昨日3/9(土)16時より、J1リーグ第3節湘南ベルマーレ戦が行われ、1-0で勝利しました。

メンバーはこちら。

ベンチ:
GK曽ヶ端 CB関川 DH健斗 CH名古 SH遠藤
SH一真 STセルジーニョ

交代:
62分 安部→セルジーニョ(セルジーニョ右SH、レアンドロ左SHへ)
75分 レアンドロ→一真
86分 篤人→健斗(永木を右SBへ)

得点経過:
58分 安西(レオ)


収穫の少なくない勝ち点3。チームとしての攻撃の狙いがなくとも「やることがいつもと変わらない」安西の活躍が光るというなんともわかりやすい形での勝利。守備面で次に繋がる要素はいくつかあったものの、消化不良の試合はまだ続きそうです。

この試合のトピックスはこちら。

・流動的なブロック
・左右のメリハリ
・アンカー脇を突くレアンドロ浮かし
・意図はあれど、効果なしの交代
・受け身からの切り替え


『流動的なブロック』

この試合鹿島は相手に合わせた流動的なブロックで湘南に対峙。4-4-2のブロックには変わりがないのですが、シャドーを捕まえるためにシャドーが動いた場所へ着いて行く選手を設定し、空いたスペースを聖真が埋める形でブロックの高さを敷きました。

図1:流動的なブロック

この試合のブロックはなかなか面白いものがあり、最終ラインは相手の1トップの高さに合わせて、真ん中のラインは相手のCHの高さに合わせて、ボール保持者を完全に前で見るような形を取り、あえてこの間でシャドーを受けて捕まえるように弱点とされているCBとCHの間のスペースに「罠」を仕掛けるような形を取っていました。

そもそものブロックの役割であるブロック前の選手のスペース侵入もやらせない上に、侵入目的のシャドーをきっちり捕まえるという形。
ここに更に前からのプレスでサイドを限定し、横圧縮で締め切り、奪う形ができたことは大きいですね。

ただし相手の3バックのビルドアップ能力が高くないことと、WBの突破力が高くないことが前提となりますが、次の札幌戦を見据えてもこの形で0に抑えられたのはプラス材料です。


『左右の攻撃リズムのメリハリ』

久方ぶりに左右の攻撃の違いが良い方向に出ました。右は多様なコンビネーション、左は縦の個による推進力。リズムの違いも明らかで、右では手数をかけて崩すため時間を必要とするためリスクマネジメントの陣形を作る時間があり、左では関わる人数の少なさから失ってもカバーリングの人数が後ろに整っているためリスクは少ない、といったように守備に繋がる部分もありました。

安部、レアンドロが共に内側に絞ってのプレーを好むことに対して、トップ下に聖真を配置したことが効果を発揮しました。
右では簡単に叩いて前に行きたいレアンドロのために簡単に受けられるサイドに出て起点を作り、左では運んで来る安部の逃げ場所となるために位置どりをしてサポート。安西の個人突破に繋げるためのパスも出していましたし、伊藤の仕事をゴール前に集中させることもできました。

最終局面の精度云々は置いておくにしろ、後ろが守りやすい奪われ方という点から見て、今季の攻撃の組み立て方の中では最も良い内容だったのではないでしょうか。

得点力が上がるためにはもう少しSHが背負っている役割を他ポジションに振り分けない限りは難しいでしょう。
今は守備が楽になる奪われ方のために属人的であっても整備されることが優先されるべきだと思います。ですから、この試み自体が間違ってはいないでしょう。

この試合試されたSHセルジーニョもその布石ではないでしょうか。ACLをセルジーニョ、リーグをレアンドロの右にしてコンビネーションの右を維持。トップ下は聖真と充孝(もしくは白崎もあるかも)で気を利かせるような形になって行くものと推測しますが、あくまでもこれは得点力に対するテコ入れではなく守備面の安定を図るものだという点は理解すべきだと思います。まだ充孝も白崎も試合に復帰していませんからね苦笑

『アンカー脇を突くレアンドロ浮かし』

この試合鹿島は湘南側右サイドへ誘導。伊藤と聖真のプレス、立ち位置が良く、キーマンである杉岡がいる左サイドでの攻撃を許さずに進めました(結果的に岡本の退場も誘うことに)。
レアンドロのネガトラを誤魔化しつつ、高さ的なミスマッチもボヤかしながら、永木という90分間吸引力の変わらないルンバを最大限に生かす形で守備ができました。

その上で、1枚剥がせて出せる、出してからサボらず前へ進める選手であるレアンドロをアンカー脇で浮かせ、カウンターの起点にすることにも成功。
ここでいう成功はカウンターの成功ではなく、あくまでも意図的に浮かせたレアンドロに意図的に出せていた、というものでしかありませんが、少なくとも起点を決められたことはこれから構築を目指していくスタート地点に立てたということですね。

立ち位置の幅の調整でアンカーだけでなく2ボランチのチームへの対応もできるでしょうし、今後追って見て行きたいパターンです。

『意図はあれど、効果なしの交代』

両者の交代采配を見て行きたいと思います。

湘南 58分 野田→梅崎
走れなくなった野田に代え、真ん中でカウンターの起点になれる選手を配置。

鹿島 61分 安部→セルジーニョ
レアンドロを左に回し、セルジーニョを右SHに。サイドの高さ、キープ力とカウンターの起点となることを期待しての配置。

湘南 70分 武富→鈴木冬一
運べる、剥がせる、ファールゲットができる選手起用。またこれと同時に杉岡を左大外に置いて浮かせるように。

鹿島 74分 レアンドロ→一真
いつものスピードの暴力。カウンター狙い。も、主戦場は鹿島側右サイド。一真を入れたのは左。逆サイドへ引っ張りたかったか。

鹿島はこれにより梅崎、鈴木の投入で運べる選手が入ったことで鹿島は間延び。これまで流動的に動かしていた真ん中のブロックの設定が崩れ、杉岡の好きなタイミングでボールを渡してしまう。

湘南 82分 フレイレ→指宿
4-3-2にしてパワープレーのターゲットを2つに。特に指宿は安西サイドで受けて、高さ的な質的優位を確保。

鹿島はパワープレーに対して最終ラインでの対応になってしまった上に、真ん中のラインをCHに合わせていたことでバイタルがスカスカに。

鹿島 86分 篤人→健斗
篤人負傷により、交代。右SBに永木。真ん中に高さが増えた一方で、左の安西のミスマッチには手を加えられず。バイタルスカスカ問題も解消できず。

ある程度の意図は感じられたものの、そこに効果を発揮する交代は鹿島はできませんでした。

『受け身からの切り替え』

全体的に「受け身」の考えから始まっていた試合で、それ自体は結果的には0で抑えたということで良しとするにしても(主に後ろの育成年であることを加味して)、攻撃面では10人となり、いつもの湘南にはあまり見られない引く形を取った湘南を崩すためのアイディアとやり方は見られませんでした。得点シーンと似たような形を複数回畳み掛けても良かったと思います。

また相手陣バイタルエリア支配もできていました。そこまではOKですが、そこから縦への展開とアイディアが不足していました。唯一レアンドロは縦の突破をワンツーにより試みていましたが、周りとの意図が合わずにロストに繋がりました。継続的な起用でこの辺の共通理解が得られれば改善の余地がある部分ですし、現在の停滞する攻撃を打破してくれる要素になるかもしれません。


札幌戦への光明は見えたものの、山東戦へは不安を残しました。それはチームでもわかっていることでしょうから、改善して次へ向かってくれるでしょう。

しばらくは温かく見守っていきましょう。