心に響く名言 36.2
アインシュタインとユダヤ式教育について
36.2.1「アフタースクール(家庭内教育)」という教育システム
前章のアインシュタインの名言の中で、触れましたユダヤ式教育についてもう少し詳しく述べてみたいと思います。
伝統的なユダヤ式教育では、教師と生徒がマンツーマンで行うそうですが、その最初の教師は父か母がなることが多いといいます。
アインシュタインの父ヘルマンは、弟と電気機器を製造する会社を創業し、営業関係を担当していました。果たして、会社を創業して忙しい日々を送っていた父が、その息子を伝統に従って教育したかどうかは定かではありません。
アルベルトは5歳から3年間、ミュンヘンにあるカトリック系の公立学校へ通っています。
その学校から戻ったあとにユダヤ式教育を受けるわけです。
[アインシュタインの幼少時代の写真]
さてアフタースクールでは、教育係がさまざまな「ミッション(任務・課題)」を出し、子供がそれをクリアしていく、という実践的手法で教育が行われます。
ミッションとは、例えば次のようなものです。
「今からあの公園に行って、そこにいる子供たちと仲良くなりなさい」
「今からあのカフェの店員さんが笑顔になるようなことをやってきなさい」
そしてこの教育法の大きな特徴は、
「ミッションは与えても、やり方や答えは決して教えない」ということです。
子供はミッションをクリアするために、自分の頭で考えて、いろいろな手を使ってチャレンジをします。 つまり自身で創意工夫をこなすことで、自発性や創造性、発想力などが養われていくわけです。
教育係は、子供が悩んだり困っている時には、
「君が誰かと仲良くなりたいなと思う時は、どんな時かな?」
といったように質問をしながら、ミッションをクリアする方法を子供が自ら気づけるように導いてあげるのです。
「答えを教えない」というのは、ミッションを出す時だけでなく、普段の会話の中でも大切なことです。このようにして子供に自分で考えさせたり調べさせたりすることは、知的好奇心を高めるトレーニングにもなります。
そして子供がミッションをクリアしたなら、教育係はその内容を確認して、よくできたら褒めてあげるわけです。
さらに「実は、ここにはこういう原理原則があったんだよ」とミッションを出した背景を説明します。
子供たちは、自分で創意工夫してチャレンジした過程と、そのミッションの意図を知り、「なるほどそういうことか!」と心から納得しながら原理原則を学ぶことになります。
このようにして原理原則を叩き込んでいく実践型の教育手法が、ユダヤの家庭内教育の特徴なのです。
36.2.2 ユダヤ式教育のまとめ
ユダヤ式教育の特徴をまとめますと、「ナンバー・ワン」になることよりも「オンリー・ワン」になることを重視し、子どもの才能を信頼した関わりが重視するものといえます。
そして5つのポイントに着目した教育ともいえそうです。
「1.常に問いをもつ」
これは、なぜこれはこんな形をしているのか。
〇〇する時には、なぜこのようにした方が上手くいくのか。
といった具合に、初めから正解を教わるのではなく、常になぜ? と疑問を持つことで
知的好奇心を高めるわけです。
「2.分析する」
次に、それがなぜそうなるのか、自分なりに分析(理屈をつける)します。
正しいか正しくないかは別として、日常的に仮説を立てるトレーニングをするわけです。
「3.分からないことは質問する」
自分で考えて、それでも分からないときは、詳しい人のところに行って質問をします。
その場合もただ単に答えを聞くのではなく、自分の意見を述べてから質問します。
そうすることで、教える側も相手が何でつまずいているのかが分かるため、的確なアドバイスをすることが出来るわけです。
「4.議論する」
意見の対立を恐れません。自分の考えを持っているので、反対意見であってもその考えが相手にも有益だと考えてきちんと伝えます。
相手の話にも耳を傾け、ひろく議論した上で最適な解を導きます。議論とは協力することだと考えているのです。
「5.仲間を大切にする」
ユダヤ人は仲間をとても大事にします。他民族から迫害を受けた歴史や、選民思想を持っていることもあり、仲間を非常に大切にします。幼児のうちからこの仲間を大切にするということを体で覚え込ますわけです。
ここでは、ユダヤ式教育のもう一つ重要な部分に触れていません。
モーセが伝えたユダヤ教徒の守るべき聖典とされている「トーラ」、「タルムード」
の存在です。ユダヤ式教育について記された書籍は、日本でも数多く販売されています。
興味がおありの方は、こちらもご一読ください。
アインシュタインは必ずしも家族や教師と人間関係がうまくいかなかったといわれています。しかし彼の考え方をみてみると、その影響を受けたと思われる点が多くあるように感じます。彼の名言は、まさにユダヤ式教育が求めるところそのものです。
アインシュタインの名言を掲げます。
『過去から学び、今日のために生き、未来に対して希望をもつ。
大切なのは、疑問を持たない状態に陥らないことです。
好奇心はそれ自体に意味があるものです。』
“Learn from yesterday,Live for today,Hope for tomorrow.
The important thing is not to stop questioning.
Curiosity has its own reason for existing.”
36.2.3「思考実験」とは
アインシュタインはどのようにして、物理学の世界を根底から揺るがすような革新的な理論を思いついたのでしょうか。
彼には発想の源である「思考実験」というプロセスがあったことが知られています。
アインシュタインは頭の中で浮かんだ物理上の仮説や面白いアイデアを、それが現実の世界で成り立つことが可能かどうかを頭の中で実験をするという方法を編み出したのです。これが彼が「思考実験」と呼んでいるものです。
その一つを紹介しましょう。これはアルベルトが16歳の時に考え始めた「思考実験」です。
ちょうど大学に入る前のギムナジウムに通っている時に見た夢が元になっているそうです。
[光を追いかける夢]
光を人が追いかけていくといくものです。
光がものすごい速さで空間を移動していきます。アインシュタインは、空間をすごいスピードで進んでいく光を、それに近い速度で追いかけていく人の姿をイメージしました。人が空間を移動する光を追いかけたらどうなるか考えたのです。
その人が何らかの形で光に追いつくことができれば、空間で停止した光を観察することができるだろうとアインシュタインは推論しました。
しかし光は空間中では停止しません。
そうでなければそれは光でなくなってしまうからです。
最終的にアインシュタインは、光は遅くなったりせず、常に光の速度で自分から離れて移動しなければならないということに気づきました。
したがって、他の何かが変化しなければなりませんでした。
そして、時間こそがそれであると考えました。
この「思考実験」の結果が、後の特殊相対性理論を構築する基になったわけです。
少し難しい話が続いてしまいました。
次回は、アインシュタインの命式を読み解くと共に、彼の後半生について眺めてみたいと思います。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。