《お久しぶりな上に何だか新章に突入な予感満載・・・・どうぞ生暖かく見守って、ぬる~くお付き合いいただけるとありがたいです》
§ルートX 13
「コーン・・・・本当に・・大丈夫・・・なのかな?」
「・・・・・あの人は突拍子もないことを言う事はあるけれで・・・それがすべて悪い方に向かったところを見たことがない・・・きっと今回も何か参段があるのかもしれない・・・・」
蓮は昨日ローリィ邸に呼ばれたその後を思い起こした。
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「救いの・・・女神?」
蓮の言葉にローリィは渋い顔をして頷いた。
「本当に情けない話だが・・・・養成所の方で少しゴタゴタがあってな・・・・・」
ローリィのその発言にマリアがすぐさま反応した。
「だからあんな連中、さっさと切ってしまえばいいんですわ!?」
「そうもいかん・・・あのことさえなければそれぞれ皆、役者を志す希望多き若人たちだ・・・あのことさえ・・・なければなあ・・・」
大きなため息をつくローリィにプリプリと怒るマリアを交互に見ながら、蓮たちは話が見えず首を傾げた。
「一体・・・何があったんですか?」
「うん?ああ・・・実はな・・・・先月、新しくオーディションで選ばれた子達を養成所へと送ったのだが・・・そこでな・・・・」
ローリィは歯切れ悪くそう言った後、蓮の後ろに見え隠れするキョーコをじっと見つめた。
「
最上君・・・だったな?」
「!?・・・は・・はい・・」
「少しばかり私の元で働いてみないか?」
「へ?」
「何を企んでいるんですか!?」
ローリィの言葉に蓮はさっとキョーコを背中に引っ付かせ庇った。
「・・・・・なんだ・・・そんな人攫いを見るような目をして・・・ちょっとした取引をしようと言っておるのに・・」
「貴方の発言は怪しすぎるんです」
「・・・失礼だな・・・・最上君・・・君は役者の道に興味はないかな?」
「なっ!?」
ローリィは蓮をどかしながらキョーコに直接話しかけた。
「へ?・・・役者?」
「そう、君はなにやら感じるものがあるんだ・・・私をはじめてみた時の対応といい、マリアへの対応といい・・・君の頭の回転のよさは今回の件でも事をいい方に運んでくれそうな気がしてならないんだ・・・・そこでだ、君を養成所の特別編入生として迎えたいと思うのだが・・・どうかな?」
にんまりと微笑むローリィをキョーコはじいっと見つめた。
「何考えてるんですか!?キョーコちゃんは役者なんか目指してないですし、今さっき養成所でゴタゴタがあっていると言われて素直に・・」
「・・・・私は・・・芸能界に・・入れますか?」
「うん?」
「!?キョーコちゃん!?」
何か希望を抱えたキョーコの瞳にローリィは始め驚いたように目を見開いたが、すっとそれを細めにんまりと微笑んだ。
「もちろん!・・・ただし・・・今回の件を収めてくれたら・・・・で、いいかな?」
「・・・はい!」
勝手に話が進んでいくことに動揺が隠せない蓮は慌ててキョーコの腕を引き寄せ、自分の正面に引っ張った。
「キョーコちゃん!?何を考えてるんだっ」
「ごめんね・・コーン・・・勝手に話を進めちゃって・・・でも・・・もしかしたら・・・人助けも出来て・・私の野望も叶えられるかもしれないじゃない!?」
「・・・・え?・・・」
「アイツは芸能界にいる!・・・打ち捨てた私がさっさっとアイツより上に行けたら・・・アイツを打ちのめすことが出来る!!そう思わない!?」
笑顔でそういうキョーコに、蓮は突然怒りに包まれた表情を見せた。
それにキョーコは恐れおののき声を震わせた。
「コ・・コーン・・・!?」
「芸能界はそんなに甘いところじゃないっ・・・君がそんな考えでいるなら・・・俺はもう君に手を貸すことなんて出来ない」
蓮の怒りに触れキョーコは慌てて考えを改めるとすぐに頭を深々と下げた。
「!・・・そう・・・そうよね・・・・コーンが一生懸命やっている世界なのに・・・ごめんなさい!!浅はかな事を考えて・・・」
「・・・・いや・・・わかってくれればそれでいいよ・・・」
「でも・・・人助けはしたい・・コーンの大切な人なんでしょ?社長さんも・・・この事務所の人たちも・・・」
キョーコは真っ直ぐ蓮を見つめ、小首を傾げると蓮はそれにほだされる様にそっとキョーコに近寄った。
「キョーコちゃん・・・・・」
二人の雰囲気が徐々に甘さを増してきたのを掻き乱すため、ローリィが一つ大きな咳払いをした。
「・・うおほん!!・・あ~・・話はまとまったのかな?」
「「!!す・・すみません!!」」
二人はローリィや苦笑いする社たちに慌てて頭を下げた。
「で?どうするか決まったのか?」
ローリィの質問にキョーコは蓮を伺うと、蓮はコクリと頷いた。
それにキョーコは笑顔で答えると、ローリィに向き直った。
「やります!やらせてください!!」
その答えにローリィは安堵の笑みを漏らし、内容を話してくれた。
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「以前から養成所にいる方たちと・・新しく入ってきた方たちの間で派閥が起きるなんて・・・そんなことあるの?」
「いや・・・どうだろう?・・・俺はここの養成所には入ったことなくて・・・・普通は同じ夢を持つもの同士だけど・・・基本はライバルだからな・・・・なくはないのかも・・・・」
蓮も腕組みして考えながら養成所の中をキョーコに案内した。
その姿を目ざとく確認した練習生たちから次々に歓声が上がった。
「嘘!?敦賀さんじゃない!?」
「きゃあ!?滅多にこっちにこられないのに!?・・・・あの子・・・・なんなの?」
蓮と一緒に歩き、笑顔を向けられるキョーコへ一斉に嫉妬に満ちた視線が向けられた。
「そんなことばっかりに目が向くからいつまでも演技に磨きがかからないんじゃないんですか?セ・ン・パ・イ?」
そんな者たちに冷ややかな言葉を投げ打った者に、その鋭い視線が移動した。
「琴南さん・・・あなた・・・本当に調子に乗ると酷いわよ!?」
「何が酷いんですか?ひどいのは先輩方のこの間の発表会の演技なんじゃないんですか?あれじゃ小学生並みっ」
「なんですって~!!?」
「本当!!酷かったですよ?セ・ン・パ・イ?」
「あ・・天宮さんまでっ!!」
「もうゆるせなあいい!!」
二人の少女対養成所の練習生という構図で繰り広げられているバトルを目の当たりにした蓮とキョーコはお互いを見合った。
((これが・・・派閥??))
その様子を見たキョーコは思わずこの件を引き受けたのを少し後悔し始めた。
そして冒頭の会話に戻る事になった。
「コーン・・・・本当に・・大丈夫・・・なのかな?」
「・・・・・あの人は突拍子もないことを言う事はあるけれで・・・それがすべて悪い方に向かったところを見たことがない・・・きっと今回も何か参段があるのかもしれないよ?・・・たぶん・・・」
キョーコはその言葉に顔を引きつらせた。
蓮にそう言われてもなんとなく頷けないのは、琴南と呼ばれた少女と天宮と呼ばれた少女が一筋縄ではいかない気がするからなのだった。
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