポロと涙をこぼし始めたキョーコの言葉に、蓮はようやく『気持ち悪い』の意味がわかり胸を撫で下ろした。


「心外だな・・・俺って本当に信用ないんだな?」


「だって・・・今までの言動で・・・」


じと・・・っとした視線を受けて蓮は、苦笑いを返した。


「今までは確かに最低な男だったかもしれない・・・けれど君だけは違うから」


「・・・じゃあ・・・証明してみてください」


「証明?・・いいよ、君に信用されるならなんだって」


「・・・・じゃあ・・・私が良いと言うまで・・その・・・・・・か、身体の関係は保留でお願いします!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


笑顔のまま固まっている蓮に誰も慰めの言葉をかけられなかったのは、仕方ないことだったのかもしれない。



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