『美しい彼』が帰ってきました。
MBSでひっそりと始まり、あれよあれよという間に国内外で大きな反響を呼んだ、耽美系横綱BLドラマ。
シーズン2はドラマイズムに昇格して、TBSで同日放送。ついにドラマのTBSがBLに目覚める日が来たのか…と感慨深いです。LGBTQやBLをメインにしたドラマをあんまり作る気がなさそうに見えたので。
いいぞいいぞ。このまま別のBLドラマも制作したらいいよ!少なくとも私は見るから!
以前の記事にも書きましたが、『美しい彼』のすごさは、最近の流れである優しい世界を、真っ向から逆走してヒットを飛ばしたことです。
BLはファンタジーとわかってはいても、もはや今の時代、同性愛を扱っている以上、その言い分は世間では通らなくなっています。当然、配慮は必要なジャンルですから、慎重に配慮を重ねた結果、日本のBLドラマは優しい世界になりがちです。
配信BLなら攻めた作品もありますが、やはり地上波はどうしてもがっちり守りを固めてくることが多く。
でも悪意や苦しみがあるからこそ、生まれる喜びや満ち足りた笑顔が際立つわけで、そこは必要以上に毒抜きしてほしくないな、と私はいつも思っています。
ブラッシュアップライフ風に表現するなら、カタルシスを得るためには、それ相応のストレスが過程にあるべきなんですよね。
だから、一部で平良へのいじめ描写に拒否反応が出た『美しい彼』の成功は、個人的にはとても嬉しかったです。
ラブストーリーなら、コメディや可愛い話だけではなく、しんどい系もあっていい。今やってる『僕らのミクロな終末』も、人を愛する心の痛みと暗部を官能的に描いていて、さすがは『ポルノグラファー』のスタッフという感じ。
こういう作品は、数は増えないだろうけど、時々制作してくれたらありがたいです。せっかくなら、色んなジャンルのBLが見たいんですよね。本当にそれだけ。
『美しい彼』の原作は、1巻はしんどい系で、2人が結ばれた2巻以降は、一転、かなりコミカルになります。神と下僕が付き合ってしまったが故に、盛大にすれ違う、互いのことが好きすぎるバカップルを、読者がニヤニヤしながら見守る話。
シーズン1のあの湿り気のある耽美な雰囲気から少し変わるので、ドラマはどんな風になるのかなと思いながら1話を見ました。
いやこれ、無課金で見ていいんですか??
これまでのあらすじのアバンとOPだけで満足度MAXで、あやうく本編もう見なくていいかくらいの勢いだったんですけど。見たけど。
始まりの1話って、まずは掴みからという感じなのに、1から10まで徹底的に萌えるように作っていて、目頭押さえたくなりましたよ。有能すぎて怖い。BLドラマ界のエリート現る。
原作からの解釈とアレンジが効いているし、平良がシーズン1より男くささが増して、2人の関係性の深化が読み取れるのがすごく良い。
私は安奈役の仁村紗和が、原作のイメージ通りで驚きました。平良にアプローチしてくるモブ当て馬に、きっちり小悪魔系小顔美女を持ってくるあたりも、BLドラマにありがちな「深夜枠で予算少ないからモブはこのレベルでいいよね」感皆無で、キャスティング優秀。
相変わらず、神より与えられし美貌を存分に輝かせる清居の内面に巣くうナイーブさを、無自覚に蹴散らしていく平良とのコンビが愛おしい。
期待されたものを、期待通りに、そしてそれ以上に仕上げるのって、実はすごく難しいと思います。人気ドラマの続編は、大抵、あれっ?となることが多かったり。
だからこそ、1話から期待値が高まったファンを全力でぶっ叩きにきた『美しい彼』の揺るぎないクオリティに、ただただ拍手。
耽美からコメディへの転換も、実に鮮やかでした。柔らかい光と色彩から成る、酒井監督の映像美に何度も見入りました。
最高の続編になる予感がします。
『ブラッシュアップライフ』の記事はこちら